前人未踏の沢を登る、世界屈指の「渓谷探検家」大西良治氏の写真集が話題に!

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水流が作り出す神秘的な景観に魅了され、外界とは隔絶された未知の世界に挑戦し続ける“渓谷探検家”、大西良治氏による「渓谷登攀」が話題となっている。

A4判の豪華な写真集とも言える318ページにも及ぶ大作だ。

登攀技術やロープワーク、経験による危険回避など、高難度の沢登りには多くの必要事項が伴う。

リバートレッキングなどとも呼ばれる「沢登り」。その名の通り川を登り、川の起源まで到達する登攀の一種で、発祥は1900年以前の登山にあるという。

藪を掻き分け、滑りやすい泥や崩れやすい岩が点在する場所を登るよりも、沢づたいに登ったほうがラクな場合もあり、そんなことから沢登りは始まった。

数人でのパーティで登る場合はプレッシャーは5分の1以下になるという。

もちろんガイド付きでチビッコも楽しめるリバートレッキングなども夏には人気で、比較的ハードルは低い。

海外には川を上流から下降していくキャニオニングというカテゴリーはあるが、川を登っていく「沢登り」は日本が発祥だ。海外でも川を遡行することは「SAWANOBORI」と呼ばれている。

いわゆる沢登りとなるとトレッキングとは違ってハードルが高く、水を浴びながら滝を登ったり、釜(滝つぼ)を泳いだり、冷たい水に浸かり続けて低体温症になる危険もはらんでいる。

役割分担ができず、プレッシャーも大きいが、最も登りがいのある沢はソロ(一人)で行きたいという大西氏。クライミングで培ったフィジカルだけでなく、強いメンタルも必要とされる。

このような難易度の高い沢登りに特化した人々は「沢屋」と呼ばれ、大西氏のようなトップクラスの沢屋ともなると、高度数百メートルの滝や、幅数メートル、両岸の岩壁は高さ数百メートルにもなる岩の谷間「ゴルジュ」が登攀の目標となる。

高度数百メートルにも及ぶ絶壁に隔絶された渓谷内。ひとつの判断ミスが生死を分ける極限状態だ。

不可能と言われた称名川(北アルプス)の完全遡行は今も語り継がれる大西氏の偉業だ。

数万年もの年月をかけて水が彫刻した美しいゴルジュは、未だに前人未踏のものもあり、大西氏もそんな未踏のゴルジュを求めて海外にまで活動拠点を拡大している。

前人未踏の沢、称名川の遡行をはじめて成し遂げたのも大西氏だ。読むだけでドキドキしてくるドキュメンタリーだが、1週間以上にも及ぶ過酷な登攀をソロで行ったことにも驚きだ。

ちなみに、このような難易度の非常に高い沢登りは、複雑なロープワークや専門的な技術はもとより、クライミング能力も必要とされる。

じつは大西氏はクライミングジムの店長経験もあり、非常に高いクライミングレベルを持っているだけでなく、クライミングジムの登るルートを作るプロとしても知られている。

クライミングジムで「課題」と呼ばれる登るルートの設定も大西氏の仕事。肺魚のマークは大西氏の課題であることのマーク。5.10Cというのは難易度を表している。

今回取材に使用した西東京市のクライミングジム・ギリギリにも大西氏の課題があり、それらの課題はクライマーからの人気も評価も非常に高い。

そんなトップクラスのクライマーだけが目にすることができる沢登りの名場面や景観、詳細な行動記録が収められた「渓谷登攀」。思わず感情移入してしまう臨場感のある冒険紀行が、沢屋はもちろん、山好きの間で話題になっているのだ。

【書籍紹介】

渓谷登攀 ¥3850 (税込)
大西良治(著)(山と渓谷社刊)
yamakei.co.jp/products/2819180530.html

大西良治(おおにし りょうじ)

1977年、愛知県江南市生まれ。東京在住。ボルダリングは四段。ルートクライミングは5.14a。日本山岳スポーツクライミング協会ルートセッター。日本山岳ガイド協会フリークライミング・インストラクター。現在までに260以上の沢を遡行。

(取材協力)
■クライミングジム  ギリギリ(東京都西東京市西原町5-2-1)climbing-girigiri.com/
ボルダリング・リードクライミング・スピードクライミングが楽しめ、オートビレイ4基、無料駐車場あり。

Report & Text/Tsuyoshi Chiwa

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GO OUT編集部
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