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キャンプ行かない。
okadada そして、早くも“灯りは遠く”(TVアニメ『ふたりソロキャンプ』OPテーマ)という新曲を出すんですよね。
澤部 そうなんです。アニメのために書いたんですけど、難しかった。
okadada キャンプって行きます? 行かないでしょ、どう考えても(笑)。
澤部 行かない(笑)。でも高校の時の美術部で2、3回ぐらい、キャンプを恒例にしてた時期があって、奥多摩のほうのキャンプ場に行ったことがあったから、その時の記憶をたぐって書きました。最初に行った年は、間違えて10畳ぐらいの小屋を取っちゃって、みんなで雑魚寝。来年は絶対あっちのロッジにしようって、次の年はロッジに泊まったら、全然外に出なくなっちゃった(笑)。でもその感じも楽しくて、あれは良かったなって思います。東京に住んでて、自然に対してあんまり積極的に関わらない暮らしをしてると、シンプルに夜がこんなに暗いってだけで盛り上がるんですよね。その感じと、遠くに青梅線の明かりが見えるとか、そういう景色が強烈に残ってて、実際それは“月光密造の夜”という曲の中にも落とし込んだことがあるんですけど、あの頃の感じをちょっと思い出しながら、漫画と照らし合わせながら、少しずつ膨らませていった感じですね。okadadaくんは、キャンプとかするんですか?
okadada 最近ではキャンプ好きな友達に誘われて行きました。僕は積極的に外に出ないタイプだけど、普通に楽しいですね。基本、キャンプ好きです。実家が山のほうなんで、山にいるの落ち着くんですよ。澤部さんは都会生まれですよね。
澤部 生まれは東京の板橋区の高島平。ベッドタウンという感じの街です。
okadada 山はどうですか?
澤部 あんまり得意じゃないかも。単純に虫が怖いとか、そんな程度ですけど。
okadada どこが一番好きなんですか?
澤部 家ですね。
okadada アウトドアのサイトで「家が一番好き」発言(笑)。今年の〈GO OUT JAMBOREE 2025〉でのライヴはいかがでしたか?
澤部 僕はすごい楽しかった。やっぱり普段のライヴの客層って演者に似るじゃないですか。スカートの客層はインドアタイプの方が多い気がするので、そうじゃない開けた場所で、こんな悲しい歌を歌ってていいのか?という気持ちにはなりました(笑)。


okadada 開けたところで歌うのは好きですか。
澤部 好きですね。自分でも驚いてるんですけど、室内と外だったら外で歌いたいなって思いました。(室内の)反響が苦手なのかもしれない。DJはどうですか?
okadada 考え方が全然変わってきますね。それこそ外で音が反響しないからこそかけられる曲もあるし、時間帯とか、天気とかでも選曲を変えるし。〈GO OUT JAMBOREE 2025〉は室内でやったんですけど、僕の時間は後の大沢伸一さんとセットで考えてて、僕の時間は無理に盛り上がらなくていいと思ったんですよ。僕の前のライヴがめちゃくちゃ盛り上がって、一回人がいなくなった状態からなので、躍起になって盛り上げようとしても、そもそもそういう空気になってないから。まずはゆっくり場所に入っていきやすいような曲を徐々にかけて、大沢さんを見に来た人がだんだん入ってきたら、ちょっとずつ上げる。そうやっていくと、僕が思う「空気」ができたっていう感覚があるんですよ。みんながここにいてもいいと思える感じのムードというかそのスイッチが、なんとなくあって。あの時は、大沢さんに向けてそれを押す係として居た方がいいなと思ってました。
澤部 面白いなー。
okadada 最後10分ぐらいでなんとなくその空気ができて、それから大沢さんに向けてそういう空気踏まえて盛り上がったって思えたから、「よしよし頑張ったな、俺」みたいな(笑)。お客さんも踊って、お酒も飲んでいたし。

澤部 物事を考える軸のひとつにお酒があるんですね。(笑)。僕は全然飲めないから、ちょっとうらやましくもある。
okadada そういうお酒飲める飲めないって、人のあり方に関わることかもしれないですね。例えば澤部君の体がめちゃめちゃ大きいとか、体型とかによって聴こえる音は思ってた以上に変わると思っていて、たとえばクラブにいて、椅子に座ると低音はでかく聴こえるじゃないですか。ってことはサウンドチェックをするときも、「俺が身長30センチ低かったらもっとでかく聴こえるよな」と考えると、〈理想の音〉ってすごく相対的なものという気がする。例えば「車椅子の人が来たらどう聴こえるだろう」とか考えると、どうやったら「踊る」という条件が成り立つのかとかまで行くわけじゃないですかだから踊るっていうのは「音楽に反応して体の一部が動く」というところまで含めていいんじゃないか?とか、だったら、まばたきするだけでも踊ったことになるんじゃないか?とか、そういうことをどんどん考えるようになっちゃって。
澤部 すごいなぁ。

