
京都府南部、奈良県との境、木津川上流の山峡に位置する笠置町。全国にある「町」のなかで人口が2番目に少なく、西日本では最少のまちだ。JR笠置駅から徒歩約1分、笠置キャンプ場からも徒歩約2分。そんな笠置の中心部に店を構えるのが、「THE UNFORM STORE(ザ アンフォーム ストア)」だ。
店内に並ぶのは、国内外から集めたアウトドアギアに、街でも着たくなるウエア、海外雑貨、ミリタリー古着。用途も生まれも異なるものが、コンパクトな空間にぎゅっと詰め込まれている。

店を任されているのは石橋さん。これまでの仕事で培った経験と、キャンプや釣りといった自身の遊び。その両方が、商品の選び方や店内のつくりに表れている。
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元商店をDIY。店内にも“好き”を詰め込んで。

THE UNFORM STOREが入っているのは、かつて菓子や化粧品などを扱っていた昔ながらの商店。その後、アウトドアブランド「ASOMATOUS」が、ブランド立ち上げ当初から事務所として使ってきた建物だ。
笠置キャンプ場から徒歩約2分という立地を生かし、使わなくなったキャンプ道具を持ち込み、代わりに別の商品を買って帰れるリユースショップを作るつもりだったという。
しかし、商品の確保や運営体制を検討するなかで、現在のセレクトショップへと構想が変わっていった。

その店づくりに加わったのが石橋さんだ。整備士として4年間働いたのち、アウトドアとファッションを扱うショップへ転職。販売や商品の仕入れを経験するなかでASOMATOUSのメンバーと出会い、店づくりに携わることになった。
商品構成も、アウトドアギアを軸に、街でも着やすいウエアや海外雑貨へと広がった。こうして、アウトドアショップとも洋服屋とも雑貨店とも少し違う、現在のTHE UNFORM STOREができあがった。
店内も、最初から現在の姿だったわけではない。壁を整え、照明を取り付け、試着室や商品棚も自分たちで制作。商品の量や種類が増えるたびに、少しずつ売り場へ手を加えてきた。

DIYには、整備士時代から工具を扱ってきた経験も生かされたという。木材を切って、削って、塗る。身近な人たちの力も借りながら店内を仕上げていった。
元商店の面影を残しながら、必要な什器を自作し、商品の増加に合わせて売り場を更新してきた。完成形を最初に決めるのではなく、店と商品に合わせて手を入れ続けていることも、この空間の特徴だ。

古いタックルが好きで、集めてきたものを実際に店内にも置いている。笠置周辺へ川釣りに訪れる人も多いため、それをきっかけに来店客との話が弾むこともあるそうだ。
店内に流れるレコードも印象的。当初は「店をやるならレコードをかけたい」と形から入ったそうだが、曲を飛ばさずアルバムを通して聴く面白さにハマり、いまでは店内に欠かせないものになっている。

木の温もりを感じる手作りの什器には、国内ではあまり見かけないアメリカ雑貨や、定番アウトドアブランドのギアが並ぶ。その一方で、シンプルなショーツなどのウエアに、使い込まれた私物の釣り竿までディスプレイされている。
異なるテイストの商品と私物が混ざり合う店内には、店主・石橋さんの趣味や人柄がにじむ。店としてセレクトした商品と、日頃楽しんでいる遊びの道具を一緒に見られることも、この空間の面白さだ。
忘れ物を買う人も、わざわざ服を見に来る人も。

2024年4月27日にオープンしたTHE UNFORM STORE。当初は来店客の約8割が、すぐそばにある“笠置キャンプ場の利用者”だったという。
キャンプ場から歩いて来られるだけに、ときには「ガス缶を忘れた」と駆け込んでくる人もいる。いざというときに消耗品やギアを調達できる、いうなればキャンプの駆け込み寺的ショップだ。
一方、SNSではキャンプ用品店らしさを前面に出しすぎず、ウエアや海外雑貨も発信してきた。そうした投稿や口コミを通じて店そのものが知られるようになり、客層も少しずつ変化。
現在は、キャンプをする人としない人がほぼ半々で、京都市内や大阪市内から、ウエアや雑貨を目当てに笠置まで訪れる人も増えているそうだ。

服や海外のちょっと変わった雑貨から店を知り、実際に訪れてみたらアウトドアギアにも興味が湧いた。そんなお客さんもいる。
ギアは使ったもの。ウエアは街で着るもの。雑貨は「いらないけど、欲しい」もの。

アウトドアギア、ウエア、海外雑貨、ミリタリー。ジャンルだけを見ると幅広いが、何でも無作為に仕入れているわけではない。
同店でセレクトするギアは、実際に石橋さんがフィールドで使ってよかったものが基本だ。カタログに書かれたスペックと、フィールドへ持ち出したときの感覚は必ずしも同じではない。実際に使っているからこそ、商品の長所だけでなく、気になったところや、どんな使い方に向いているのかまで伝えられる。

