最近キャンプ場で遊んでいる人をよく見かけるようになったラジコン。キッズの心を鷲掴みにした1980年代のラジコンブームを通った人には懐かしくもあり、テレビの「RCカーグランプリ」を指をくわえて見ていたという人も多いのでは。
いま人気を集めているオフロード仕様のラジコンは、川原や砂利道など、どこでも自由に走ることができるので外遊びとの相性はバツグン。子どもと遊べるのはもちろんだが、大人がハマるほど奥の深い趣味の世界でもある。今回はそんな世界にどっぷりハマる2人に、愛車自慢からアウトドアでの意外なラジコンの楽しみ方まで、初心者にも分かりやすく語ってもらった。
今回、集まってもらったのはこのお二方。小学生で初めてラジコンを手にして以来の筋金入りのラジコンフリークで、コレクターとしてラジコン関連のイベントに出展するなど、趣味の域を超えているフリークリエイティブディレクターのアクタガワタカトシさん。そして、ここ10年でラジコンにハマッたという、釣りコーディネーターのサイトウリュウヤさん。
2人はラジコン好きと言っても、好きな“ジャンル”は少し違うようで、まずはそこから聞いてみることに。
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ラジコンは作って楽しい、集めて楽しい、フィールドを走らせて楽しい。
編集部S「一言でラジコンと言っても、RCカーグランプリのようにサーキットをビュンビュン走らせるものから、ドリフトが得意なクルマ、ゴツゴツのオフロードを走破するクルマまで、いろんなジャンルがありますよね? お二人はどんなラジコンが好きなんですか?」
アクタガワ「ボクはヴィンテージのラジコンを集めてます。クルマも旧車のオフローダーが好きだから、ラジコンもヴィンテージのオフロードカーが好きなんでしょうね。あとは、作るのが楽しい」
リュウヤ「分かります。ボクも作るのが好きで、作り終わってちゃんと走ったら、すぐ次を作りたくなるっていうか……」
アクタガワ「そうそうそう(笑)」
リュウヤ「ボクはジャンルでいうと、ゴツゴツの岩場も進めるクローラーラジコンが中心。子どもと一緒に遊んだり、仲間と釣りの合間に川原で遊んだり。あと、クローラーラジコンの遊び方の文化として、ラジコンと一緒にハイキングをするっていうのがありますよね」
アクタガワ「アメリカではそういうトレランのレースもあって、エントリーが1000人とか集まるくらい人気。ラジコンと一緒にゴールしないとカウントされないんですよ」
リュウヤ「日本だとそこまで盛り上がってないから、仲間と集まってひっそりと楽しんでます(笑)。人間だけなら30分くらいで登れるルートを、ラジコンと一緒に1日かけて歩いて。仲間のラジコンがひっくり返ったときに、手で戻したらつまらないから、ラジコンにつけたウインチで救出したりして(笑)」
「ボクにとってラジコンはアメカジ」
編集部S「お2人がラジコンの世界にのめり込むようになったキッカケは何だったんですか?」
アクタガワ「これは80年代のラジコン雑誌なんですけど、ボクにとってのラジコンはここにある世界観なんです。当時、中1だったんですがこれを見てアメリカのラジコンの世界に思いっきりやられてしまって」
リュウヤ「85年の雑誌ですね。その時、おれまだ4才ですね(笑)」
アクタガワ「アメリカのラジコン大会で優勝したジェイ・ホールゼイという17歳のチャンピオンの写真を見て、モトリー・クルーのTシャツ、OPの短パンに、VANSのスニーカーというファッションがかっこいいなと思って。そういう意味で、ボクのアメリカンカルチャーの目覚めはラジコンなんです。
日本だとラジコンはインドア派の子たちが遊ぶイメージがあるかもしれないけど、アメリカだと全然違って、BMX乗って、スケボーもやって、ラジコンもやるみたいな。だからボクにとってラジコンは、アメカジの一部。ラジコンもパタゴニアのジャケットも同列っていう」
編集部S「アクタガワさんにとって、スニーカーを集めるのもラジコンを集めるのも同一線上なんですね」
アクタガワ「ヴィンテージのラジコンを探すのは、スニーカー探しと似ているところもあるしね。地方に行くと模型屋さんを巡って、昔のラジコンのパーツがないか探したりして。ただアメリカのヴィンテージパーツはあまり日本に入ってきてないので、アメリカに行ったときに探してますね」
リュウヤ「ボクが釣り道具でやっていることと同じですね(笑)」
「実車ではできないことをラジコンで」
リュウヤ「ボクはアクタガワさんみたいな一直線の筋はなくて。小学生のころにテレビでRCカーグランプリを見て、大人ってあんな遊びをしてるんだ、いいなー!とは思っていましたが、自分がやるというリアリティはその時にはなかったですね。ラジコンにハマったのは、10年くらい前。スケールクローラーというものを知ってからです」
編集部S「スケールクローラーって?」
リュウヤ「クローラーはオフロードラジコンの中でも岩場などのゴツゴツした悪路を走らせることに特化したラジコンで、その中でもスケールクローラーはその名の通り、実車を忠実に再現したスケールモデルで走破性も兼ね備えたラジコンです。実車で何台も四駆を所有してイジるのはいろんな面で難しいから、実車そっくりのラジコンに八つ当たりするっていう(笑)」
アクタガワ「ラジコンは実車みたいにお金がかからないところが、クルマ好きにとっていいところではあるよね」
リュウヤ「だいたい桁が二桁は違いますよね。あと、ちょうどその頃、子どもが小さかったので、岩場をゆっくり走るラジコンなら子どもも遊べるっていうのもあって、いろいろスケールクローラーを買いあさったのが始まりですね」
編集部S「10年前にスケールクローラーに出会ってから、ずっとラジコンにハマってるんですか?」
リュウヤ「びっくりするくらい波はあります。これはボクだけじゃないと思うけど、あんなに昨日まで熱かったのに今日起きたら全く興味がないみたいな(笑)」
アクタガワ「分かる! もちろんその逆もあるしね」
2人のラジコン愛車自慢。10年かけて再現したチャンピオンマシンとは!?
