【ブランドピックアップ〜elephant TRIBAL fabrics〜】“あったけど、なかった服”を探求し続けるデザイナーズブランド。

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昨今ドラマなどで見かける機会が増えてきて、なんだか気になっていたブランドが今回の取材対象。デザイナー・君塚涼太さんが、ほぼ1人で“あったけど、なかった服”を創り運営する「エレファントトライバルファブリックス」に迫った。

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東京・杉並発のファッションブランド、エレファントトライバルファブリックス。

服以外には野球と家をDIGするのが趣味の君塚さん。6LDKの一風変わった戸建てを見つけ、住居兼事務所作業場としている。

ファッション業界人らしくない東京・杉並区の住宅街にある戸建てで、デザインもリース対応も1人でこなす。まるでアウトドアのガレージブランドのような体制で服作りに励んでいるファッションブランドが今回の取材対象だ。

名前はエレファントトライバルファブリックス。「名称が長いのは、ユーザーに略して読んでほしかったからで深い意味はないです」とデザイナーの君塚涼太(きみづかりょうた)さん。

「ロゴで示すブランドではなく、パッと見でエレファブのものとわかる服を作っていきたい」という言葉にすべてが込められていた。エレファブではロゴの代わりに、それぞれの服にTYPE01~07までミリタリーウエアのようなレイヤーする順番的なタグがふられているからぜひ実物をみてほしい。

そんな〝エレファブ〞を知る人が本誌読者にどれだけいるかはわからないけど、設立は2012年とキャリアは長い。君塚さんは現在34歳で、23歳からこのブランドを確立してきているから立派な早咲きだ。

ブランドは創業からミリタリーやスポーツ、クラシックウエアなどのミクスチャーを探求し続けていて、他の異素材MIXをウリにしているものとは一線を画していることも伝えておきたい。

例えば2022AWに出たMA‒1はボディ部分にカウチンが使われていて、着たときにまるでMA‒1の上にカウチンベストを着ているようなデザインに見え、しかも袖が取り外せてベストにもなる仕組み。

これだけなら他のブランドに無くはないだろうが、切り離しのジップを、肩の縫い目の部分ではなく、新たにボディの絶妙な位置にわざわざ設置しているから、とりあえず2WAYにした的なやっつけ感がまったくない。

細かい部分まで気を配り、異素材MIXの可能性を細部まで研究して作る。こうして生まれる「あったけど、なかった服」こそ、エレファブの真骨頂でありコンセプトなのである。

レザージャケットを裏返しにしたアイテムや、カーディガンとテーラードジャケットを組み合わせた珍品など、とにかく面白い発想のアイテムが揃うこのブランドが、いったいどのように生まれたのかを聞くと、その独学ぶりに驚かされた。

「高校生のときは雑誌のチューンをよく読んでいました。お金もなかったから掲載されているものが買えず、祖父の裏地がボルドーのスーツを借りて、裏返しにして着ていたんです(笑)。高校を卒業して美容師になると、ピストバイクで事故してしまい立ち仕事が難しくなり……。その後、転職して服飾会社で3年インターンをして、エレファブをはじめました」。

スケッチの数が凄まじく、どれも丁寧に細かく描かれている。

初めて作ったのはスウェットで、自宅ミシンで自転車に乗る際にお腹が冷えないよう腹部にナイロン素材を縫い付けたものらしく、そのD.I.Y.精神を聞くと、祖父の服を着ていた学生時代から君塚さんの得意技が磨かれていたのがよく分かる。

「服ができる可能性を一気に広げたいと思っているんです。服に限らず、ルック作りも同じで、イケメンの外人が普通に着用しているルックとかではなく、悪ふざけじゃないくらいにふざけています」。

選択肢が多いように見えて、SNSなどのできあがったフォーマットに無意識にクリエイティブが均一化された昨今だからこそ、突拍子もないアプローチのエレファブが注目を集めるのかもしれない。

「こう見えてパンツのポケットを一般より3cmほど深くしていたり、シャツは首まわりを他より緩くしていたりと、地味な使い勝手のよさはめちゃくちゃ大事にしています。〝それどこの服?〞って聞かれたいけど、ただ奇をてらって作られた服にはせず、ちゃんと使えるものでありたい。いろいろ着てきたうえで、普通の服を着ている人にこそ着てもらえると嬉しいです」。

愛犬のひじき。CEOなのだそう(笑)。

僕たちの好きなカルチャーの服を自由にデザインし、しかも合理性を併せ持つ唯一無二のデザイナーズブランド。若き才能が作るこの服を、ひと通り経てきたであろう本誌の読者に知ってもらいたい。

