【ブランドピックアップ〜 Trail Bum〜】ULギアのパイオニアが贈る、究極のシンプル、そして確かな機能性。

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ULハイキングを広めた第一人者といっても過言ではないハイカーと、現代ULを最初に落とし込んだ米国ブランドを扱っていた目利きが手を取り生まれた「Trail Bum(トレイルバム)」。そぎ落としたアイテムたちの中に隠れた彼らのマインドが、真の旅好きを刺激している。

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“バム”たちに捧げる、“本質”をついたULスタイルを提案。

アメリカ3大ロングトレイルをスルーハイクし、トリプルクラウナーとなった中井さんが、3つ目のアパラチアントレイルを踏破したときに背負っていたバッグが、写真のトレイルバム“GO-ON”。ミニマリズムとシンプルを追求したブランドの製品ながら、それで必要十分であることが立証された。

旅好きのために生まれた2015年発の「トレイルバム」を知るためにショールームを訪ねると、アルピニズム(パイオニアワーク思考)と、カウンターカルチャーのアウトドア(オルタナティブ思考)についての会話から始まった。ちなみにこのブランドは後者が立ち位置。ディレクションを担っているのはULの名店「ハイカーズデポ」オーナーの土屋智哉さん。昨今は講演会などにも多く出向き、アウトドア文化の底上げに励む有識者である。

「アメリカでは毎日海にいてサーフィンしている連中をサーフバムと言いますが、僕らはそのハイキング版。半年間なにもせずに歩くなんて、社会的に不適合者だけど、そこにはちゃんとした価値が存在する。ULもそんな人たちが育ててきたレイ・ジャーディンが91年にPCTのための軽量化メソッドを書いた本を出していて、僕はあれを現代ULの源流と思っています。当時はULではなく、〝レイウェイ〞と呼ばれてましたが。余談ですが98年にそのレイウェイを落とし込んだゴーライトというブランドが誕生したんです。このトレイルバムを運営するソーズカンパニーが日本総代理店をしていたんですよ」。

ゴーライトが無くなるとき、この世界観を無くすわけにはいかないと、同社の稲垣幸俊さんから話をいただいたのが、トレイルバムが誕生したきっかけだそう。

「かつてのゴーライトのようにできる限りそぎ落とす。特殊素材でなくても今のナイロンなら充分だし、過剰な縫製をせず自作っぽくても問題はない。そしたら製品自体も安くできるし、そもそもバムが高いモノを買えるわけないので(笑)」。

文化をよく理解しているからこそのミニマルデザインだが、無論ファッション的には売りにくい。でもわかっている人には刺さる。主張に溢れかえる今こそ、こんなルーツを重んじたモノを纏いたい。

左が土屋智哉さん。右がブランドを手がけているソーズカンパニーの稲垣幸俊さん。
レイ・ジャーディンの98年書籍『ビヨンドバックパッキング(本文に出てくる91年著の改訂版)』ほか、トレイルバムが世界観を取り入れている様々な書籍。世にULのブランドは数あるが、機能面だけでなく、ULのルーツであるロングディスタンスハイキングや、トレイルバムにまで着目したブランドはそうないだろう。
商業を否定したレイ・ジャーディンの書籍には、バックパックをMYOG(Make Your Own Gear)する方法も載っている。
持っているのは「CT TARP」の原型。土屋さんがちょうどいいタープを求めて図面を引き、妻に縫ってもらったとのこと。
トレイルでの生活に熱中、没頭するあまり、人生の軸足をトレイルに移してしまった人たちを“トレイルバム”と呼ぶ。ブランドのHPには、笑顔で映るハイカーたちの写真があり、トレイルバムを象徴している。そんな彼らに必要とされるシンプルなギアやウエアをつくることがブランドの役目。
“そぎ落とす”ことと、機能面を“足す”ことでディスカッションする2人。

あらゆる“バム”たちによって生まれるユニークなアイテム。

「トレイルバムは特定のデザイナーがいるブランドではない。日本のバムたちみんながデザイナーって感じなんです」と土屋さん。ここに紹介しているモノはすべてリアルなトレイルバムがつくり、使用したモノだ。

約12000kmのトリプルクラウン(アメリカ3大ロングトレイル)を制したハイカーの舟田靖章さんが、その3つのトレイルのうちの2つを踏破する際に使用した自作のバックパック。これを元に、ブランドを代表するバックパック“STEADY”が生まれた。「バムたちがデザイナーであることを証明するブランドのフラッグシップモデルです」と土屋さん。
中井康博さんがトリプルクラウンを制した際には、トレイルバムのバックパック“GO-ON”が使われた。
“STEADY”の2015年ファーストサンプル。
こちらのサコッシュはハイカーの長谷川晋さんが、約4000kmを歩くPCT(パシフィックコーストトレイル)で歩いた際に使った自作のバッグ。これがベースとなったサコッシュ“タートル”は長谷川さんのトレイルネームから名付けた。

ザックひとつで歩き、旅する。ブランドの軸となる道具たち。

バムにとって無くてはならないアイテムがギアであり、バックパックだ。だからこそ、トレイルバムはバックパックづくりに余念がない。あとは好きなモノを詰め込み、魅惑のトレイルへ。オリジナルのタープにも注目だ。