編集部S「今日はお二人の愛車を持ってきてもらったので、ぜひ紹介してください」
YOKOMO「Dog Fighter」
アクタガワ「中学1年の時にこのドッグファイターのノーマルを買って。その半年後くらいに開催された世界大会で、このマシンが優勝したんですよね。でも、雑誌で写真を見るとボクが持っているのとは全く別物にカスタムされていて。同じものを作りたいと思ったけど、中学生にはパーツが高価過ぎて、その時には買い揃えられなかった。大人になってから10年くらいかけて当時のパーツを買い集めて、完全再現したのがこのマシンです」
Traxxas「TRX4 ランドローバー ディフェンダーD110」
リュウヤ「アメリカで一番ポピュラーなラジコンメーカーのトラクサスが作っている、ディフェンダーを1/10の大きさで再現したスケールクローラーです。ボディがタフなポリカーボネート製で、ひっくり返ろうが転がり落ちようがなかなか割れたりしないので、思いっきり遊べます。
カスタムは、ボディのフロントガラス部分をくり抜いて透明にして、ウインチを付けて、あとはステッカーチューンくらい。ラジコンの運転席にはアメコミのキャラクターを乗せるようにしていて、こいつはタートルズが運転してます(笑)」
初心者がアウトドアで楽しむなら何がおすすめ?
編集部S「お二人の話を聞いていたら興味が沸いてきたんですが、初心者はどんなラジコンから始めるのがいいのでしょうか?」
リュウヤ「WPLのクローラーラジコンがおすすめですね」
アクタガワ「そうだね。WPLだね」
左)WPL JAPAN「C34」(1/12スケール)/右)WPL JAPAN「スズキ ジムニー C74」(1/10スケール)
リュウヤ「オフロードをがんがん走れるスケールクローラーで、限りなくトイラジコンに近いホビーラジコンっていう位置づけ。走りもゆっくりだから操作もしやすくて、キャンプ場で走らせても迷惑になりにくいと思います」
アクタガワ「あと、大きさ的に邪魔にならないのもいいね。気軽に持ち運んで遊んだり、家にも飾っておいたりできるサイズ感」
編集部S「組み立てが難しかったりはしない?」
アクタガワ「これはRTR(Ready To Runの略)で、車体、ボディ、送信機がセットになっていて、組み立ても完了した状態だから、箱から出してそのまま遊べちゃう。とはいえ、自分でパーツを変えてグレードアップもできるしね」
リュウヤ「サスペンションを変えたりですね。WPLをいじっていると、もっと本格的なラジコンが欲しくなった時にもすんなりと入れるし、ファーストステップにはすごくいいと思う。値段も1万前後で高くないし。ただ、そのままだと少し安っぽい感じもあるので、塗装したくはなりますね」
アクタガワ「エアブラシを使ったカスタムペイントはハードルが高いだろうから、まずはステッカーチューンをして、パネルラインにスミ入れ(スミ入れ塗料や専用のペンで簡単にできる)するだけでも立体感が出てボディが引き締まるからおすすめ」
リュウヤ「それだけで自分だけの一台が完成しますよね。ぜひWPLからラジコンの世界に入ってみて、アウトドアで遊んでほしいです。クルマ好きなら絶対ハマりますよ!」
ラジコンは今から始めても遅くない!
今回の対談では時間の都合で触れることができなかったものの、ラジコンを語るうえで忘れてはいけない存在といえば、日本が誇るTAMIYA(タミヤ)だ。……というより、著者も含めて(RCカーグランプリの影響もあって)ラジコン=タミヤぐらいに思っていた人も多いのでは?
1970年代、それまでエンジンが中心だったラジコンの動力にモーターを採用して、電動ラジコンカーの火付け役ともなったのが、タミヤ。タミヤのラジコンは、プラモデルのように組み立てが必要なモデルが多いが、箱から出してバッテリーを充電すれば、すぐに走行可能な完成品のシリーズも発売されている。
思ったよりも簡単に始められて、キャンプの楽しみも広がりそうなラジコン。子どもの頃に憧れたあの気持ちを思い出しつつ、今から始めてみるのも全然遅くない。
ついついここまで読み切ってしまったアナタは、すでにラジコンの奥深い世界の入口を開けてしまっているのかも!?
Photo/Taizo Shukuri