ウエアは、街でも普通に着られることと、ブランドロゴの主張が強すぎないことを基準にしているという。キャンプのために買った服を、キャンプの日にしか着ないのはもったいない。普段の服装にも取り入れやすく、そのままフィールドへも着ていけるものを中心に選んでいる。

そして、雑貨を選ぶ基準は「いらないけど、欲しいもの」。
なくても生活には困らないが、店で見つけると妙に気になり、手元に置いておきたくなる。THE UNFORM STOREには、そんな雑貨が並んでいる。
売り切れたら同じ商品ではなく、また別のものへと入れ替えていくから、訪れるたびに違う商品と出会える。何があるかわからないまま、新鮮な気持ちで棚を眺められるのも、この店を訪れる楽しみだ。
店内で見つけた、THE UNFORM STOREらしい4アイテム。
ここからは、幅広いラインナップから4つのおすすめアイテムをピックアップしてもらった。
家でも外でも使いたい、Made in USAの「LAWN CHAIR」。

LAWN CHAIR「LOW BACK BEACH CHAIR」 ¥14300
最初に紹介してもらったのが、アメリカ製の「LAWN CHAIR(ローンチェア)」。アルミフレームにカラフルなウェビングを張った、1960年代のアメリカを思わせる折りたたみチェアだ。
「LOW BACK BEACH CHAIR」は低めの座面で、脚を伸ばしてゆったり座りやすい。腰を痛めた経験からたどり着いたアイテムだそうで、軽量なアルミフレームなので持ち出しやすく、汚れれば水洗いできるため、キャンプやビーチでも気兼ねなく使えるのも優秀。

一見すると存在感のあるウェビングのカラーも、自然のなかでは意外なほど馴染む。室内にも合わせやすく、フィールド専用にせず家でも使えるのも魅力だ。

古くなったら買い替えるのではなく、ウェビングを張り直す。家とフィールドを行き来しながら、長く使える一脚だ。
釣りの話から生まれた、Connett別注の防水ショーツ。

Connett「Fishing Baker Shorts(THE UNFORM STORE別注カラー)」 ¥13200
東京・下北沢の「WED STORE」が手がけるフィッシングブランド「Connett(コネット)」の「Fishing Baker Shorts」。石橋さんとWED STOREのオーナーがともに釣り好きだったことから話が弾み、THE UNFORM STOREの別注モデルが生まれた。
素材は日本製の3レイヤー防水生地。軽く、水や汚れに強いため、釣りや川遊びでも扱いやすい。当初は防水ショーツの必要性に半信半疑だったそうだが、実際に使ってみると汚れを落としやすく、日常でも扱いやすかったという。

ベイカーパンツを思わせるポケットと、短くなりすぎない丈もポイント。水辺で使える機能を持ちながら、いかにもアウトドアウエアという見た目にならず、街でもそのまま穿きやすい。
ウエストは73〜110cmに対応するワンサイズ。シームテープ処理は施していないため完全防水ではないが、バックポケットには止水ファスナーを装備し、座った際の砂や草の侵入も防いでくれるそうだ。
釣りで使える機能と、街でも穿きやすいデザインを両立した、THE UNFORM STOREらしい別注ショーツだ。
泥と藍が描く、同じものが二つとない手ぬぐい。

devadurga「DOROZOME TENUGUI(MULTI)」 ¥2750
店内でひときわ目を引いたのが、奄美大島を拠点とする「devadurga(デヴァドゥルガ)」の「DOROZOME TENUGUI」。奄美の伝統的な泥染めと藍染めを組み合わせ、空から見たサンゴ礁の海を表現した手ぬぐいだ。
奄美に自生するテーチ木や鉄分を含んだ泥を使い、一枚ずつ手作業で染色。ランダムに染められるため、色の入り方も柄も同じものはない。

汗を拭いたり、首に巻いたり、荷物を包んだり。道具としての用途はいくらでもあるが、広げたときの表情そのものに惹かれて選びたくなる。
実用品でありながら、なくても困らない。でも、なんだか持っておきたい。THE UNFORM STOREが雑貨に求める感覚にも通じる一枚だ。
釣りにもSUPにも。EVAで作った「チルバ」。

Tokio hat × ASOMATOUS「EVA CHILLBA HAT」 ¥9900
1892年創業の帽子ブランド「Tokio hat」とASOMATOUSがコラボレーションした「EVA CHILLBA HAT」。大きな円錐形のシルエットが目を引くが、見た目のインパクトだけを狙った帽子ではない。

