「地方移住」や「二拠点生活」を選びやすくなった昨今。とはいえ実際、いまある生活を抜本的に変えるって難しい。仕事もあれば、家庭も、友人関係だってある。
でも、職場や働き方はそのままで、暮らしだけちょっと離れた場所に移すパターンならどうだろう? いうなれば、“都心勤務、郊外暮らし”。移住や二拠点より、ハードルが低くてリアルな選択だ。

今回話を聞くのは、コロンビアで働く成田和駿さん。サーフィン好きが高じに高じて、メッカの湘南エリアに家を買った。そこに至った経緯、“都心勤務、郊外暮らし”のイイとこ・悪いとこ、ライフスタイルの変化など、ぶっちゃけバナシを教えてもらおう!
【前回記事】東京・青梅のカフェ一体型住居で送る日々と、電車通勤のリアル。
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サーフィン後も“帰らなくていい”ように。
神奈川県藤沢市の一軒家を購入したのは、2024年7月。息子の瑛翔くんが生まれたことで手狭になった賃貸から引っ越したが、それまで暮らしていたのも同じ藤沢市だった。また実家も、藤沢市からほどちかい横浜市。幼少の頃から、比較的慣れ親しんだエリアというわけだ。

大きく変わったのはサーフィンとの距離。21歳からはじめ、いまやプロライセンスを持つほどまで打ち込んでいるライフワークだが、ここに引っ越してくる前は、“通い”だった。
「もちろん通いでもコミュニティの深くまで入ることはできるし、地元のサーファーたちも歓迎してくれます。ただ、サーフィン後はどうしても別の場所へ帰らないといけない。移住して、サーフィン以外の時間もコミュニティに身を置きたいと思ったんです」
藤沢市や湘南エリア、どんなカンジ?
藤沢市を含めこの周辺は、コロナをきっかけに移住者がぐんと増えた。とりわけ子育て世代からの人気が高いのを、成田さんは実感しているという。
「保育園が無償になった東京都内ほどではないですが、藤沢市も、3歳からは無料。子育てのサポートはけっこう手厚いと思います」

自宅から海までは、歩いて10分もかからない。いつなんどきでも海へ行ける距離感は、サーファーとしてはもちろん、父親としてもうれしいという。1歳半のときからロングボードの先端に乗せられている瑛翔くんは、いまではかなり海慣れしている。
「ついこのあいだも、自治体が開催する地引網の体験会に親子で参加しました。そうした地域のコミュニティや交流が活発なのも、このあたりのいいところですね」

また、食の豊かさにも、成田さんは声を弾ませる。自宅は小田急電鉄江ノ島線の「鵠沼海岸駅」と「片瀬江ノ島駅」のあいだに位置するが、そのどちらにも小さな商店街があり、それぞれに地元民が愛する飲食店が多い。
なんてことないスーパーにしても、良質な野菜や魚をつねに取り揃えているし、小さな路地にある野菜の販売スポットで買い物をすることもあるらしい。
「鎌倉野菜や湘南しらすなどの地物を使ったり、自家製の食材を使ったりする店も多くて、そういう料理がとにかくおいしい。都内みたいに便利に何でも揃うわけじゃないですけど、大げさに言うと一つひとつのものに魂が込もっているというか。そういうご当地のものには惹かれますね」

湘南エリアは人気の観光スポットでもあるから、混雑に悩まされそう、という先入観もある。郊外暮らしを選ぶヒトは、都会の混雑を避けて移住するケースも多いだけに。ぶっちゃけどうなの?と聞けば、デメリットになるほどでもないらしい。
「たしかに週末は混雑します。江ノ島水族館も近いのですが、その近辺の立体駐車場はすぐに埋まってしまったり。ただ、都心の混み方ともまた種類が違うというか。僕はこっちのほうが快適に感じますね」
通勤は、ルートを選べるから快適。

成田さんはコロンビアでエリアマネージャーを務めるが、主な勤務先の事務所は千代田線(小田急線と直通乗り換えができる)の「明治神宮前駅」にあり、自宅最寄りの「鵠沼海岸駅」から電車で通勤するルートは2通りある。
「そのふたつのルートがあれば、都内のほかの主要駅にもアクセスがいいので、店舗を回るときにも便利なんです」

「鵠沼海岸駅」2駅先の「藤沢駅」は始発駅なので、そこからはかならず座れる。朝の出勤はだから快適で、帰りは混雑状況や時間などに応じてルートを選び分けているという。
都心までの所要時間は、1時間20分前後。遠すぎずほどよい気はするが、仕事が終わって帰ってくるとそれなりに遅くなるはず。家族との時間は取れているのだろうか?


「通常の帰宅時間は、だいたい22時くらい。ただ、フレックスですし、残業したら別の日に早く帰ることができたりして、日によっては19時に家に着くことも。家族全員で夕飯を食べるとか、息子を寝かしつけるとかも、普段から十分できています」
海の近くだから、“成り行き”に任せられる。
藤沢市の、海の徒歩圏内に家を購入してから、目論見通りサーフコミュニティとの関わりはいちだんと密になったという。仲間とひとしきりサーフィンしたあとも、そのままだれかの家で集まったり、行きつけの飲食店へ行ったりと、楽しみがそのまま続く。



「サーファーって、自然に即して動く人間たちなので、たとえばその日すごくいい波を楽しめたとすると、『なら、夜ももっと楽しみたいよね?』みたいな感じで、そのままだれかの家でホームパーティーがはじまったりするんです。悪く言えばノープランなんですけど(笑)、そういう成り行き的な行動についていけるのは、やっぱりこの近隣に住んでいるからこそ」


そうやって、アソビは近所で完結してしまう。子どもが生まれてガラッと生活が変わったはずの成田さんだが、それによる影響も、ほとんど感じなかったという。
「結婚して、とか、子ども生まれて、とか、みんなそうした変化で付き合いを変えたりしないんですよね。もちろん家族との時間は大切にしていますが、だからといってアソビが疎かになることもない。むしろ『子どもも一緒に連れてきて楽しもうぜ!』みたいな感じなんです」
朝波に乗れば、シゴトも良質に。

なによりは、毎日気軽に、サーフィンにじっくりと向き合えること。都内で暮らすヒトが毎朝ランニングをするような感覚で、毎朝波に乗る生活が、しごく当たり前になった。
「とくに仕事前に海に行けるのは、本当にありがたいですよ。朝一番にまずカラダを動かして、アタマを冴えさせる。それから仕事に臨む。そのサイクルは、確実に、仕事にもいい影響を及ぼしていると感じます」

あくまで仕事優先、家族優先、と話す成田さんだが、だからといってアソビを諦めることなく、むしろ全力を傾けている。ひとつ残らず叶えられたのは、まぎれもなく、“都心勤務、郊外暮らし”を選んだから。
Photo/Shintaro Yoshimatsu
