名は体を表す、とはよく言ったもので、「bal(バル)」の服づくりの端々には調和や秩序が漂う。独自の感性で日本と世界のファッション・文化を交差させる、世界が注目する敏腕デザイナーもそう。そんな彼らの旗艦店を訪ねた。
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デザイナーの私物に、その頭の中とブランドのこだわりを覗き知る。
無から生まれるデザインはない。とりわけメンズウエアの世界では、アウトドアやミリタリー、ワークといったカテゴリが明瞭で、いかにそれらに精通し、知識を持っているかがものをいうことも少なくない。そういう意味で、「bal(バル)」のモノづくりはまさに正統をいく。
デザイナーである蒲谷健太郎さんは、常日頃からさまざまな洋服にアンテナを張り巡らせ、買い物という名の探求にも余念がない。この世界でのキャリアはスタイリストとしてスタートするが、当時もいまも、「コレとコレをこんな風に組み合わせて、みたいに、ボクにとってのデザインは〝編集〞です」と、先立つのは〝モノ〞だと言う。そして、そんなプロの服バカである彼の目配せを、いま、プロアマ問わない世界中の服好きたちが追っている。
2003年にスタートしたバルだが、近年の隆盛を語るうえで欠かせないトピックのひとつは、名だたるブランドや気鋭のショップとのコラボレーションだろう。秀作を連発し、各所からラブコールが絶えないそのワケは、バルの〝流儀〞によるところも大きそうだ。
「世界中のデザインが、ネットにいくらでも転がっていて、なんとなくで拝借できてしまう時代です。でも、ボクはちゃんと実物を見たいし、人と関係をつくりたい。筋を通したいんです」。
ブランドの十八番的ディテールである〝ステルスポケット〞についても、出所をきちんと明言することを忘れない。
「和田さん(ギークアウトストア・和田直幹)のコレクションからアイデアをいただき、忠実にトレースしました」。
その実直さは、服好きへのリスペクトの証左であり、モノへの愛ともいえる。
今回は、そんな蒲谷さんの私物をたっぷりと拝見した。それが〝バル〞というブランドを知るための近道になるはずだから。
自他ともに認めるスニーカー狂の私物、拝見。
アシックスやリーボックを皮切りに、数々のシューズメーカーと秀作を生み出してきたその手腕は、周知のとおり。そのインスピレーション源とも言える私物には、スニーカー愛や靴づくりへのリスペクトが滲む。
パリのギャラリー兼飲食店・JAH JAH別注のサロモン 。
「日本での展開は極少量だったため買えず、先日のパリ出張で店舗を訪れたときに、奇跡的にバックヤードに残っていた在庫を譲っていただきました」。
キーンとミタスニーカーズのコラボは、使い勝手バツグンとの声が相次ぐ可動式ヒールストラップを、蒲谷さんもベタ褒め。
パリのショップ・THE BROKEN ARM別注のサロモン 。
「昔のアフタースキー用シューズっぽいですね。ほどよくモード感もあっていい。この店の別注は毎回素晴らしくて、いつも買わざるを得ないんです(笑)」。
プラダスポーツの古いマウンテンブーツ。ティンバーランドとステューシーのコラボシューレースに付け替えている。
Tomo & Co.のゲストデザイナーとして蒲谷さんが製作。日本の作業着も着想源だとか。
Kiko KostadinovとAt.Kollektiveのコラボ作。エッコ・レザーに型押しデザインを加えた。
「オリジナルのエア モックを思わせるシャープなシルエットがいい。キコは、とにかくシューズデザイナーとして優れていると思います」。
ファッション“じゃない”街から文化を発信。
渋谷や中目黒といったいわゆるファッション激戦区や商業地からほどよく距離をとった、むしろ生活の気配やチルなムードが漂う五本木。そこから発信されるセレクトやカルチャーに、いま世界が熱視線を送る。
ブランドをスタートした3年後にあたる2010年、五本木・駒沢通り沿いにフラッグシップストアを構えた。
ガレージ風のその建物をレコードショップ・JAZZY SPORT MUSIC SHOPやデザイン事務所とシェアす
る形態で、店舗よりバックオフィスの方が広いという贅沢なつくり。
店舗設計は、ナイキやノンネイティブなどのショップを手がけてきた建築デザイナーによるもの。
バルの商品はもちろん、独自の審美眼でセレクトしたシューズや小物、カセットテープ、アートブックなどが店内には並び、ストリート、アウトドア、ワークなどの垣根もなく、同じ棚やラックにひしめきあうクロスカルチャーな空間となっている。
“枠”を超越した多彩な最新コレクション。
ストリートに軸足を置きつつ機能もデザインもとことん突き詰めた新作が、今季も続々。あの大手アウトドアメーカーや知るヒトぞ知るな気鋭ガレージブランドとのコラボなど、一挙手一投足から目が離せない。
(左)PULLOVER MEXICAN HOODED SHIRT ¥41800、(右)MULTI POCKET CHORE JACKET ¥36300
