パタゴニアとは?
アメリカ・カリフォルニア州ベンチュラに拠点を置くアウトドアブランド「パタゴニア」。1973年、登山家イヴォン・シュイナードがクライマーとしての経験をもとに立ち上げたブランドだ。
創業当初から一貫して「自然に負荷をかけないものづくり」を掲げ、環境への配慮をブランドの根幹に据えてきた。
その思いは現在のミッションステートメント“We’re in business to save our home planet(私たちは地球を救うためにビジネスをする)”に引き継がれている。
2022年には会社の所有権を2つの非営利団体に譲渡し、「地球が唯一の株主」と宣言。ブランドの利益は環境危機の対策に充てられ、企業活動そのものを通じて自然を守る取り組みを実践している。
代表的なアイテムには、フリース文化の原点とも言われる「シンチラ」や、水陸両用の「バギーズ・ショーツ」などが挙げられる。どれも高い機能性とデザイン性を兼ね備え、アウトドアと街をシームレスにつなぐ。そして何より、それらを“環境と人への配慮”のもとで形にしてきたのがパタゴニア流だ。
サステナブルな素材選びやフェアトレード認証工場での生産など、ブランドの哲学が息づくアイテムが、いまも多くのファンを惹きつけている。
地球を第一に考える、パタゴニアの哲学。
パタゴニアは、言葉より行動で示してきたブランドだ。
その代表例が、創業者イヴォン・シュイナードと、フライフィッシングショップ「Blue Ribbon Flies」を手がけるクレイグ・マシューズが共同で立ち上げた「1% for the Planet」。
企業が売上の1%を環境団体に寄付する仕組みを構築し、パタゴニア自身も1985年からこの取り組みを実践してきた。これまでに1億ドル以上を環境保護活動へ寄付し、いまでは多くの企業がこの輪に加わっている。
2011年にニューヨーク・タイムス紙に掲載された広告「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買わないでください)」は、過剰な消費に対する明確なカウンターだった。「本当に必要なものだけを選び、それを長く使う」という価値観を、あえて自社製品で問い直した姿勢が、大きな話題を呼んだ。
翌年には、カリフォルニア州で初の「ベネフィット・コーポレーション」として認定を受け、経済的利益だけでなく社会や環境への貢献を企業の目的として追求できる仕組みを整えた。環境保全を“会社の使命”として法的にも位置づけ、理念と行動を両輪で進めている。
フィールドでも街でも光る、パタゴニアのロングセラー。
こうした哲学が息づく製品が、ここで紹介する名作アイテムの数々だ。
ライトウェイト・シンチラ・スナップT・プルオーバー ¥20900
なかでも代表的な「シンチラ」は、軽くて乾きやすいフリースとして登場し、ウール中心だったアウトドアウェアの常識を変えた。リサイクルポリエステルを使い始めた当初は、スプライトのペットボトル由来の緑色がそのまま残っていたという。そんなエピソードも、いかにもパタゴニアらしい。
現在では素材がさらに改良され、肌触りや耐久性も向上。スナップTなどのシリーズは、タウンユースでも人気が高い。
1982年に誕生した「バギーズ・ショーツ」は、陸でも水でも使える万能ショーツ。速乾性のあるナイロンに、メッシュ製のライナーで水抜けも良い。登山、川遊び、キャンプ、街歩き──あらゆるシーンに対応するシンプルなデザインと使い勝手のよさは40年以上変わらず、夏のパタゴニアを象徴する存在だ。
現在は廃棄漁網を再利用したNetPlus®ナイロンに素材を切り替え、環境への配慮も進化。軽くてタフ、速乾性にも優れ、街でもフィールドでも変わらず愛され続けている。
「レトロX・ジャケット」は、防風性を備えたフリースの代表格。ハイパイルの質感とクラシックな見た目ながら、内側には防風バリアを搭載し、冷たい風をしっかり遮る。
2025年秋には、このレトロXに大幅なアップデートが。長年リサイクル素材での製造が困難とされていた裏地のメンブレンが、それまでの防風機能を損なうことなく、再生素材にアップデート。アイコニック的存在の「レトロX」も、この秋ついにすべての素材が100%リサイクルに切り替わったのだ。
アメリカのリサイクル繊維ブランド、リプリーブ(REPREVE)とのパートナーシップによって、新素材“リプリーブ アウア オーシャン(REPREVE® Our Ocean)”を採用したことも大きな変化。
時代を超えて愛されるデザインは古着市場でも高い人気を誇り、アウトドアとファッションを橋渡しする存在に。そんなレトロXは進化を続けている。
突然の雨でも頼れるのが「トレントシェル・ジャケット」だ。3層構造のH₂No®素材が雨を防ぎつつムレを逃がし、快適な着心地をキープする。もともとは2.5層構造として登場したが、2020年に3層仕様へアップデートされ、耐久性と透湿性のバランスがさらに向上。
登山やキャンプはもちろん、街や旅先でも使いやすいミニマルなデザインで、幅広いシーンにフィットする万能な一枚だ。
冬の定番「ダウンセーター」は、軽くて暖かい万能アウター。従来の「重くてかさばる」ダウンの常識を覆し、セーターのように軽く羽織れる一着として誕生した。
シェルにはNetPlus®リサイクルナイロン、ダウンには再生羽毛を使用。アウトドアでも街でもすっきり着られるデザインが息の長い支持を集めている。
パタゴニア製品のサイズ感は?
