ペンドルトンのウールシャツが誕生100周年。初来日した「PENDLETON WOOLEN MILLS」代表を直撃!

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1863年に創設者のThomas Kay(トーマス・ケイ)が米国・オレゴン州に設立したアメリカ初の毛織物工場をルーツに持つブランド、「PENDLETON(ペンドルトン)」。現在も国内外の羊毛生産者と連携しながら、アメリカ北西部にある2つの自社工場でワールドクラスのウール製品を作り続けている。

今回、「PENDLETON WOOLEN MILLS」の創業家である CEO、John Bishop(ジョン・ビショップ)氏と、セールス・マーケティングを取り仕切るRobert Christnacht(ロバート・クリストノック)氏が、同ブランドの象徴的アイテム“ウールシャツ”の誕生100周年に合わせ、初来日を果たした。

GO OUT 編集部は、ペンドルトンの生い立ちと、これからのヴィジョンを掘り下げるべくインタビューを敢行。早速、お2人に話を伺った。

「Pendelton woolen mills」の代表John Bishop氏(左)と、セールス・マーケティングを取り仕切るRobert Christnacht氏(右)

時代のニーズに対応してきたペンドルトンの歴史、それは変化の連続だった。

GO OUT:まずは日本へようこそ。早速質問させていただきますが、まず日本の印象について。日本は世界に比べ、独特な価値観を持つマーケットですが、どのように感じられていますか? また、競合するブランドと比べて、ペンドルトンの強みとはどういったものでしょう?

John:そうですね、日本のマーケットは、歴史と伝統のある製品を高く評価してくれていると思います。一方、日本には素晴らしいデザインの伝統があります。私たちはアメリカのブランドですが、ただそのまま持ってくるだけでなく、日本のライフスタイルに適した製品を日本のチームと一緒に作り上げることで、斬新なアイデアを得ることができます。そして、自然に対する感謝があります。たとえアウトドアでキャンプをしなくても、彼らは自然への憧れを持っている。この3つが、私たちをこのマーケットで存在させているのだと思います。

GO OUT:他の国、例えばヨーロッパなどを訪れたときはどうでしたか?

John:ヨーロッパはファッションセンスが素晴らしくても、新しいアイデアに対しては、あまりオープンではないと思います。日本の場合は太平洋を挟んで、アメリカの西海岸と陸続きのような気がするくらい特別な関係が構築されている。ドイツやイタリア、イギリスでも、アメリカ西海岸のカルチャーに憧れる人がたくさんいますが、日本ほどではないでしょうね。

1960年代に作られたペンドルトンのバージンウールシャツ。当時はひとつひとつ箱に入った状態で販売されていた。

GO OUT:100年の歴史のなかで、あるいは製品の歴史のなかで、最も印象的な瞬間や出来事は何ですか?

John: 創業当時はブランケットをメインで扱っていたんですが、1924年代にメンズウエアの展開を開始し、ウールのシャツを作りはじめたんです。それまでの多くのウールシャツは、実用的なものが大半だったかもしれません。なので私たちは実用的ながらファッショナブル、カラフルで高品質なシャツを作ることに集中したわけです。

GO OUT:その当時のアメリカは、どのような客層だったのでしょうか? ハンティングやフィッシングをするアウトドアマンとか、タウンユースでお洒落が好きな人とか?

John:当時もクロスオーバーしていたと思います。アウトドア好きの人たちはもちろん、ハンティングやフィッシングには行かないけれど、ペンドルトンのシャツはカラフルで暖かいから着たいという人たちもいましたね。たとえその日に外に出かけなくても。

GO OUT:その後はどのように変化していきましたか?

