この日訪れたのは、Mountain Research(マウンテンリサーチ)を主宰する小林節正さんが、10年前から少しずつ築き上げてきた山の中のプライベートキャンプエリア。
いつも笑顔を絶やさない朗らかな小林さんだが、この日の小林さんは何時にも増して嬉しそうだった。何故なら今回はザ・ノース・フェイスのまったく新しいドームテントのお披露目。小林さんが愛して止まないドームテントが、新旧合わせて3種類デッキ上に建ち並ぶさまは、息を呑むような圧巻の光景だった。
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ドームこそ未来をイメージする象徴的な存在だった。
1970年代から80年代にかけて、未来都市の予想図には必ずと言っていいほど、ドーム型の建造物が描かれていた。実際に21世紀になってみると、実はそれほどドーム型の建物というのは多くないのだけれど、とにかく当時はモダンなもの、未来的なものの象徴として、バックミンスター・フラー博士(*)が提唱したジオデシック・ドームが存在していた。
- *バックミンスター・フラー:20世紀中頃に活躍した思想家であり建築家、発明家。自然界で最も強い構造のひとつとされている卵の殻の形状を建築で実現するために、三角形の面で構成される多面体による球体状構造物(ドーム)、通称ジオデシック・ドームを発明した。
小林さんのモノづくりに一貫した特徴として、クラシックなディテールとハイテクなディテールの融合が挙げられるだろう。つまりある種のミスマッチ感。それは、小林さん自身が内に秘めたセンスの中でも大きな位置を占めるものであり、ドームテントを山の中に張りたいという動機を抱いたのも、そのミスマッチ感に惹かれたのが主因だという。
そして小林さんは、ザ・ノース・フェイスの2M-DOMEを選んだ。大人が立って歩けるほどの広々とした居住性。ヒマラヤのベースキャンプにおける暴風にも耐える耐候性。そして何よりもフラー博士のジオデシック理論に忠実な、幾何学的で美しいフレームワーク。その全てのスペックに、小林さんは魅了された。
ドームテントのために作り上げられたウッドデッキ。
山の中の土地を手に入れ、思う存分ドームテントでの暮らしを満喫しようとした小林さんだったが、土の上に張った2Mドームは、雨が降ると跳ね返った泥水ですぐに汚れてしまう。そこでキッチン&ダイニングとベッドルームとなる、2つの2Mドームを建てるためのデッキを作ることを思い立った。そう、この人里離れた山の奥に忽然として現れる端整なウッドデッキは、まさに2Mドームを張ることを想定して設計されたものなのだ。
最初は軒下を薪の貯蔵庫にするくらいの構想しかなかったウッドデッキも、2Mドームをまるまる格納できるキッチン棟を作り、さらにその上にも2Mドームを張れるようにしよう、といった具合にアイデアが膨らみ、建築家の力も借りて美しい建造物が構築された。しかしこれはあくまでも土台でしかない。主役は一貫して、デッキ上を占有する巨大なドームテントなのである。
2Mドームは1980年代以降、極地遠征用としてザ・ノース・フェイスのテントラインナップのフラッグシップ的な役目を担い続けてきたが、決してドームテントの始祖というわけではない。2Mドームの誕生から遡ること約10年、1975年にザ・ノース・フェイスは、ジオデシック理論に基づいた世界ではじめてのドームテントを発売していた。それが、OVAL INTENTIONだ。
小林さんはこの貴重なヴィンテージ・テントを、作家の田渕義雄さんから引き継いだ。田淵さんが暮らす家は、小林さんのデッキからすぐ近く。近所のよしみということでも無いだろうが、ともかく先祖返りという形でオーバル・インテンションを手に入れ、デッキ上に新旧2つのドームテントを並べて悦に浸るという、贅沢な時間を過ごすようになったわけだ。
そして今日はそこに、もう一つドームテントが加わった。それがザ・ノース・フェイスの最新ドームテント「GEODOME 4」。まったく新しい、誰も見たことのないフォルムを持ったドームテントが、我々の前に姿を現したのだ。
「Geodome 4」 インプレッション動画をYouTubeで公開中!