GO-ON ¥37400

ULTRA WEAVE Ultra200Xを使用し、擦り減る底面と本体で厚みを変更。シンプルながら、フロントポケットの応用力をあげることで本体サイズをややスリムにした新たなスタイルが最大のウリ。

STEADY ¥22000

オーバーナイトを目的としたハイキング・ロングディスタンストレイル・長期旅行に対応。長めの吹き流しで容量をコントロールできる。サイドポケットも装備し、それでいて極力シンプル。

HAULER ¥27500

大型のフロントポケットだけで20L以上の容量を持つ荷運用バックパック。とにかくざっくり入れられるシンプル構造で、使わなければスッキリ畳める。ウエストハーネスも備えており安心。

24/7 PACK ¥17600

オフィスにも、トレイルにも連れ出せるデイパックスタイルのバックパック。背面パッドを外せば、折り畳んで出張や旅行などに携行でき、仕分けしやすいよう内部には小物ポケットも装備する。

BIG TURTLE(SPECTRA) ¥11880

できる限り縫製箇所を少なくし、マチがない薄い設計で、余計なものを排除したモデル。少量の荷物でも偏りが少なくバランスよく背負える。超高分子量ポリエチレン繊維のスペクトラを採用。

BUMMER ¥18700

90年代に生まれたULバックパックを再現。荷重を分散してくれる幅広ショルダー、紫外線耐性の強いメッシュのフロントポケットと、極めてシンプルなつくり。トレイルからタウンまで活躍する。

CT TARP ¥24200

小さすぎず大きすぎない、200×280cmの絶妙なサイズ感。ハンモック併用にも相性抜群で、ソロハイカーに必要最小限の機能を徹底追及した。ループも12ヶ所に配置し設営スタイルも幅広い。

シンプルで奥深い、トラッドなULスタイル。

足せばデザイン性は増すが、果たしてそれでいいのか……。トレイルバムの製品は見た目の個性より中身の個性。カルチャーを重んずる山好きなら見抜ける、トラディショナルなULアイテムたちが今シーズンも目白押し!

TOASTY DOWN VEST ¥36300

シャツの上に着たり、シェルの下に着たり、枕や布団にしたりと、何かと使えるダウンベスト。ナンガとのコラボで機能性は言うまでもない。肩まわりと裾まわりのパイピングが熱を逃がさない。

NOT BAD DOWN HOODIE ¥50600

“悪くないって良いことってことだろ”という気持ちをモデル名にした、ナンガの高品質ダウンを使
用したコラボモデル。90年代のレトロアウトドア的2トーンのバイカラー配色がまぶしい。

WALKER SHELL JACKET ¥39600

Pertex Shield Proの3レイヤーを採用し、耐久性、通気性、着心地に優れ、雨や風など、長旅での様々なコンディションに対応。軽さにこだわりながらもフード、袖、裾には調節機能も装備。

WALKER SHELL PANTS ¥23100

ウォーカーシェルジャケットと同素材を使用した、セットアップで着用できる機能性抜群のレインパンツ。オーバーパンツとして、ロングパンツの上からでも捌けるゆとりのあるシルエットに。

PACKWOOD HOODIE ¥16500

CAのサーフスポットの名が冠されたフーディが某アウトドアブランドであったけど、こちらはモデル名から察するにその山版!? ポーラテックのフリースを使用した非常に軽くて暖かい逸品。

PACKWOOD PULLOVER ¥17600

バタフライオーバーラッピングカラーと呼ばれる襟元が特徴的なフリース。4.7オンスのポーラテックマイクロフリースは軽量で断熱性も◎。小分け対策でジッパー付きの小さなポケットも。

GNU S CAPE ¥18700

40Lサイズのバックパックなら上からそのまま被れる、普段のハイキングでも頼もしい大きめのレインケープ。最小限な機能を備えたシェルターとしても活用可能。目元を防ぐツバ付きフードも。

THRU-HIKER ZIP OFF NOT PANTS ¥19800

春夏定番として人気を博しているショーパンにもロンパンにもなるジップオフパンツが、秋冬モデ
ルとして“オフれなく”なって登場! ダークグリーンとネイビーを合わせた計3色展開。

P.I.WRIST BAND ¥3300

関節部を温めていたら体温低下が守られるのは知っていたけど、この発想はなかった。足首や首まわいりではなく、手首につける中綿入りリストバンド。リップストップで破れにくく、30gと軽量。

P.I.POUCH LARGE ¥4730、MEDIUM ¥4400 P.I.STUFF SACK ¥4730

トレイルバムたちが好むガジェットを入れるのにぴったりな、プリマロフトを緩衝材代わりに使ったシンプルで軽いポーチ&スタッフサック。保温や保冷にも良し。

HIKER SACOCHE TURTLE ¥3960 P.I.SACOCHE ¥4730

ハイカーがPCTで使用した自作サコッシュをベースにした、シンプルかつ多用途で、実用性重視のハイキング向けサコッシュ。この秋冬はプリマロフト入りモデルが新たに仲間入り。


(問)ソーズカンパニー tel:03-5724-5713 trailbum.jp

Photo/Fumihiko Ikemoto Report & Text/Naoto Matsumura

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Akihiro_Takeji
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