素材には、ASOMATOUSのバッグシリーズ「EVACON」にも使われるEVAを採用。水や汚れに強く、全面に施されたパンチングによって風も抜ける。広いツバが頭から首まわりの日差しを遮り、あごひもとサイズ調整機能も備えている。

キャンプやフェスはもちろん、釣り、SUP、ビーチなどの水辺にも持ち出しやすい。道具としての機能はきちんと押さえつつ、見た目にはひとクセ。この店で扱うアイテムらしいバランスだ。
買い物だけで終わらせない。店の外にも、笠置の遊びが続いている。

石橋さん自身、外遊びのスタートはキャンプではなかった。原付を買って、外へコーヒーを飲みに行く。最初はそれくらいだったという。
だからこそ、外遊びを始めるために、いきなりテントや寝袋を揃えなくてもいい。気に入った道具をひとつ持って外へ出るだけでもいいし、それをきっかけに釣りやキャンプへ興味が広がってもいい。

THE UNFORM STOREでは今後、商品を販売するだけでなく、“やってみる”きっかけになるイベントも増やしていきたいそうだ。取材時に準備を進めていたのが、devadurgaの職人を招いて行う泥染めのワークショップ。手ぬぐいを自分で絞り、それぞれ異なる柄に染めていく。

現在は商品が増え、店内もかなり賑やかになってきた。将来的にはもう少し広い場所への移転も視野に入れつつ、THE UNFORM STOREとしてイベントにも出店し、普段オンラインで購入している遠方のお客さんと直接会える機会も増やしていきたいそうだ。
THE UNFORM STOREまで来たなら、買い物だけで帰るのは少し惜しい。河川敷ではキャンプだけでなく、カヌーや釣りを楽しむ人の姿も見られる。

笠置大橋付近にはフォールディングカヤックを手がける「フジタカヌー」の拠点があり、笠置は巨岩が点在するボルダリングエリアとしても知られる。東海自然歩道や笠置山もあり、ハイクまで含めれば、店の周囲だけで遊び方はいくつも見つかる。
キャンプ、釣り、カヌー、ボルダリング、ハイク。ひとつの遊びに絞らず、その日の気分で選べる。THE UNFORM STOREの品揃えがひとつのカテゴリーに収まらないのも、そんな笠置の環境を知ると腑に落ちる。
買い物のあとは、歩いて古民家カフェ「このか」へ。

取材はできるだけ、お昼どきに終わるようにしている。本連載恒例の「おすすめランチ」を楽しむためだ。
今回も石橋さんに近くのご飯屋さんを尋ねると、教えてくれたのが古民家カフェ「このか」。取材を終え、さっそく向かうことにした。
注文したのは、近隣の鳥肉専門店「ナカムラポートリー」から仕入れた鶏モモ肉を使う「鶏丼」。

解体時の品質低下を抑え、鮮度にこだわっている。「このか」でも、その鶏肉を毎日少量ずつ仕入れているという。
鶏丼は、固くならないよう優しく火を通し、仕上げに皮目を香ばしく炙ったもの。鶏肉はプリッと弾むような食感で、鶏出汁を使った少し甘めの特製ダレがしっかりと絡む。南山城村産の米とも相性がよく、取材後の腹を満たすには申し分のない一杯だった。

京都といえばハモ。そんなイメージもあって、この日はハモのフライも注文した。
揚げたての衣はサクサクで、その内側の身は驚くほどふわふわ。魚特有の臭みもなく、淡白なハモの味わいと衣の香ばしさが合わさり、鶏丼と一緒でも重たさを感じず、ペロリと食べられてしまった。
笠置町を訪れたなら、THE UNFORM STOREとあわせて立ち寄りたい一軒だ。
笠置まで足を運んでわかる、THE UNFORM STOREの世界観。

笠置町という立地もあり、THE UNFORM STOREをInstagramやオンラインストアでしか見たことがない人も多いのではないだろうか。筆者も取材前までは、そのひとりだった。
実際に店を訪れると、オンラインで見ていたギアやウエアの間に、見たことのない海外雑貨や、以前から気になっていたガレージブランドのアイテムまでが混ざり合う。まさに「UNFORM=定形のない」という名の通り、ひとつのカテゴリーには収まらないショップだ。
オンラインでその品揃えに惹かれた人ほど、実店舗はさらに刺さるはず。そして店を出れば、すぐそばには木津川が流れ、笠置山も身近にある。THE UNFORM STOREのセレクトと世界観は、店内だけでなく、笠置の環境まで含めて形づくられている。
◼︎THE UNFORM STORE
住所:〒619-1303 京都府相楽郡笠置町佃9番地
Open:11:00〜19:00(不定休)
tel:050-3126-0907
ONLINE STORE
THE UNFORM STORE
Instagram
@the_unform_store
