イベントで人をつないできた2人が作る、八王子の小さな山道具店「八王子登山用品店」。

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八王子登山用品店の加藤さんと堀さん

東京都八王子市に店を構える「八王子登山用品店」は、その名の通り、登山道具を扱うショップだ。

とはいえ、店内に並ぶのは定番ブランドのギアばかりではない。軽量なUL系ギアにはじまり、個人メーカーのプロダクト、ちょっとクセのある道具など、「なぜこれを置いているのか」を聞きたくなるものが多い。

八王子登山用品店の店内
八王子駅から歩いて立ち寄れる「八王子登山用品店」。小さな店内に、軽くて面白い山道具が詰まっている。

この店を営むのは、ハイカーの間で話題を集めたイベント「HIKER’S FLEA MARKET(ハイカーズフリーマーケット)」を手がけてきた加藤さんと堀さん。多くのハイカーを集め、ブランドや作り手とのつながりも広げてきたイベントの熱気が、今度は八王子の小さな売り場へと持ち込まれている。

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とあるイベントから始まった、八王子の小さな登山用品店。

八王子登山用品店の加藤さんと堀さん
店を営む加藤さん(右)と堀(左)さん。イベントで培った人とのつながりが、店づくりのベースになっている。

八王子登山用品店の始まりは、「ハイカーズフリーマーケット」へとつながる、とあるイベントがきっかけだった。

加藤さんと堀さんが最初に始めたのは、山好きが集まって飲みながら話す交流イベント。登山の話をしたり、ギアの話で盛り上がったり、そこで知り合った人同士がまた山へ行ったり。そんな、人と人がつながる場をつくることが、2人にとっての出発点だった。

その流れの中で生まれたのが、使わなくなった山道具を次の人へ渡すフリーマーケット。愛着のある道具が、別の誰かの山行でまた使われる。そこには、ただ売り買いするだけではない楽しさがあったという。

八王子登山用品店の店内
そうした縁があったからこそ、オープン直後からガレージブランドや個人のプロダクトまで、幅広く店頭に並べることができたのだろう。

やがて、イベントには個人だけでなくブランドや作り手も集まるようになっていく。人とのつながりが増え、扱える道具も増えていくなかで、「これなら自分たちで店もできるかもしれない」という話が自然と出てきたそうだ。

だから八王子登山用品店は、最初から“店をやるために作った店”というより、人が集まる場を続けてきた先に生まれた店と言ったほうが近い。イベントで育まれた空気感が、八王子の小さな店舗にもそのまま流れている。

高尾山口ではなく、八王子駅近くにある理由。

八王子駅北口ユーロード西放射線通り
店舗は、八王子駅北口ユーロード西放射線通りにある。広い通りは歩きやすく、飲食店も豊富。

登山用品店と聞くと、高尾山口のような“山の入口”にある店を想像するかもしれない。実際、出店場所として高尾方面も候補にはあったという。それでも2人が選んだのは、八王子駅周辺だった。

中央道や圏央道にアクセスしやすく、都内や西東京方面から車で乗り合って山へ行くとき、八王子集合になることは意外と多い。2人も、山へ行くときに「八王子集合」はよくあったそうだ。山へ向かう人たちの集合地点として、八王子にはもともと使いやすさがあった。

それなのに、八王子駅周辺には登山用品店がほとんどなかった。だから「八王子にこういう店がなかったからうれしい」と声をかけてくれる地元の人も多いという。

山の直前にある店ではなく、山へ向かう人たちが集まる街にある店。八王子という土地にじわじわ根付いていく予感がする。

2人のスタイルの違いが、セレクトの幅になっている。

八王子登山用品店の堀さん

加藤さんは、オートキャンプの設営や撤収の大変さから荷物を軽くする方向へ向かい、バックパックキャンプを経て登山に入っていった。

堀さんは、コロナ禍に友人に誘われて高尾山から陣馬山へ歩いたことがきっかけ。しんどかったけれど、自然の中を歩いて景色を見ることに強く感動したという。

八王子登山用品店の取り扱いアイテム

登山歴の深さも、ハマったきっかけも異なる2人は、当然道具選びにも違いが出てくる。軽さを突き詰めるULスタイルと、「自分が好きなもの」「ちょっとロマンのあるもの」「使いやすさ」のバランスをとっていくスタイル。

「デザインの良いもの」という共通項ももちろんあるが、その違いが店のラインナップにも反映されているのだろう。スペックやデザインに振り切ったものもあれば、バランスの良いアイテムも選べる。八王子登山用品店には、ひとつの正解に絞らないおもしろさがある。

値段も重さも見える。納得して買える売り場づくり。

八王子登山用品店の店内

店内は、もともとギャラリーだった空間を活かした木目調の落ち着いた雰囲気。大きな店ではないぶん、棚の配置やレジ台の向きなど、限られたスペースをどう使うかはかなり考えたそうだ。