John:1949年からレディース製品も本格的に展開をはじめました。その後、1980年代後半にアメリカでは百貨店が経営統合するケースが増加し、市場の動向が変わりはじめました。そのときに、百貨店頼りのビジネスではダメだと思い、私たちは顧客に直接販売するリテーラーになる必要があると考え、独自の販売を手がけるようになりました。その結果、1990年代に通販カタログでの販売をはじめたのですが、これが功を奏しました。そして、2000年前後には独自のWEBサイトを立ち上げ、メンズ・レディース、ホーム&アクセサリーという3つの部門に再編しました。それぞれ異なるメッセージを発信するブランドとなる必要があり、これらすべてを、ひとつのブランドとしてオンラインで集客する手法をとったんです。ペンドルトンは“マルチ・チャンネルのライフスタイル・ブランド”だと考えています。

GO OUT:なるほど、ペンドルトンの歴史的背景を聞くのは興味深いです。

John:でも、変化しなければ続いていなかっただろうと思います。市場はつねに変化する。それに適応していかなければならないですからね。

ペンドルトンの哲学。なぜウール素材にこだわるのか?

GO OUT:ペンドルトンにおいて、ウールシャツはブランドの最も象徴的な製品だと思います。なぜこのウールシャツは歴史に残るアイコンになったんだと思いますか? その位置づけは? 

John:シャツをはじめた当時は、他にない特徴的なアイテムだったのだと思います。ウールシャツというカテゴリーの競争があまりなかった。それにカラフルな格子柄というのが、かなりユニークだったんでしょう。1960年代にはサーフカルチャーが盛んになって、海上がりのサーファーたちから重宝され、そこから競合メーカーもチェック柄のウールシャツ市場に参入してきました。

Robert:さまざまな層の消費者が、私たちのシャツを自分たちのスタイルの一部として受け入れてきたわけです。山が好きなアウトドアマンでなくても、サーファーであったり、あるいはロサンゼルスのサウスセントラルに住むローライダー・カルチャーのバイカーであったり、そんな彼らが顧客の一部であることは間違いなかったと思います。さまざまな消費者が私たちのシャツを気に入り、そして私達はそのニーズに応えていきました。つまり、ファッションとしての存在も大きかったし、時代毎に私達の作ったシャツを着てユニークなことをしている人たちが大勢いたということです。

GO OUT:では再びウールシャツについてお聞きしますが、ペンドルトンのウール製品に高品質のウールを使用することは、どれほど重要なことなんでしょう?

John:どんな製品でもそうだと思いますが、原材料はとても重要です。高品質の製品を作るのに、安いウールや再加工のウールを使うことはできません。私たちは最初からバージンウールを製品に使用してきました。ただ、ウールの織物というのは、やや質の低い繊維を使っても、わりと良いものができることで知られています。でも、本当に高品質なものを作るには、バージンウールを使う必要がある。それが私たちのビジネスの基本です。

Robert: ウール調達チームが世界中を飛び回り、何世代にもわたって同じ生産者のもとを訪れ、関係を築いています。多様なサプライヤーによって支えられており、サプライヤーとの関係があるからこそ、高品質な製品を提供し続けることができるのです。

John:私達のいるオレゴン州にも、1909年の創業以来買い付けを続けている生産者がまだ数軒あるんです。しかしアメリカでの羊毛生産だけに頼ると経営戦略的には難しいため、南米やオーストラリア、ニュージーランドに行って羊毛を調達するようになりました。

GO OUT:日本では以前、ウール製品を着るのは秋と冬だけだったんです。暖かい季節、特に夏にウール製品を着る人はほとんど見かけなかったんですが、近年では、ウールの衣服は暖かい季節でも着れるものとして少しずつ認知度が高まっており、しかも肌に優しく、体臭を防いでくれるということが浸透してきています。

John:ウールには水分を吸収する特性があります。水そのものではなく水分、湿気ですね。身体の熱や汗が湿気となり、それを放出するために繊維が膨張するので、温度調節の役割を果たす快適な素材なのです。そして、臭いが残らない点も特徴ですね。

ペンドルトン伝統の格子柄は、着古してくたびれてきても、雰囲気が色褪せることはない。むしろ良い“アジ”となっていく。

ペンドルトン・オリジナルの柄は年間200種類以上!