境界線を曖昧にし続ける。
okadada 僕は体が丈夫で、動くのも好きやったし、そういう体の仕組みが僕の音楽を引き寄せたんじゃないのか?みたいに思うこともあります。
澤部 そうかもね。ダンスミュージックに引き寄せられた。
okadada 思ってた以上にいろんな要素で、僕ら自身のものの価値というのは決まってるんだなと思う。たとえば「ポップス」というものがあって、定義としては「売れてるもの」がポップじゃないですか。例えば近年のアメリカならそれはトラップ・ミュージックが一つの語義的に言えばポップスだった。でも、60年代から80年代くらいに成立した、ある種の音楽を「これが本当のポップスなんです」と言い張るというか、ハードコアなポップスの理念というものがあって、現代ではもはやポピュラリティを持ってないのに、「これがポップスだ」と言い張るじゃないですか(笑)。それは語義矛盾でしかないんだけど、その矛盾がすごい好きで。
澤部 ビーチ・ボーイズとか、その最たる例だし。ヴァン・ダイク・パークスとかも。
okadada スカートもそうで、ピチカート・ファイヴとか、ムーンライダースとか、そういうハードコア・ポップスの流れを継いでるよなと思ってる。その最新型が『スペシャル』だと思います。
澤部 そうなったらいいなって、自分でも思います。
okadada ライヴをやって、「こいつヤバイな、昔の俺みたいなポップマニアが来たぞ」みたいなお客さんはいないですか?
澤部 まだいないかな。でも変な子は時々いて、そういうところで仲良くなる人もいる。それこそ台風クラブが出てきた時は「おっ」と思ったし大好きだけど、考え方はきっとどこか違うだろうしね。スカートのフォロワーみたいな感じで出てくる人はまだいない気がする。真似しづらいと思うんですよ、ハードコア・ポップスだから(笑)。相対性理論みたいに、新しい型を作る発明家ではないから。過去から受け継がれた器を、ただ持ってる人間だから。
okadada 確かに、スカートっぽい曲作ろうと思ったら大変かも。自分自身も自分っぽいDJって自分で分からないんですよね。自分がどういう型を持ってるのか、全然わかんないんで。ずっとズラし続けてるような、境界線を曖昧にし続けてるような気がするから。
澤部 okadadaくんの最近のプレイは聴けてないけど、「境界線を曖昧にする」っていうのは非常によくわかる。
okadada 昔からドリームポップみたいなものの、スプリングリヴァーブの音がとにかく好きで。ダブでキックにスプリングをかけると、キックの輪郭が形になった瞬間に曖昧になって捉えられなくなる、水風船が割れるパシャン!みたいな音になるのが気持ちよくて。家でパシャパシャやってるだけで、これだけで音楽いいんじゃないかなって思って(笑)。僕が漫画を好きなのは、線があるからやなって思うんですけど、線って現実にはないじゃないですか。曖昧なものを線にして、さらにそれを曖昧な表現に戻してみたいなのがものすごく楽しい。そういう面で、型がないんだなって自分で思う。
澤部 私もそうです。
okadada ところで、スカートは、いまツアー中なんですね。
澤部 はい。6月28日に東京・キネマ倶楽部でライヴをやります。今はバンドとして、それこそ曖昧な形になってて、CDだと佐藤優介くんが弾いてくれてるけど、ライヴは別の人が弾いてくれてます。かなりいい具合ですよ。京都、名古屋とやってきましたけど、バンドとしてもいいし、お客さんも楽しそうだし。「スカート優勝!」(CDデビュー15周年のキャッチコピー)とか言ってたのが、わかりやすかったのかなって。
okadada お客さんもみんな「15周年おめでとう」っていう方向だから、一体感も出やすいだろうし。
澤部 京都は特にすごかった。おかげでめっちゃ盛り上がりました。
okadada お祝い事は盛り上がりますからね。僕は何の周年でもなく、毎週DJがあるので、SNSなどをチェックしてもらえれば。今日はありがとうございました。久しぶりに話せて嬉しかった。
澤部 「GO OUT」なのに、終始インドアな話でしたね(笑)。

『スカート ライヴツアー2025“スペシャル”』
2025年6月28日(土)東京・キネマ倶楽部
OPEN 17:00 START 18:00TICKET
一般 4,500円 +1D/学割 3,000円 +1D
eplus.jp/skirt2025/
スカート「灯りは遠く」
2025年7月9日(水)配信リリース
配信リンク:lnk.to/akarihatooku
スカート メジャー5thアルバム『スペシャル』
購入リンク:lnk.to/0514_CD
配信リンク:lnk.to/AL_special
インタヴュー・文/宮本英夫
撮影/北原千恵美
ライヴ写真/Hikaru Funyu、Uchutaishi-star
