「地方移住」や「二拠点生活」を選びやすくなった昨今。とはいえ実際、いまある生活を抜本的に変えるって難しい。仕事もあれば、家庭も、友人関係だってある。
でも、職場や働き方はそのままで、暮らしだけちょっと離れた場所に移すパターンならどうだろう? いうなれば、“都心勤務、郊外暮らし”。移住や二拠点より、ハードルが低くてリアルな選択だ。

今回話を聞くのは、アパレル輸入代理店のアウターリミッツで働く藤井大樹さん。家賃などを下げ、釣りや音楽などの趣味に費やす時間や資金を捻出しようと、都心から1時間程度離れた町田市に引っ越した。そこに至った経緯、“都心勤務、郊外暮らし”のイイとこ・悪いとこ、ライフスタイルの変化など、ぶっちゃけバナシを教えてもらおう!
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遠いから時間が“掛かる”、ではなく、“できる”。

「最近、駅から家まで歩いて帰るのが楽しくて」と、ニカっと笑う藤井さん、そして顔を見合わせる妻の茜さん。最寄りの「南町田グランベリーパーク駅」から家までは、歩いて20分くらい。物件探しの条件としては、ヒトによっては即“無し”となるちょっとした距離だ。
それを、藤井さんはいたってポジティブに捉え、というか心底からといったカンジで、「20分あれば音楽を4曲聴けますよ。ふたりの通勤のタイミングが被れば、歩きながらゆっくり話す時間になる」と話す。
駅が近いとできないことが、遠いから“できる”。同じように、都心と郊外を隔てる長い通勤時間にさえ、藤井さんはむしろ価値を見出している。

「以前は、住んでいた用賀から勤務地の中目黒まで自転車通勤でした。自転車に乗るのは気持ちいいのですが、その時間って、なにもできないんですよね。電車ならまとまった時間が取れて、調べ物をしたり、本を読んだりできる。通勤時間も、意外と“時間”なんですよね」

南町田グランベリーパーク駅は、田園都市線の始発駅から2つ隣であるため、出勤時は必ず座れるという。中目黒駅までの1時間弱、都心暮らしだと捻出することが難しいジブンだけの時間が、毎日自動的に“できる”というワケだ。
そもそも、郊外暮らしを選んだ理由は?
その「なにをしてもいい1時間弱」を実際なにに使っているかというと、最近はもっぱら、動画やウェブ記事の閲覧。映像や写真の勉強をしているらしい。

「釣り、音楽活動、山登り、カメラ、洋服……と、趣味がとにかく多くて。ホント困った性格です(笑)」


仕事がきっかけでハマったフライフィッシング、高校時代から現在まで続けているという音楽活動、両親や妻と数ヶ月に一度出かける登山など、興味関心がさまざまな方面に向く藤井さんだが、郊外暮らしを選んだ理由も、じつはそこにある。
「趣味が多いとそれだけ出費も多い。家賃を下げれば、趣味や暮らしが充実させられるんじゃないかって」



都心からちょっと離れた場所に暮らすことで、ジブンがやりたいことに、存分にお金をかけられる。遊びに全力で潔い! 実際のところ現在の賃貸物件は、48平米の1LDKで、管理費込みで9万円チョイだそうだ。
帰りは不便だけど……、
ちなみにデメリットは?と聞くと、「展示会の時期や繁忙期は、どうしても帰りが遅くなってしまって、混んでいる電車に乗るのがしんどいですね。『中目黒に家があったら……』と何度思ったかわかりません(笑)」と、“郊外暮らしあるある”だが、さすがに帰路の電車まで快適とはいかないようだ。

会社の規定で週1回のテレワークが許されてはいるが、現状は、基本出社だという。「チームで動く仕事が多かったりするので、その方がやりやすいんですよね」。仕事環境が整っているように見えるリビングのデスクは、仕事用ではなく、趣味の音楽や映像関係に使っているという。

“帰りの不便”のハナシでいうと、とはいえプライベートの面では、むしろメリットもあるという。
「言い方は悪いですが、ここに暮らしはじめて、人間関係を整理できた気がします。多趣味なので、これで友人関係まで広いと、時間もお金も本当に足りなくなってしまう。たとえば飲み会も、都心に住んでいたら平気で深夜までいけちゃいますよね。家が遠くて終電が早ければ、強制的に帰ることになる」

気軽にだれとでも会えない。タクシーを使って帰ることができない。そうした制限やストッパーがかかることで、罪悪感なくやり過ごせる人付き合いもある。わかる気がする。
アウトドアがとにかく捗る!
都心を離れた理由について、「ひとの多さに疲れた、っていうのもありますね」と藤井さんは続ける。「用賀に住んでいた頃は、まわりにいくら建物や空があっても、“ひと”を見ていることが多かったように感じます。いまは、空や山が目に入るようになった。星も本当に綺麗なんですよ」。

釣りや山登りといったアウトドアにもますます精が出ているようで、「いちばん行きやすいのは大山。丹沢が近いのもよくて、秦野まで行ってそこから塔ノ岳に行くコースも」と、夏は渓流釣りを、渓流が閉まる冬は山登りを、というバランスでぞんぶんに楽しんでいるらしい。
「夏だ!とか、秋だ!とか。植物の匂いを感じたりとか。山に行くととくに感じますが、ふだんから、自然に触れる時間が増えました。『ニンゲンだな』って感じますね」

そして、最寄り駅は南町田グランベリーパーク駅だ。その名のとおりアウトレットパークの「南町田グランベリーパーク」と直結で、施設内にはザ・ノース・フェイス、コロンビア、スノーピーク、キーンなどのアウトドアブランドが勢揃いする。モンベルにいたっては関東最大級の店舗で、「最高です」と藤井さんも太鼓判を押す。

「自宅の徒歩圏内に上州屋アウトドアワールドもあって、しかも24時間営業。釣りに行く前日はかならず立ち寄りますし、万が一『コレ用意するの忘れてた!』ってときにも、とにかく便利なんです」

時間も距離も、ポジティブに有効活用する。

趣味や暮らしを充実させるため、あえて都心から距離を取って暮らすことを決めた藤井さん夫妻。増えた通勤時間も、駅から歩く距離も、いたってポジティブに捉えて有効活用する。そればかりかますます楽しみを広げていることには、本当に頭が下がる。

いつか、茜さんの地元である鹿児島で暮らす選択肢も念頭にあるというが、「でもいまは、都会は都会でやっぱり楽しい。暮らしも考え方も、これからぜったい変わっていくはずだから、流れに身を任せたいと思います」と、のびのびと構えているようだ。
Photo/Shintaro Yoshimatsu
