ガレージブランドの先駆けとして、キャンプシーンを牽引し続けている「OLDMOUNTAIN(オールドマウンテン)」。17歳のころに夢みていたことを少しずつカタチにしている、アメリカンヴィンテージに魅了されたディレクターを訪ねに出雲へ。
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ヴィンテージならではの“アジ”を、職人とともに追求してカタチに。
アウトドアやキャンプをコンセプトにし たブランドは数あれど、古き良きアメリ カンテイストでクラフトマンシップが感 じられるものとなると、きっとこの「オールドマウンテン」が一番の知名度を誇る のではないかと思う。創業は2017年。 島根県出雲市に住む、辻ノ内実さんがカ ーミットチェア用のカスタムパーツを発売したところからブランドがスタート。
「座面をレザーにしたくて、表情の良い 革で作ろうとしたところ、ラクダの革が 一番しっくりきた。ジブンの好きなアメリカンヴィンテージの雰囲気にもよく合う。 ボクはもともと椅子ばかり置いている倉 庫があるくらい、椅子好きだったんです」。
辻ノ内さんは業界で知られるかなりのヴィンテージツウ。子どもの頃から廃棄され るスピーカーを家に持ち帰っていた趣味 人で、国内外の旧車、古いバイクに、ランタ ン、アンティーク家具や、ヴィンテージウエアなど、あらゆるものに目を向けてき た。生粋の古いもの好きゆえ、自然と自身 の好きなスタイルを取り入れ、そのまま ブランドに昇華し発信できてきたわけだ。
ただ、自身の色を取り入れているのは ブランドの製品だけではない。昨年、東京・ 千駄ヶ谷にオープンした「モールズ・トーキ ョー・ギャラリー」の空間も古き良きアメリカンテイスト。自ら施工し注目を集めて いたが、じつは辻ノ内さんは建築デザイン、 解体、リフォーム、塗装などの土木業も生 業。しかもイベント業、配送業、保育園まで営み、その多くに〝らしさ〞が見られる。
「なんでもジブンでやりたいんです。ブラ ンドではキャンプギアは元より、アパレル やジュエリー、シャンプーやフレグランスづくりにも取り組んでいます。あとは最近、 グランピング施設をオープンしたんです。 来年にはジャズ喫茶の要素を取り入れた 映画館も完成予定。オールドマウンテンとしての表現をもっと広げていけそうです」。
年代物の愛用品からブランドの本質に迫る。
ヴィンテージカルチャーが色濃く反映されているオールドマウンテンのアイテムは、どのように生み出されているのか。インスピレーションの源となっている、辻ノ内さんが所有している貴重な愛用品を拝見。
出雲のガレージには、旧車にバイク、アンティーク家具など、コレクターも垂涎のヴィンテージ品がズラリ。
高校生のときからアメリカの映画に触れ、ハーレーなどのヴィンテージバイクが好きになっていったという辻ノ内さん。以降どんどんヴィンテージカルチャーに魅了されていき、今はガレージを3つ借りていてクラシックカーやバイクを20台ほど保管している。
ハウスメーカーもビジネスにしているだけあって、各国各年代の家具や、クラシックカーと同年代のレザージャケットなども見られた。現在は、バイクカスタム界のレジェンド、木村信也氏のもとでハーレー「WL」をカスタム中。
古い音響機器、ヴィンテージランタン、アートなども蒐集。
自身が営んでいる土木業のオフィスの一室を、ショールームのように活用。「中学のときからあまり楽器には興味がなくて、なぜかスピーカーとかアンプばかり集めていた」と辻ノ内さん。元バンドマンで、今もイベントの運営に携わっているだけあって、古い音響機器がいくつもレイアウト。
1972年代アメリカ・アルテックのスピーカーや、1973年代イギリス・オレンジアンプのスピーカーに、1961年代フェンダーのアンプ「ベースマン」、1981年代のフェンダー・ローズと呼ばれるエレクトリックピアノといった、音楽家たちが喉から手が出るほどの代物が並ぶ。グレッチやフェンダーのジャズマスターといったエレキギターも所有。
また、ヴィンテージランタンも多数所有していて、コールマンの初期ランタンなど、なかなかお目にかかれないモノも発見。草花をレジンで固めたスケートデッキは、福崎進によるアートワークブランド「ドゥグダギ」の作品。
ブランドの世界観に触れられる東京の拠点。
爆発的な人気により、製品にじっくり触れる機会になかなか恵まれなかった「オールドマウンテン」。そこで昨年4月に誕生したのが、盟友たちと一緒に立ち上げたギャラリー。ファンなら一度は伺う価値あり。
自社製品のフルラインナップを手にとって見られる場所を作りたいと、辻ノ内さんは北参道駅から徒歩5分、東京・千駄ヶ谷の一角にこのギャラリーをオープン。
運営はガレージブランドのムーブメント黎明期からともに牽引し続けてきた「アシモクラフツ」、「ネルデザインワークス」を加えた3者共同。販売イベント時は来客が殺到し、抽選制が導入されるほど話題となっている。
