電車なんかと違って、クルマで行く旅は風の吹くまま気の向くまま、どこにだって行ける。行き先は、思い立ったらパッと行けて、パッと帰ってこられるくらいの場所がいい。
と、これまでは爽やかにそう綴ってきたワンデイドライブ。だけど今回は、ちょっとだけ勝手が違う。出発は夜、目的地はメシ屋、それも3軒。「大人も、たまにはやんちゃしていいじゃん」の精神で向かった先は、千葉県の国道16号線。実は、あのあたりのロードサイドは、隠れたグルメストリートだ。いざ、大人3人、エクストリームなグルメ旅へ。
Table Of Contents : 目次
北米専売のタコマで、原宿から千葉県まで。

1983年生まれ、東京都出身。自転車雑誌の編集を経て、現在はGO OUTをはじめ多数の媒体で活躍するライター・編集者。冬はスノーボード、それ以外の季節はバイクや釣りに出かける日々を送る。生粋のアウトドアマンであり食通。
Instagram:@tatsunorino08
北澤 幸(写真中央)
1984年生まれ、岐阜県出身。自転車ホイールブランド〈MAVIC〉での勤務を経て、現在はアウトドアブランド〈アークテリクス〉でEC担当を務める。趣味はスノーボード、登山、自転車。Googleマップにはお気に入りのお店のピンがびっしり。
Instagram:@miyukikitazawa
猪俣 慎吾(写真左)
1981年生まれ、東京都出身。結婚を機に千葉へ移住して13年。プロのフォトグラファー&キャンパーとして、日本はもとより世界を旅する。アフリカのタンザニアやケニアなどでキャンプをした経験ももつ。
Instagram:@inomatacampphoto
今回のドライバーは、GO OUTクルーでもある編集・ライターの高梨達徳さん。おともする友人は、〈アークテリクス〉に勤務する北澤幸さん、そしてフォトグラファーでキャンパーの猪俣慎吾さんの3名だ。


この日はまず、原宿で北澤さんをピックアップ。その後に目的地近辺に住む猪俣さんもピックして、16号線へ向かうルート。

「北澤さんとは、ぼくが自転車雑誌をつくっていた頃にお会いして。15年くらい前ですかね。北澤さんはその頃、自転車ホイールブランド〈MAVIC〉に勤めていて、仕事のやりとりをするなかで仲良くなったんです。猪俣さんとは知人の結婚式で初めて会い、それが10年前くらい。いまは仕事仲間でもあります」(高梨)


台風が目前まで迫っていたこの日、外は土砂降り。それでも高梨さんのマイカーはものともせず、軽快に進む。愛車はトヨタ「タコマ」。北米専売、左ハンドルのピックアップトラックだ。
「最初のマイカーは、フォルクスワーゲン・ゴルフVIを新車で買いました。峠道をキビキビ走るのが楽しくて。ただ、そこからバイク雑誌の仕事を始めたことで、方向性が一変したんです。ピックアップの方が都合いいじゃんって」
そこで乗り換えたのが、オレンジ色の日産「ダットサン」。現在も4台所有するほどのバイク好きであり、それを遊び場まで運ぶのに、ピックアップトラックがうってつけだったそう。そこから時がたち、いまから5年前。趣味の山遊びに行くため、荷物を満載にして中央自動車道の上り坂を走っているときパワーの限界を感じ、現在の「タコマ」へと乗り換えた。



「それと、泥だらけになる遊びが好きなので、マウンテンバイクだろうがモトクロスだろうが、そのまま荷台にドンって積めるのがいいんですよね。洗車場でバーッと流して帰れるし。箱車にすると、中が土だらけになるのが嫌で。それなら青天井の方がいい」。


1時間ほどクルマを走らせ、目的地のすぐそばに住む猪俣さんとも合流し、3人が揃ったところでいよいよ16号線へとクルマを進めていく。台風の雨など気にする様子もなく、クルマ選びに乗り込むなり早くも今日の店の話で盛り上がる。

そもそもで、3人とも、決して大食いキャラというわけではない。ただ、食べることへの探求心は人一倍強い。
「地方に住んでておすすめを発信してる人の投稿、めっちゃ見てます」と高梨さんが言えば、北澤さんは「明日から韓国へグルメ旅に行く」と言う。料理の腕前が一級品の猪俣さんは、食べるほうも、作るほうも一家言ある。

それでは、いよいよ、エクストリームな夜のグルメ旅をはじめよう。ようやく見えてきた千葉の隠れたグルメストリート、16号線。最初に行くのはこのお店!
580gの岩を、まずは軽く平らげる。
ちょうど20時。たどりついたのは、千葉市花見川区の「ステーキ共和国 こてはし大使館」。千葉県内にチェーン展開するステーキ&バイキングチェーンだ。遠くからでもよく目立つ。


住所:千葉県千葉市花見川区大日町1379−1
電話:043-306-8358
時間:11:00〜21:00(土・日〜22:00)
steak-kyowakoku.jp/
看板メニューは「エアーズロック」。その名の通り岩のような580gのビッグステーキで、数ある大食いたちが平らげてきたメニュー。それぞれオーダーしたのは、リーダーの高梨さんはもちろんエアーズロック、猪俣さんは300グラム、北澤さんは150グラムのステーキを。ちなみに、全メニューに食べ放題とドリンクバーがつく。

あと先なんて考えない。だからステーキを前に、これからハシゴすることも考えず、バイキングでカレーとサラダを手始めに。アイドリングが済んだ頃に、でっかい肉がやってきた。予想以上にでかい。まさに岩。思わず北澤さんもスマホでパチリ。