八王子登山用品店のプライスカード
価格だけでなく重量も記したプライスカード。軽量ギアを選ぶときの判断材料になる。

印象的だったのは、商品ひとつひとつに付けられたプライスカード。価格だけでなく、重量が明記されているのだ。

登山道具、とくに軽量ギアは、数グラムの差が選ぶ理由になることもある。けれど、店頭では重さや価格がすぐにわからないこともある。八王子登山用品店では、その情報を最初からクリアにするよう心がけているそうだ。

八王子登山用品店の取り扱いアイテム
トレイルフードの取り扱いも豊富。重量表記も抜かりない。

さらには、ヘッドライトにはルーメン数、寝袋は快適・限界温度や仕様など、より細かく説明を記載したポップもある。

これは単に親切というだけではなく、「ちゃんと理解して、納得して買ってほしい」という2人の姿勢でもある。売れることだけを優先するのではなく、特徴や使いどころをわかったうえで、愛着を持って使ってほしい。少し特殊な道具も扱う店だからこそ、その丁寧さが大事になるのだろう。

店頭で目を引いたのは、軽さの先に使う楽しさがある道具。

八王子登山用品店には、UL系ギアや個人メーカーのプロダクトも多い。ただ、単に「軽いから置いている」というわけではない。軽さの先に、実際に使う楽しさや、ちょっとした工夫があるものを選んでいる印象だ。

今回は、そんな「ちょっとした工夫」の多いアイテムをピックアップしてもらった。

枕まで兼ねる、EVERNEWの短いエアマット。

EVERNEWの「CORE REST zzz R5D92W59」

【EVERNEW】CORE REST zzz R5D92W59(質量:274g) ¥9900

まず紹介してくれたのが、EVERNEWの短いエアマット「CORE REST zzz R5D92W59」。一般的なフルサイズのマットとは違い、必要な部分だけをカバーするショートタイプだ。

R値は5で、寒い時期にも使いやすい断熱性を備えながら、肩が落ちにくい幅広設計。ショートマットにありがちな割り切り感だけでなく、実用面もしっかり考えられている。

ポンプサックとマットにはループがあり、こちらを連結すれば固定できる(連結させるものは付属しない)。

さらに目を引くのが、付属のポンプサックの使い方。空気を入れるための道具として使えるだけでなく、ドライバッグとしても使える。そして本体と連結すれば、枕として使うこともできるという。

軽量化しながら、寝心地や使い勝手も諦めない。そんなバランスが、この店のセレクトらしい。

1本4.4g。マグネシウム製の超軽量ペグ。

Pegooの超軽量マグネシウムペグ

【Pegoo】超軽量マグネシウムペグ 150mm(約4.4g) ¥1190 / 180mm(約8.9g) ¥1290

次に見せてもらったのが、「Pegoo」のマグネシウム製の超軽量ペグ。15cmモデルは1本わずか4.4gという驚きの軽さだ。

マグネシウムは、カメラのボディや車のホイールなどにも使われる、軽さと強度を両立しやすい素材。価格は安くないが、「軽いだけじゃないペグ」として納得できる工夫が詰まっている。

Pegooの超軽量マグネシウムペグ
ペグの先端がH型の溝幅にピッタリなので、土をしっかりこそげ落とすことができる。

軽いだけでなく、形状もよく考えられている。断面はH型で、土をしっかり噛みやすい構造。紐を引っかける部分や、ペグ同士を重ねたときに外れにくい溝など、細かい使い勝手にも工夫がある。

仕入れのきっかけは、友人との情報交換。実際に自分で買って使ってみて、「これは使える」と感じてすぐに仕入れを決めたそうだ。そういう店主自身の実感があるのも、この店の安心できるところだ。

クッカーとアルスト込みで50g。手のひらサイズの調理セット。

JITO GEARのカップクッカー470

【JITO GEAR】カップクッカー470 50g(ケース込み140g) ¥7900

一見しただけでは何かわからないほどコンパクトな道具もあった。JITO GEARの「カップクッカー470」だ。中身は、クッカーとアルコールストーブを組み合わせた調理セット。すべて合わせて約50gという、かなり攻めた軽量アイテムになっている。

JITO GEARのカップクッカー470
クッカーとアルコールストーブを含めて約50g。小さな山ごはんセットとしてかなり魅力的。

使い方はシンプルで、スタンドにアルコールストーブをセットし、その上にクッカーを載せるだけ。クッカーには目盛りも付いていて、450mlほどのお湯を沸かせる。カップラーメンやフリーズドライの食事なら十分に対応できそうだ。

