業界の常識を再定義した技術革新によって、アウトドアプロダクトの進化をリードしてきたカナダの名門ARC’TERYX(アークテリクス)。
そんなアークテリクスの哲学や世界観、そして90年代から現在までの軌跡を体感できるブランド初のエクスペリエンスイベント「ARC’TERYX MUSEUM(アークテリクスミュージアム)」が、2024年4月20日(土)~5月5日(日)まで原宿で開催中。編集部ではいち早くプレオープンに潜入。その見どころをレポートする。
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アークテリクスの世界観を感じる映像インスタレーションでスタート。
今回アークテリクスミュージアムを案内してくれるのは、アークテリクスのマーケティングを担当する新井 望由季さん。
キャットストリートに面した入り口から会場に入ると、まずはエレベーターで3階へ。会場は3フロアに分かれていて、スタートとなる3階はブランドの世界観を伝える「Who We Are」のエリア。
まるで美術館のビデオ上映スペースのような真っ暗な部屋に通されると、丸太に腰を掛けて、巨大なスクリーンに投影されたブランドヒストリーを鑑賞できる。
決して長いビデオではなく、アークテリクスがカナダのバンクーバーで誕生してからアウトドア業界のトップブランドとなった今も大切にしている世界観が短く簡潔にまとめられていて、これからスタートする展示へのイントロダクションといった印象だ。
プロダクトの進化を展示するInnovationエリアは見どころ満載!
そして、階段を下って2階へと進むと、ここからはプロダクトの進化を伝える「Innovation」のエリア。
アークテリクスのファーストプロダクトが何かご存じだろうか? 実はクライミング用のハーネス。ということで、アークテリクスの原点であるクライミングギアを販売していた「Rock Solid(ロックソリッド)」という社名だったころのハーネス3モデルの展示からスタート。
ハーネスのクオリティーの高さがクライマーや専門誌に評価されたことでブランドの評判が高まり、そのハーネスの技術を活かして開発したのがアークテリクスのバックパック。ということで、続いてはバックパックの展示エリア。
ここで新井さんが注目ポイントとして教えてくれたのが、バックパックの背面部に装着された「サーモフォームドバックパネル」。
登山に必要な重装備を運ぶため、少しでも体への負担を減らそうと金型から開発したもので、この凹凸のパネルが背中の動きにフィットし、たまりやすい熱を逃がす。また、荷重ポイントをバッグの下ではなく、中央になるよう設計していることもあり重さが感じにくくなるというものだ。
実はこの「サーモフォームドバックパネル」には、ハーネスに採用されていた熱成形フォームの3次元加工技術が使われているという。アークテリクスのバックパックは、背負ってみると実際よりも荷物が軽く感じられるので驚いた経験がある人も多いと思うが、その秘密がハーネスの技術にあったのには驚いた。
「Innovation」エリアのラストを飾るのは「ハードシェル」。1998年にハードシェルの常識を覆し、今なおハードシェルの頂点に君臨し続ける「アルファ SV ジャケット」の四半世紀におよぶ進化をメインに展示されている。
当時のマウンテンジャケットには、ファスナーからの浸水を防ぐフラップがついているのが常識だった。このフラップを改善したいと考えていた当時のメンバー。そんな彼らに、ファスナーの裏側の表面にシリコンを塗り、水の侵入を防ぐというアイデアが舞い降りた。そして、このアイデアをYKKに持ち込んで止水ファスナーが誕生。
この止水ファスナーに加え、USゴア社と共同開発し、当時のメンブレンよりも耐久性と透湿性が優れた「GOR-TEX®XCR」を採用して1998年に完成したのが、アルファSVジャケットだ。
そして、それ以降もアルファ SV ジャケットは進化を続けているのだが、それはぜひ会場で確かめてもらいたい。特に1998年には19mm幅だったシームテープが、どんどん細くなっていく進化の歴史は見どころだ。
クライミングからスタートしたアークテリクスが、絶え間ないイノベーションによって余計なものをそぎ落としていった結果、ボクらを引き付けるシンプルでソリッドなデザインが誕生したのだと感じる展示だった。
100点以上並ぶアーカイブ展示エリアには、貴重なプロダクトも。
最後は、1階で展開されている「ARC’HIVES / ReBIRD™」エリア。日本全国のアークテリクスユーザーから寄せられた100点を超えるプロダクトが展示されている圧巻のアーカイブプロダクト展示エリアだ。
国際山岳ガイドの近藤謙司さんが8000m級の山に着ていったシェルジャケットをはじめ、一般のアウトドア愛好家、クリエイター、アークテリクススタッフまで、それぞれの思い出や思い入れのエピソードとともに展示されている。
中には、アークテリクスとしては珍しいマルチカラーのファスナーを採用したジャケット(カナダで購入)や、余ってしまう生地を有効活用した配色が斬新なReCUT™モデル(ニューヨークで購入)など、なかなか見る機会のないレアなアイテムも展示されていた。
そして、同じ1階には、廃棄予定だったアークテリクスのジャケットの生地をつなぎ合わせ、バンクーバーをイメージして作られた巨大タペストリーが目を引くアトリエ空間が。
ここは、デザインの力で循環を促す仕組みである“ReBIRD™”プログラムを紹介するエリアになっていて、アップサイクルアイテムを制作するワークショップを開催。
当日に会場で予約することで体験できるワークショップは、プロダクトのパーツを組み合わせたネームタグ作りと、シェルジャケット等のポケットを活用したポケットポーチ作り。
どちらも「ARC’TERYX MUSEUM」のロゴを自分の手で熱圧着機を使ってプリントできるので、いい思い出になりそうだ。
5月5日(日)まで原宿で開催。トークショーやランニングイベントも。
2024年4月20日(土)~5月5日(日)まで、原宿・キャットストリートで開催されるアークテリクス初のエクスペリエンスイベント「ARC’TERYX MUSEUM」。入場は無料で、予約も不要。
スタッフが案内してくれるツアー形式ではないものの、各フロアにはスタッフが常駐しているので質問をすれば丁寧に答えてくれる。詳しい話を聞くほどに、アークテリクスの世界観や技術に驚き、愛用しているジャケットやバックパックもいつもとは違って見えてくるはずだ。
会期中にはトークショーや、会場をスタートして代々木公園・原宿界隈を巡るランニングイベントなども開催予定となっているので、詳細をWEBサイトでチェックしてから行くのがおすすめだ。
「ARC’TERYX MUSEUM」
開催期間:2024年4月20日(土)~ 5月5日(日)
入場料金:無料
開催場所:東京都渋谷区神宮前6丁目14-2(キャットストリート沿い)
開催時間:11時〜19時
URL:museum.arcteryx.jp/
Photo/Taizo Shukuri