「月並みですけど、本当にやわらかくて、ジューシーで、どんどん食べられます。無理かもと思ってましたけど、意外とね」と580グラムをペロリ。猪俣さんと北澤さんも続けて完食。
このタイミングで、高梨さんが持ってきたのは焼きたてのワッフル。実はここ、ワッフルメーカーが置いてありバイキングに含まれている。隠れ名物でもある。


猪俣さんが「これからまだ食わなきゃいけないんだよ!?」といえば「余裕っしょ」と応戦する高梨さん。その間に挟まれる北澤さん。こちらも結局、高梨さんがキレイに平らげて、さぁ、時間が迫っている。次の店に急ごう。
血糖値が振り切れる。
雨脚がいよいよ強まるなか向かったのは、国道16号線沿いの老舗洋食店「ロス・アンジェルス」。昭和52年創業、地元の名店だ。

住所:千葉県八千代市勝田台南3丁目1−11
電話:050-5485-0872
時間:10:30~22:30
IG:@los_angeles_3388
「ここ、墓参りの帰りとかに家族でよく来るんです。その時はハンバーグとか食べて」と高梨さん。幾度となく訪れたことがあるお気に入りの店でもある。
コーヒーブレイクぐらいのつもりでも、メニューをひらけばそそられる。そして「ロス・アンジェルス」の食事はどれもおいしいと、グルメな高梨さんが太鼓判を押すものだから、注文が止まらない。気になったメニューをとにかく頼む。お腹は限界であったとしても、今日の3人は追い込むと決めている。大人にも、こうしてキャッキャ楽しむ夜は必要だ。日頃の節制は、こんな日くらいは忘れよう。






そして到着したのは、メロンソーダにピスタチオアイス、そして名物のきのこスープ。ワッフルとパフェも到着した。ついでにマラサダも。
「甘いモノのあとは、しょっぱいものと相場は決まってる」と誰かがいい、遅れてピザまで到着した。そしてこのピザがまた、イタリアでもなく、アメリカでもなく、どこか日本の味で、めちゃくちゃにウマい。暴力的であり、優しくもある。見事に一瞬でなくなった。



賑やかだったテーブルも、気づいた頃にはキレイさっぱり。「食べるのが好き」という純粋な熱量と「まだ見ぬメニューが気になる」というあくなき探究心がなせる技。さすがです。
窓の外は相変わらずの土砂降りで、小一時間の休憩をしたなら、ついにラスボスとの決着をつけにいく。血糖値はとっくのとうに、振り切れている。
締めは豚骨。ここで白旗。

クルマに戻ってからもグルメトークは止まらない。高梨さんが最近感動したのが「山形・南陽市の『みずき庵』の冷たい肉そば」と切り出せば、猪俣さんは、祖父の地元でもある福島・喜多方の「坂内食堂」本店を熱く推す。北澤さんも、しまなみ海道・因島の「いんおこ」なるお好み焼き系グルメのことを教えてくれた。この人たちのグルメネットワークは、都内はもとより全国に張り巡らされている。雨の国道16号線の車内は、夜のグルメサミットと化していた。

住所:千葉県千葉市花見川区大日町1379−2
電話:043-286-2660
時間:24時間営業
www.yamaokaya.com/
そして、ここが最後の目的地「山岡家」。24時間営業というストロングスタイルでファンも多い。最近になってまた人気に火がつき、株価上昇がニュースになったほど。
「山岡家は2年ぶりですね。埼玉にいる友達と山に行った帰り、その友達が『山のあとは絶対山岡家じゃなきゃ嫌だ』って言い張ってて。必ず来るんです」と高梨さん。北澤さんは初めての訪問ではあるものの「ショート動画でよく見ていたので、食べるの楽しみ」とのこと。猪俣さんは「僕は3年ぶり。なんかお腹空いてきたかも」と余裕の表情だ。

到着した22:30。駐車場には想像以上の車列ができ、外待ちもできている。「こんなに並んでると思わなかった。もう22時超えてるよ。しかも千葉のロードサイドだよ!」と北澤さんも驚きを隠せない。
味見もかねて特製味噌、塩、醤油を頼み、餃子もポチり。店内を見渡すと、若者から仕事終わりの人、子供から大人まで、いろんな人間がいる。「山岡家」は夜の溜まり場。




到着とともに勢いよく麺をすする3人。味はうまい。オイリーでジャンクな味が夜の胃袋に沁みてくる。とはいえすでに3軒目。しばらくして誰からともなく「もう無理っぽい……」の声が漏れたのは、言うまでもない。実はこのあと、もう一軒行こうかなんて話をしていたのだけど、ここが限界だった。
16号線は、いつでも腹ペコの味方。
神奈川の横須賀から、八王子や川越、そして千葉までをぐるっと走る16号線。総延長300km超の道路は、首都圏の物流ネットワークを支える動脈でもある。かつ、周辺はベッドタウンになっていてファミリーも多く住む。
そんな地理的な事情もあって、ロードサイドには飲食店が異様な密度で発達してきた。ステーキハウス、洋食レストラン、ラーメン以外にも、さまざまな食事処がある。しかも深夜まで、あるいは24時間。いかなるときでも、お腹を空かせた誰かを迎えてくれる。

台風前夜、グルメな3人を乗せた「タコマ」が、16号線をどこまでも走っていく。次はきっと、猪俣さんが「また次回」と言い残した「スタミナ太郎」あたりが目的地になるのかもしれない。思い立ったらパッと行けて、パッと満腹になって帰ってこられる。これもまた、ワンデイドライブ。
Photo / Shouta Kikuchi