GO OUT:ペンドルトン独特の柄の導入は、どのようなところからはじまったのでしょうか? デザインについてのインスピレーションについてもお聞かせください。

John:私たちは自然の色から多くのインスピレーションを得ています。チェック柄でも、積極的に色彩を取り入れ、さまざまな色を混ぜ合わせています。生地自体にオリジナリティを確立することができたことにより、製品自体のデザインはシンプルで良かったわけです。

GO OUT:昔作った生地のアーカイブは保存してあるんでしょうか? 社内のアーカイブルームにはどのくらいのパターンがありますか?

John:ありますよ。メンズのシャツだけじゃなく、レディースもありますし、タータンもある。 ウールと、ウール以外の物もあるので、そういう物も含めると、1年間で何種類のパターンを開発してるんだろう?

Robert:200から、時代によっては300くらいあるのかな。

John:仮に200パターンだとしましょうか、加えてブランケットもありますからね。

GO OUT:年に約200パターンも!

John:初期はさすがに少ないだろうから、過去50年分に絞ったとしても、ざっと計算して、1万パターン。実際にはそれ以上あると思いますよ。

GO OUT:なんと……、1万以上の柄が保存してあるわけですか! それはすごい。

Robert:商品開発の初期段階では、さまざまなデザイナーがオレゴンまでやってきます。彼らはそのアーカイブから多くのインスピレーションを得ているんです。我々のコレクションでは、通常毎シーズンに 1つか2つのパターンを復活させ、選ばれた年の特別なタグを制作します。これは1958年、これは1966年、とか。そして今回製作した100周年記念シャツの柄は1924年に作られたもので、初期に生産したシャツから受け継いだものなんです。

GO OUT:そうやってペンドルトンの歴史的な格子柄が、新たに生まれ変わるわけですね。

Robert:それに、インテリアや家具といったインダストリアルデザイン用の生地もそれらのマーケット向けに製作しています。ここにある椅子や、自動車のインテリアに使う柄などもそのひとつですね。

ペンドルトンのアメリカ工場で生産された生地を使い、製造は日本という共同製作によるチェアとソファ。

日本のクリエイティブがペンドルトンに与えた視点とは?

GO OUT:日本の文化やファッショントレンドは、ペンドルトンの製品ラインやデザインにどのような影響を与えたのでしょう? また、日本の消費者はペンドルトン製品に対してどのような特別なニーズや嗜好を持っていると思いますか?

John:私たちは、日本のパートナーが製品にもたらす創造性に注目していて、それがペンドルトン・ブランドに対しての日本的な解釈を与えてくれます。日本でアメリカの製品を取り入れ、それに違う解釈を加える。それらが、私たちのデザインに影響を与えることがよくあります。アメリカの人々はそれを見て、「これは斬新で面白い、ユニークな製品だ」と思ってくれるんです。

GO OUT:なるほど。おそらく過去には日本からの奇妙なリクエストを受けた経験もあるでしょう。ちょっと変わったものを作ってほしいとか。

John:アイデアがクレイジーに思えることもある(笑)。「えっ、そんなもの作りたいの? 大丈夫?」というような。しかし、実際できあがったサンプルを見て、「なんて素晴らしいアイデアなんだ!」と考えを改めるんです。

Rob:コム・デ・ギャルソンとコラボレーションでは、クレイジーパターンのシャツを製作しました。そのシャツをアメリカに持ち帰って、他の連中に見せたら、最初は本当に奇妙がられました。でも結局それを見てるうちに、そのアイデアが気に入って、自分たちのインラインで作ったりもしましたね。

GO OUT:まさにクロスカルチャーですね。ところで、日本の消費者にどのようにはアプローチしていますか? 店舗での販売も含めて、ネットショッピング、卸売りなどありますが、日本ではどのチャネルが実績が高く、また伸びているのでしょう?