パタゴニア製品は、アメリカブランドらしく、ややゆったりめな作りになっている。普段着ならワンサイズ下、重ね着するならいつも通りのサイズがおすすめだ。
パタゴニアの価格帯は?どこで買える?
フリースは2万〜3万円台、ジャケットは3万〜5万円前後、Tシャツやスウェットは1万円前後が中心。安くはないけれど、どれもタフで長く着られるつくり。結果的に“1回あたりのコスパは高い”と言えるブランドだ。
購入は、公式オンラインストアのほか、全国の直営店や正規取扱店で可能。
パタゴニアが紡ぐ“循環する素材”。
パタゴニアにとって素材は、単なる“服の材料”ではなく、理念を形にするための手段だ。どんなに優れたデザインでも、地球に負荷をかけてしまえば本末転倒。だからこそ、同ブランドは素材づくりそのものを「環境へのアクション」として捉えている。
海では、廃棄された漁網を再生して生まれたNetPlus®ナイロンが、バギーズ・ショーツやレインジャケットの表地として形を変えて生まれ変わる。大地では、農薬や化学肥料を使わずに土を再生するリジェネラティブ・オーガニック・コットンが、Tシャツやスウェットの基盤になっている。
さらに化学の領域でも、有害なPFASを使わない撥水加工への切り替えが進み、現在ではほとんどの製品でPFASフリーを実現している。
そして、素材を扱う“人”の環境にも目を向ける。フェアトレード認証工場の拡大や、作業環境の安全にも配慮したブルーサイン基準の採用を通して、環境と労働の両面で責任を果たそうとしているのだ。
こうした取り組みはすべて、「服をつくること」と「地球を守ること」を切り離さないための試み。素材のひとつひとつに、未来へつながる循環の意志が込められている。
服と人をつなぐリペアプログラム「Worn Wear」でメンテナンス&リペア。

「私たちが地球のためにできる最善のことのひとつは、モノを長く使いつづけて、私たちの全体的な消費を減らすことです。」──これはパタゴニアの公式サイトに掲げられたメッセージだ。新品を買うよりも、いまあるものを大切に使い続ける。その考えを実際の行動へと落とし込んだのが、修理・再販プログラム「Worn Wear」である。
ウェアの破れやファスナーの不具合といったトラブルを修理し、再び使える状態にしてユーザーのもとへ返す。日本では鎌倉と横浜にリペアセンターを構え、熟練のスタッフが一着ずつ手作業で仕上げている。
さらにユニークなのが、全国を巡る「Worn Wearツアー」だ。修理スタッフが工具やミシンを積み込んだ“リペアトラック”でフェスやイベント会場を訪れ、来場者の服をその場で直す。
車内にミシンの音が響くなか、持ち込まれたジャケットやショーツが次々と息を吹き返す。その光景をきっかけに、服や自然の話で人がつながり、ブランドの理念が“体験”として広がっていく。
パタゴニアが大切にしているのは、「新品よりもずっといい」という考え方。擦れや継ぎ当て、色あせのひとつひとつは、その人が過ごしてきた時間の証であり、服に刻まれた物語でもある。
Worn Wearは、そんな使い続けることの価値”を改めて気づかせてくれる。それは単なるリペアプログラムではなく、服を通じて人と地球をもう一度つなぎ直す、パタゴニアらしいアクションだ。
地球とともに生きる、その姿勢を纏う。
1973年の創業以来、“地球を守りながらビジネスを行う”を掲げ、環境への責任と真摯に向き合ってきたパタゴニア。その一貫性は、アウトドアと街の境界を軽やかに超える実用的なプロダクトに結実している。
軽くてあたたかい「シンチラ」や、水陸両用の「バギーズ・ショーツ」、防風フリースの定番「レトロX・ジャケット」など、どれも環境への配慮と高い機能性、そしてデザイン性を兼ね備えた名品ばかり。
自然と街を自由に行き来できるウェアを、地球にもやさしい形で。パタゴニアのラインナップから、あなたのライフスタイルにフィットする一着を見つけてみてほしい。









