スポーツウエアで野菜づくり!? 廃棄物を土に変える「フーディニ・メニュー」とは。

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ドイツ南部のフリードリヒスハーフェンで6月18日~21日に開催されたアウトドア関連の見本市「OutDoor 2017」。各ブランドにより新製品発表や趣向を凝らしたテーマの展示がこぞって行なわれる中、にわかには信じられないようなニュースが飛び込んできました。

「スポーツウエアから堆肥をつくり野菜を育てました。ぜひブースで実際にご覧ください」。

スウェーデンのアウトドアアパレルブランド「Houdini」(フーディニ)のプロジェクト、「フーディニ・メニュー」です。同プロジェクトの内容や目的をフーディニCEO、エヴァ・カールソンさん(Eva Karlsson)にうかがいました。


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サスティナブルを超えたプロジェクト。

フーディニ・メニューは、廃棄物となったウエアを干し草などと共に熟成させて土に変え、その土で育てた野菜や果物を料理にして提供するというもの。アウトドアブランドならではのノウハウと環境問題に対する思いによって生まれたエコプロジェクトだ。

下の動画は、フィールドで使用されていたウエアが、土となり、育てた野菜が料理となって提供されるイメージが分かる内容となっている。

建築から化粧品、流通まで現代の幅広い分野で取り組まれているテーマ「サスティナブル」、つまり持続可能であることの第一命題は、地球環境の保全。より自然に近い立ち位置のアウトドア業界では特に高く関心が持たれている。1993年にスタートしたフーディニも、未来への影響を常に考慮しながら製品づくりを進め、サスティナブルであることを追求し続けてきた。

堆肥づくりに用いられたフーディニ製品の一例。

例えば、製品づくりの課程では自然素材を用いたオーガニック染色を採用。また使われる繊維は、リサイクル済み、リサイクル可能、再生可能、あるいは生物分解性を備えている。

2018年のフーディニ春夏コレクションでは、全体の95%がこういった繊維の使用、あるいは世界で最も厳しいとされるサスティナブルの基準「ブルーサイン(※)」認定を受けた施設で生産された製品となっている。

 

  • ※ブルーサイン: 繊維業界が環境・人体に与えるリスクをなくし、責任ある資源活用を促すため2000年にスイスで生まれた国際基準。消費者がサスティナブルな製品を選ぶ上での指標ともなる。大手ブランドではナイキやアディダス、ザ・ノース・フェイス、パタゴニアなどがブルーサイン・パートナーに名を連ねる。
OutDoorのブースでインタビューに応じるエヴァ・カールソン、フーディニCEO。

カールソンCEOは、「何かを始める前に知識を高めることはわたしたちにとってとても重要なこと。例えば環境を何も汚さずナチュラルな製品を生み出すため、ひとつの生地を開発するのに4年半かかります」と話す。

サスティナブルであるためには、オーガニック素材を用いるだけでなく時に技術の粋を集めた最先端の繊維開発が欠かせないのだという。

「保つ」という概念がサスティナブルなのであれば、廃棄物から食物が創出されるフーディニ・メニューはその上を行く「生む」概念を備えたプロジェクトと言ってもいい。

だがプロジェクトが成り立つその土壌は、フーディニが育んできたこうした企業風土や長期に渡る研究の成果として誕生した製品があったからこそ。カールソンCEOはフーディニ・メニューについて、次のステップへの「テスト」と表現した。

 

服から生まれた土は「とても上質」。

©Houdini

フーディニ・メニューがプロジェクトとして実際に稼働を始めたのは、2016年10月。生物分解性を備えるベースレイヤーやミッドレイヤー、Tシャツといった製品を細かく裁断し、干し草・食べ物のかすなどや土と一緒にコンポスターに投入した。6カ月間熟成させて堆肥をつくり、2017年春には土としての活用が可能になった。

堆肥として自然発酵中の土の温度は、57℃まで上昇するという。カールソンCEOは、初めての土づくりを「密閉した状態では冬でも65℃にもなるのよ! 卵料理もできてしまうくらい。自然のちからってすごいわね」と、驚き感動した様子で振り返った。

さらに、「できあがった土は、とても上質なのよ」とカールソンCEO。フーディニのOutDoorブースでは、この土で育てられたバジルやパセリ、ローズマリー、ミントといったハーブがずらりと並んでいた。

新製品の展示スペース横に並んだハーブの美しいグリーンを実際に目前にすると、「ナチュラルな製品が帰り着く先はやはり自然だったのだ」――そんなことを実感せずにはいられない。

 

「フーディニ・メニュー」の土で育てられたフレッシュなハーブはフルーツと共にミックスジュースとしてブースで提供された。

摘み取られたフレッシュなハーブは、市販のフルーツと合わせてミックスジュースに利用され、ブースを訪れた人たちに振る舞われた。またフーディニ・メニューでつくられた土は、小ぶりな紙袋に入れてスナップエンドウの種と共にプレゼントとしても手渡されていた。

「フーディニ・メニュー」のリーフレットと、おみやげとして用意された土(紙袋)、そしてスナップエンドウの種。

 

 

いつかは日本でもポップアップレストランを。

©Houdini

フーディニ・メニューを“テスト”と表したカールソンCEO。テストがどこまで進んでいるのか尋ねると、すでにスウェーデンでは自国のシェフとフーディニ製品からつくられた土で育てられたハーブやフルーツ、マッシュルームを用いたメニューを考案し、招待客を集めたグルメイベントを開催させるに至ったという。

©Houdini

「(廃棄物から)何か新しいものが作り出されることがどれほど素晴らしいか、美しくなれるかということを共有したくて実施しました。ポップアップレストランの企画も立て始めていますよ。いつの日かフーディニ製品を展開する各国――ノルウェーや日本、ドイツでは確実に、このポップアップレストランを開けたらと思っています」

ただし肝心なのは、「廃棄される製品が多くないこと。つまり、ポップアップレストランのために廃棄物が増えるようでは元も子もない」(カールソンCEO)ということだ。フーディニ製品は、どのコレクションを見ても非常にシンプル。生地などのクオリティーに裏付けられた快適性はもとより、「12年はもつデザイン」を意識して製品化されているのだそうだ。

©Houdini

フーディニ・メニューが利益につながるのかといえば、そうではない。経費としては「けっこうかかっていますね…」と明かしたカールソンCEO。そんなカールソンCEOにこれから先10~20年、フーディニが目指すものを問うと少し考えてから答えた。

「わたしたちのビジョンは、(リサイクルといった)自然のしくみを模倣する課程を終えて、地球に一切のダメージを与えず社会に貢献していくこと。今現在はまだ問題もあるけれど、10年でたくさんのことが変わっていくでしょう。(地球にとって)いい製品だけを残していきたいですね」

 

Photo/Aki SCHULTE-KARASAWA、Houdini

Text/Aki SCHULTE-KARASAWA


■フーディニメニュー公式サイト:www.thehoudinimenu.com/

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GO OUT編集部
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