通常営業時にはギャラリーとしてオープンしており、誰でも入店可能。店内の施工は辻ノ内さんが担当。1900年代初頭の古き良きアンティーク什器や雑貨、その時代を思わせるサインペインティングなどが見られ、オールドマウンテンらしさにあふれている。
展示品のため、ほとんどの製品は販売されていないが、出雲デニムと製作したジーンズなどいくつかのアパレルは購入でき、不定期で開催されている販売会では、そのときにしか購入できないスペシャルなアイテムをオーダーすることが可能。
●MOLDS TOKYO GALLERY
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-3-13
open:12:00〜19:00
Instagram@molds_tokyo ※営業日はインスタグラムを要確認。
プロの職人と交わり作り上げた逸品の数々。
和歌山の木彫り作家に、刀鍛冶に、出雲のデニム工場に、今治タオルに――。丁寧に作られた逸品にキャンプのエッセンスや、得意のアメリカンテイストを取り入れ、どの角度からも唯一無二のモノに仕上げた。
張替えジャケット¥35200 肘かけ¥13200 真鍮パーツ¥19250 ※カーミットチェアは別売り
高強度のパラフィンコットンと、サウジアラビアンキャメルレザーを組み合わせた高級感あふれる面持ち。オルテガ紋様と、中東の祭りでラクダに入れられる紋様がベースのオリジナルデザインが唯一無二。肘かけには、高級木材アメリカンブラックウォールナットを使用。オリジナルの金属パーツを真鍮に交換すれば、ヴィンテージ感が向上。
シェラカップチタン各¥4620 OKAMADON各¥7150 グリップキャメル各¥1430、ダークブラウン各¥1650 クッカーケース各¥16060
(左から)本格釡飯が食べられるよう開発された深型タイプのシェラカップチタン。シェラを使用して1合までのご飯が炊ける釡蓋。シェラの持ち手に装着できる編み込み用キャメルレザー。これら一式を収納できるケースには、帆布生地とクロムエクセルレザーを使用。
RAKUSA ¥14850
和歌山県の職人がひとつひとつハンドメイドで製作している木彫りカップ、ククサをオールドマウンテンのラクダをモチーフにアレンジ。それぞれの表情や仕上がりに違いがあり、使えば使うほどアジがでる。
GUINOMI ヒノキ ¥4400
天然無垢のヒノキでつくられたぐい呑みに、オリジナルの焼き印を側面と底面に。職人が丁寧に時間をかけ、すべすべの木肌になるまで磨いた酒器は、口当たりがとてもよくお酒時間が格別に。4個セット。
NIGARA ¥31350
350年続く日本で指折りの刀鍛冶の名門、二唐刃物鍛造所が手がけたフォールディングナイフ。ヴィンテージ加工を施したオーク材の柄に真鍮の口金を使用。ダマスカス鋼特有の刃の柄もポイント。
HANARIM.鋳造 ¥5500
中世の王室などで使われていたピュータープレートを、キャンプシーンで使用しやすいサイズに調整。厚みがあり、ずっしりと重く、型からデザインをおこし、鋳造という製法で独特の光沢や花形の波打った縁取りなど、当時の雰囲気を忠実に再現。直径13cm。
TETSU ARRA ¥38500
ネルデザインワークスの「アルクッカー」の内面にオルテガ紋様とブランドロゴを刻んでいて、ホットサンドに焼き色が付けられる。アシモクラフツのグリップも用いて、ヴィンテージ着色を施した逸品。
SET UP ¥42500
製品洗いによる毛羽立ちやアタリが出た、綿ストレッチツイルによるセットアップ。見た目のゴツさに反して着やすく、パンツの裾を1ロールすることでスタイルが確立されるよう計算された設計。
OD各¥9900、CB各¥8250
柔らかく、耐久性も高いキャメルレザーを使用。ガシガシ使ってアジが出るように、内側にスエード生地を貼り合わせて厚みをつくった。ODは継ぎ目に革を当てることで型崩れしにくい。
COACH JACKET Light ¥24200
ほどよい光沢のある素材を用いた高級感のあるコーチジャケット。フロントは、オリジナルのスナップボタンとファスナーによるダブル使いながら、あくまでシンプルなデザインに仕上げている。
“1933XX” TAPERED DENIM ¥41800
出雲デニムに協力を依頼し、ベルトループとシンチバック、サスペンダーボタンがすべて取り付けられた、1933年モデルを細かい部分まで忠実に再現した。元リーバイスのオフィシャル工場にて製作。
本記事は、GO OUT vol.180からの転載記事です。
Photo/Fumihiko Ikemoto Text/Naoto Matsumura
(問)オールドマウンテン info@oldmountain.jp oldmountain.jp