
ワークウエアの大先輩である「POST O’ALLS(ポストオーバーオールズ)」のデザイナー大淵さんに、ワークウエアは作業着であり、日常着であること、ミリタリーやアウトドアに派生した、機能服の起源であるということを教えてもらいました。
ミリタリーもアウトドアも、元を辿れば、ワークウエア。
「ボクは飽きっぽい性格なので、見た目のスタイルやデザイン、ディテール、そして日常着としても、ワークウエアなら長く着られるかな? 飽きがこないかな?と思ったことをきっかけに、ワークウエアをブランドの軸にしたんです」。


’93年にアメリカ・ニューヨークでポストオーバーオールズを設立した大淵さん。’80年代、ヴィンテージバイヤーとして、多くのヴィンテージウエアに触れてきたなかで、当時、まだ知られざるワークウエアの魅力にどんどんのめり込んでいったという。


その頃はもちろん、現在のように年代考察もされず、見向きもされないなかで、自ら過去のカタログなどを参考資料とし、知識を深めたのだという。「リーバイスやリーなんかは、ある程度知られていましたが、ワークウエア、とくに戦前のものとなると誰も知らなかった時代。これまでに見たこともないデザインやディテールに面白さを感じました。」

「当然、ヴィンテージウエアが好きでしたのでよく着ていたのですが、基本的にはアメリカの服なので、相対的に古着ってジブンにピッタリくるものがないんですよね。それならば、ヴィンテージと合わせる服をコンセプトにジブンで作ろうと思ったのが服作りのはじまりです」。

チャイナとワークからインスパイアされたデザインで、1950年代にパブロ・ピカソが着用していたスマイルポケット仕様。各¥48400
アメリカ風味ではなく、正真正銘、メイド・イン・USAを手がけてきた大淵さん。ブランドの初期コレクションでは、ヴィンテージワークウエアをベースに、当時の最新機能素材として注目を集めていたポーラフリースを使ったアイテム、またのちにタフタナイロンを用いたワークウエアやジャージ素材など、クラシカルなスタイルながらも新鮮な素材選びで、多くのファンの心を惹きつけてきた。
「アメリカのワークウエアは、1910年代から1930年代が黄金時代。そのあとは簡素化されていくのですが、この時代にいわゆるアメリカらしいワークウエアのデザインが生み出され、のちのミリタリーやアウトドアウエアのプラットフォームとなり、大きな影響を与えたことは間違いありません。これらはワークウエアが派生したもので、起源というのもあながち間違ってはいないはずです。大きな違いとしては、ミリタリーやアウトドアは用途が細分化され、はっきりとしているため、日常着としてジェネリックなものではない。」
「反対に、ワークウエアは作業着でありながら、デイリーウエアとしても使えて、しかも丈夫であることから、長く着ることができる。そして、作業着ベースであるため、機能的でシンプルなデザイン、そして流行にも左右されない。ワークウエアが飽きない理由はそこにあると思うんです」。

丈夫なワークウエアとしてのポテンシャルを備えつつ、日常着として長く着られるクオリティ、トレンドなどのルールに影響されることなく着られる服こそ、魅力的な機能服なのだと教えてくれた。


住所:東京都目黒区上目黒1-5-10-105 tel:03-6303-2160
open:11:00~19:00 https://postoveralls.com
Photo/Fumihiko Ikemoto Report & Text/Tamaki Itakura