JITO GEARのカップクッカー470

個人作家によるハンドメイドで、入荷してもすぐに売り切れてしまうという。軽いだけではなく、これで山のごはんをどう楽しむかまで想像できる道具だった。

女性目線で作られた「kawarime(かわり芽)」のアイテム。

kawarime(かわり芽)の帽子
「かわり芽」のアイテムは、色やサイズ感にも、ほかのギアとは違う柔らかさがある。

もうひとつ印象に残ったのが、女性目線のものづくりを掲げる、ランドネオリジナル登山ブランド「kawarime(かわり芽)」のアイテムだ。

登山道具やウエアは、どうしても男性目線のものが多くなりがち。もちろん、機能重視の無骨なアイテムが好きな女性もいるが、サイズ感や色、使い勝手の面で、もう少し違う選択肢がほしい人もいる。

kawarime(かわり芽)のアイテム

(左上から)【ランドネ×高山植物図鑑×KINTO】mountainflower vase 花図鑑のウォーターボトル ¥2750
【ハロ コモディティ×Keishi Tanaka×かわり芽】ルーツパスハット ¥6600
【かわり芽】 山のつぼみの3つのポーチ ¥2860
【かわり芽】リトルマウンテンパンツ ¥15400

「kawarime」のアイテムは、そうした視点から作られている。たとえば、3つのポーチが連なった「山のつぼみ」は、化粧品や下着、小物などを分けて入れやすいプロダクト。やわらかいカラーリングで、山道具としての機能だけでなく、持っていて気分が上がる雰囲気がある。

八王子登山用品店では、こうした女性目線のプロダクトもきちんと取り扱っている。軽さやスペックだけでは拾いきれない、山道具の楽しさを広げるセレクトだ。

フリーマーケットも、飲み会も、店も。人が集まる場を続けていく。

八王子登山用品店の加藤さん

八王子登山用品店の背景には、イベントの存在がある。

なかでも大きな反響を呼んでいるのがハイカーズフリーマーケット。2025年の第1回から多くの来場者が集まり、第2回ではさらに規模が拡大。もちろん運営面では課題も見え、来場者からの意見には、「なぜ屋外で開催しないのか」というものも多かった。

それでも、今後も大事にしたいのは「屋内開催」だと話す。屋外で開催したほうが費用面では抑えやすいが、天候に左右されずに開催できること、出展者の商品が雨や泥で傷まないことを考えると、屋内である意味は大きい。

ハイカーズフリーマーケットのポスター
2026年2月には、第2回のハイカーズフリーマーケットが開催された。2027年の開催も決定している。

来場者にとっても、出展者にとっても、安心して参加できる場にしたい。そのためにこれまでの課題も改善しながら、イベントとして育てていきたいそうだ。

そして、そのイベントで生まれたつながりは、店にも返ってくる。イベントを知って店に来る人がいれば、店でイベントを知る人もいる。さらに、店舗をきっかけに「八王子登山クラブ」のような山へ行くコミュニティも生まれているという。

イベント、店、山へ行く仲間。そのすべてがぐるぐるとつながっているのが、八王子登山用品店の面白さだ。

下山後にも立ち寄りたい、ビアパブ「BUBBLE」。

八王子のビアバプBUBBLE
クラフトビールと食事が楽しめるビアパブ「BUBBLE(バブル)」。

周辺のおすすめを聞くと、店から徒歩数分の場所にある「BUBBLE(バブル)」を教えてくれた。八王子駅近くでクラフトビールを醸造している店で、八王子登山用品店のオープン時のレセプションパーティーでも利用したという。

八王子のビアバプBUBBLE
大ぶりの自家製ソーセージは肉肉しく、満足感のある逸品。

今回は取材後にランチで訪問し、「バブルドッグ」をオーダー。ふわっとしつつサクッとしたパンは、近所の人気ブーランジェリー、サルドゥヴァンの特製ドッグパン。そして大ぶりの自家製ソーセージが挟まれた一品だ。

ソーセージは、ジューシーで肉の旨みがしっかり感じられる。爽やかな香りのソースとも相性がよく、見た目以上に食べ応えがあった。

八王子のビアバプBUBBLE
開放的なガラス窓とテラス席、ナチュラルで柔らかい雰囲気の店内。

登山用品をディグれて、クラフトビールやランチも楽しめる。山へ向かう前後の寄り道まで含めて、八王子という街の面白さが少し見えてくる。

山道具を買うだけじゃなく、山へ行くきっかけが生まれる店。

八王子登山用品店のオーナー二人

八王子登山用品店は、山道具を売るだけの店ではない。イベントやフリーマーケットで生まれた人、ブランド、作り手とのつながりが、店の空気にもそのまま滲んでいる。

ピークハントだけが山の楽しみではないし、道具も一気に揃えなくていい。山でコーヒーを飲む、気に入った道具をひとつずつ増やしていく。そんな始め方もあっていい。

首都圏の登山好きにとって、八王子は山へ向かう前のハブにもなる街。次の山行前にこの店を思い出せば、面白い道具だけでなく、また新しいつながりにも出会えるかもしれない。

◼︎八王子登山用品店
住所:東京都八王子市中町9−9 山田ビル 2F
Open:12:00〜20:00(定休日 火・水)
Online Shop
hachioji-tozan-yohinten.com
Instagram
@hachioji_tozan_yohinten

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Yuhei Tokimatsu
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