待ち遠しくなる、面白ルック。

服作りのアイデアもスゴいけど、ルック作りのアイデアにも目を丸くしてしまいそうになるエレフ ァブ。

2018AWのあえてシンプルにしたルック。
2019SS。室内空間を外に作っていて、地面に並ぶ本は300冊ほどを白に塗ったのだそう!
2020AWのシーズンテーマはフランス画家のイブ・クラインだった。
ファティーグシャツと、スーツの裏返し、トレーニングウエアと、MA-1をドッキング。デリバリーから1週間で全店舗から消えたとか。
2020SSルックのイメージショット。こういった遊びゴコロがたまらない。
2022AW。ギャップをテーマにしたシーズンルック。写真のジャ ケットは、本田翼さんがSNSにアップして話題になったそう(そのときにはもう在庫がなかったらしいが……笑)。

芸の神髄を感じるブランドアーカイブ。

奇想天外に見えるエレファブだが、アーカイブを見させてもらうと、じつはどこよりもブレずにブランドを歩ませていることがよく分かった。最初期に作ったものなど、面白と実用を兼ね備えたアイテムに着目。

メルトン生地=Pコートかダッフル、という概念を覆されるファティーグジャケット。メルトンで作られてなさそうなアイテムを考えたときにこれが浮かんだようで、元は硬い印象のものを柔らかい印象に変えている秀逸作だ。

ブランドをはじめるときに自作したという、普通に今欲しいと思うお宝アーカイブ。お腹まわりが寒くならないようにスウェットの上にナイロン生地をたたきつけていて、ポケットも多数配備。袖で切り替えたシャツ地が面白い。

祖父のジャケットを借り裏返しにしていた学生時代の体験から着想を得て作られた、インサイドアウト仕様のレザーカーコート。重くなりすぎないように、要所要所でサテンを使い肩の落ち感をよくしていたりとこだわり満載。

コーチジャケットとM-1、ミリタリーのトレーニングウエアと、3種類のナイロンブルゾンをかけ合わせた個性抜群の1枚。色味で調和させたデザイン性と、衣服の温度を一定に保つという機能素材の裏地で実用性も確保している。

気になる新作アイテムを独自にセレクト。

“船から見た景色”をシーズンテーマにした2023SSの最新作をご紹介。パッカリングやギャザー、ドッキングさせる生地の縮率の違いなどで、波や、揺れ動く感じを表現!?今季もエレファブらしさが全開だ。

M65 Knit Blouson ¥86900

M65フィールドコートをショート丈&ボックスシルエットにリサイズし、MA-1をドッキングしたアイテム。ワッシャー加工、天日干し加工、撥水加工などを随所にあしらっている。

Panel Gradation BDU ¥52800

撥水加工を施した5色の生地を使用したBDUジャケット。インナーをパンツインした際に、ミリタリーアイテム特有の野暮ったさや重さがでないよう前下がり気味のショート丈に。

MA-1 Thermal LT ¥23100

MA-1のユーティリティポケをドッキングしたサ ーマル。ポリのブライト糸を縦に走らせることで 洗濯縮みをなくし、光沢感と上品さをUP。リブ もバインダーネック仕様でヨレ知らず。

Puckering BD Mini Check Shirt ¥36300

オーガニックコットン生地を使用した、袖のパッ カリングが特徴的な大身頃のボタンダウンシャツ。 製品後にワンウォッシュタンブラー加工を施した 古着のような風合いが小粋な印象。

Hybrid Cardigan JKT & Cargo Slacks (上)¥70000 (下)¥52800

ニットカーディガンの上にテーラードジャケットをドッキングしたアイテムと、カーゴパンツとスラックスをドッキングしたアイテム。単品使用でも、セットアップでも◎。

RoMANCE Fat T-SH ¥15400

圧着プリントを施したグラフィックTシャツ。左袖部分にブランドロゴを刺しゅうし、ボディは強撚糸を使用したシャリ感のあるコットン生地を使用。ゆとりあるボックスシルエット。

Mini Check JET CAP ¥13200

オーガニックコットンを使用したジェットキャップは、ボディのチェック生地と、ツバ部分のスエード生地によるコントラストが楽しめるエレファブらしい小物。アジャスター付き。

Suede Knitting Shoes ¥52800

“船から見た景色”のシーズンテーマに基づき、重なりあう波を編みこみで表現したシューズ。ビブラムシャークソールと高反発インソールを採用し、実用も見た目も軽やかな1足に。

本記事は、GO OUT vol.161からの転載記事です。

Photo/Shouta Kikuchi
Report&Text/Naoto Matsumura


(問)エレファントトライバルファブリックス www.elephab.com Instagram:@elephanttribalfabric

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GO OUT編集部
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