いろいろと世の中の状況が変化しても、みなさんの趣味の外遊びと、生計を立てる手段としての仕事の役割は変わりなく続いていることかと思います。
そんな今だからこそ、ジブンならではのバランス感覚で「アソビ」と「シゴト」のスタイルをキープしている5人のリアルを、ほんの少しだけ拝見させていただきました。
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トレイルの旅でスパイスにハマり、自身のカレーショップをオープン。
カレーやスパイスを軸に、新しい旅のスタイルも模索中。
「スパイスは大きくわけて、辛・香・色の3種類あるんですよ。それぞれ何を選んで、どう組み合わせるかが腕の見せどころであり、おもしろいところです」。
普段はマイペースながら、スパイスのことになると、ひと際饒舌になる加藤さん。整体師の仕事をしながら独学でスパイスの研究を続け、昨年9月に自身のカレー屋、プラマーナスパイスを、公園内のキッチンキャビンにオープンさせた。
趣味は昔から旅と登山。20代の頃からロングトレイルを楽しみ、国内の名山だけでは飽き足らず、ヨーロッパや南米まで海外遠征することも。スパイスとの出会いも、そんな旅先での出来事だった。
「マチュピチュのトレイルツアーに参加するため、南米のペルーに行ったときです。そのときに同じ宿だったバックパッカーがスパイス料理を振舞ってくれて。正直、味はそこまで美味しくなかったけど(笑)、キッチンから今まで経験したことがないような香りがいっぱい漂ってきて。それがどれも刺激的で、一気にスパイス料理にハマちゃいました」。
その後、帰国してからも現地のスパイス料理の味が忘れられず、気がつけばそのベースとなるスパイスの虜に。
「やっぱりスパイスの魅力をダイレクトに味わえる料理といえばカレー。今度は本場のカレーの味を研究するために、インドやネパールを何度も訪れました。現地でスパイスのことを調べたり、新しい食材に出会うのも楽しかったですね」。
旅好きというフットワークの軽さに加え、興味があることはとことん突き詰める性分が功を成し、スパイスとカレーの知識はどんどん本格的なものに。まわりの友人たちに自作のカレーを振舞っているうちに評判になり、知り合いのバーで夜な夜な限定で提供しはじめたことが、前述のショップオープンへと繋がる。
「まだ自分のお店を構えて半年ほどなので、やっと最近慣れてきた感じです。でも新しいレシピを考えたり、スパイスの作用を調べる時間は、ジブン的には仕事とは思っていません。もちろん経営に関しては勉強することばかりだけど、それは飲食業をするなら当然のこと。研究者ではありませんから。仕事として生産性や利益率を考えなきゃいけないと思っているけど、それでも、どうしても自分の好奇心が勝っちゃうんですよね(笑)」。
現在は整体師のときより忙しい日々のため、旅に出かける時間は減っているというが、それでも空いた時間を利用して山遊びも楽しんでいる。しかし、好きなことを仕事にしたことで、プライベートの登山スタイルも変わってきたとか。
「まず、カレーがもっとも身近になった分、行動食もスパイス料理になりました。登山にマッチするスパイスをいろいろ試してみたりしています。それと、やっぱり登りたい山もインド周辺が多かったり、珍しい胡椒や唐辛子が手に入る産地が気になりますね。とくに山岳エリアの料理は勉強になることばかりです。せっかくなのでトレッキングの趣味を活かして、普通の人はなかなか行かないようなインドの奥地にある山まで足を伸ばしてみるのもいいかなと思っています。今後はスパイス研究家としての視点で、新しい旅を楽しんでみたいですね」。
アソビからシゴトが生まれ、その結果、新しいアソビとの関わり方や楽しみを見つける。そんなアソビとシゴトの関係もあるのだ。
「実は今、鍼灸師の友達と一緒に、白馬の山小屋でワークショップをやる計画を立てているんですよ。それはスパイスと針で、登山客の疲れたカラダを癒すというもの。今までにないスタイルだからおもしろいかなって。もちろん自分が山に行きたいってのもありますけど(笑)。とにかく今はカレーやスパイスを軸に、新しいことを考えるのが楽しいですね」。外遊びから生まれた加藤さんのスパイスへの情熱は、まだまだ尽きない。
Photo/Fumihiko Ikemoto Report & Text/Masatsugu Kuwabara
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