左はやわらかなコットンフランネル生地を使ったメキシカンパーカ型のプルオーバー。オリジナルオンブレーチェック柄はモダンな印象で、春夏のレイヤードにもってこい。コンシールファスナー採用。
右はフランスで農作業用などに使われていたチョアジャケットをモチーフにしたコットンオックスジャケット。ウォッシュ加工が施されたアジのあるルックスを、コーデュロイの襟が品よくまとめた。
DOUBLE BUTTON SHIRT ¥29700、CHECKERED LOOSE GAUGE CROCHE SWEATER ¥34100
左はダブルボタンアップフロントのストライプシャツ。ボタンは機能重視ゆえに必要最小限にとどめ、存在感もほどよい。裾を出して着ても収まりのいいリラックスフィット。
右はタンクトップやグラフィックTの上から着たい、ざっくりとしたクロシェ編みのニット。ゆるめのシルエットだが、ネックや裾がリブ編みされてあるため、だらしなくならない絶妙なバランスに。
CRINKLE WIDE MOUNTAIN PANT ¥25300、BAL / FARAH WIDE TAPERED EASY PANT ¥30800
左はコットンナイロンのリップストップに塩縮加工を施し、表情ゆたかに。タック入りの立体的なシルエットで、膝の曲げ伸ばしもスムーズでアウトドアシーンにも◎。ウエストはゴムとベルトを併用。
右はパンツに定評のある米・ファーラー社とのコラボ作。スラックス見えするが、ドローコードウエストのイージー仕様。UVプロテクション、防シワ加工が施された2WAYストレッチ素材を採用している。
(左)BAL / RUSSELL ATHLETIC HIGH COTTON CREW ¥18700、(右)SWEATPANT ¥23100
トップスは、セットインとラグランの中間のようなショルダーパターンがミソ。ヴィンテージの編み機で織られたハイコットン裏毛を使用し、しっとりソフトなタッチに。
(左)LOGO TIE DYE TEE ¥13200、(中)BAL / GRAMICCI PIGMENT DYED PANT ¥20900、
(右)BAL / UMBRO SOCCER JERSEY ¥27500
(左)タイダイアーティスト、YUKI D.Y.Eによるオリジナルハンドダイを施したショートスリーブT。左胸にはリフレクター仕様のロゴをオン。幅広い春夏コーデに使いやすいレギュラーフィット。
(中)グラミチ定番のコットンツイル素材に、ピグメント加工とウォッシュ加工を施すことでヴィンテージライクな表情に仕上げた。コーディネートを選ばない、深煎りコーヒーのような色合いが魅力。
(右)ファッションシーンで人気沸騰中のアンブロとコラボレートしたサッカージャージ。オリジナルグラフィックの総柄テキスタイルが、運動着感を軽やかに払拭。吸水速乾機能のポリエステル素材。
(左)BAL × GEEK OUT STORE HEAT REACTIVE ANIMAL BANDANA 各¥5500、(中)BAL / WILDTHINGS STRECH BELL HAT ¥9900、(右)BAL / SPEAKEASYCROSSBODY SLING TOTE ¥28600
(左)謎多き注目のショップ、ギークアウトストアが開発した、体温で色が変化するヒートリアクティブ素材を使用したバンダナ。アニマル柄はバルのオリジナル。バル フラッグシップストア限定販売。
(中)ストレッチポリエステルを採用したパネルベルハット。後ろに向かいツバがやや短くなった収まりのいいバランス。バックにはサイズ調節用ドローコードを配し、風の強い日でも安心して被れる。
(右)東京発のバッグメーカー・スピークイージー製スリングトート。6個のポケットを備えるとは思えないミニマルなルックスで、ショルダーアジャスターも内側に取り付けられ、見た目に干渉しない。
(左から)BAL / RAMIDUS TECH WIPER ¥2090、RIP BALM HOLDER GOLD ¥50600、BAL / EARTHWELL 12OZ ROASTER LOOP BOTTLE ¥10450、BAL / RIG FOOTWEAR NOHY ¥16500
ネオプレーン素材のケースに折り畳んで収納可能なマイクロファイバーは、メガネ拭きやスマホクリーナーに。リップバームホルダーはアクセサリー感覚で、所有欲をくすぐる。
ポートランド発のガレージブランド・アースウェルとのコラボボトル。ワンハンドオープン式で扱いやすく、キャップのループ部分にカラビナを取り付ければ、バッグやストラップにかけられる。
リグ フットウェアではお馴染みのロープとベルクロテープのみで構成されたアッパーをシンプルなカラーリングでまとめながら、リフレクターや独特のステッチパターンでさりげない主張をプラス。
(問)バル フラッグシップ ストア tel:03-6452-3913 baloriginal.com
Photo/Takuma Utoo Report & Text/Masahiro Kousaka