John:今は為替レートの関係で非常に難しいですが、私の認識では、日本ではセレクトショップが私たちにとってベストな販売チャネルです。そして、今後大きなチャンスがあるとすれば、それはネットショッピングに大きな成長の可能性があると考えていますが、日本の消費者はアメリカの消費者ほどインターネットショッピングを利用しておらず、店に行って商品を見ることを好むように思います。実際、私もそうで、見て買えないものはあまり買わない。ですから、専門店というチャネルは今の私たちにとってベストだと思います。今後は、インターネットショッピングがさらなる成長の機会を提供してくれると信じています。

ペンドルトンの原点である、ネイティブ・アメリカンとのトレードブランケットによって生まれた特徴的なハーディング柄は、今では様々なプロダクトに取り入れられている。

注目を集める、名だたるブランドとのコラボレーション。

GO OUT:ペンドルトンの商品は、ウールのシャツやアパレル、ブランケットに加え、日本ではキャンプギアも人気があります。「Helinox(ヘリノックス)」とのコラボは反響が大きかったと思いますが、日本はそういうコラボ企画が大好きなんです。このようなアウトドアブランドとのコラボレーションについて、どのようにお考えですか?

John:アウトドア市場というのは、ある種の憧れの対象だと思うんです。人々は都会に住んでいても、頭の中は海や山にある。そして、都会から出て、美しい自然の中に身を置くことを楽しみにしている。だから私たちの製品はその思いに関連しているのだと考えています。そして、それを後押しし、価値を高めていきたいと考えています。それは、私たちが何者であり、何を大切にしているかということの本当に重要な部分ですので、アウトドアブランドとのコラボレーションは大いに意味があることだと思っています。

Rob:ヘリノックス以外には、真空スチールボトルで有名な「STANLEY(スタンレー)」ともコラボしました。ペンドルトンは椅子や食器のビジネスを専門的に手がけているわけではないので、私たちの感覚とコラボレーション・パートナーの感覚との接点を見つけ、その良さを融合させることでテクニカルな製品を作ることができます。アウトドアギアの世界でさらなるコラボアイテムを拡大するために、最高のパートナーを見つけることが大切です。

John:我々はそれほど大きな会社ではないし、専門分野も持っているが、持っていない分野もたくさんある。だから、専門家とパートナーを組むことがとても重要なんです。そうそう、「スノーピーク」とも協力関係を続けているんですよ。彼らはこの分野のスペシャリストだからね。本当に楽しいコラボレーションを続けています。

GO OUT:スノーピークやヘリノックスを除いて、他には何か新しい計画はありますか?

John:私たちは常に先を見据えて考えています。次に何ができるだろう、何をしたら楽しいだろう、と。いくつか計画しており、まだ打ち合わせ段階のものもありますが、製品化に向けて動いています。準備は進めているのですが、まだ皆さんに発表する段階までは整っていないんです。

ペンドルトンが考える、ウール製品のこれからとブランドとしてのヴィジョン。

GO OUT:ウール製品は今後どのように進化し、どのように変化すると思いますか?

John:羊毛の生産者はつねに努力しています。より細く、より柔らかく、より快適な繊維が取れる羊を繁殖させることができるようになってきています。ウール製品は、ほとんどが織物ですが、今後のウールの需要は、肌の上から直接着るものが増えると思います。レイヤリングもできますからね。それにウール製品は持続可能で、資源を再利用できるんです。

GO OUT:着心地もいいですしね。ウール繊維は自然でリサイクル可能な、新しい世代のアパレルにとって最も大きな可能性を持っていると思います。環境に害を与えない次世代のペンドルトン製品も見てみたいです。

John:考えてますよ、私たちはつねに進化してきましたから。そしてこれからもね。

GO OUT:そうなんですね。今後発表されるのを楽しみにしています。

GO OUT:では最後の質問です。次の100年に向けてのペンドルトンのヴィジョンを教えてください。

John:100年か、ずいぶん先の話だね(笑)。でもね、品質、色、持続可能性、自然への感謝といった構成要素、それらは変わらないと思う。100年後の世界がどうなっているかはわからないけど、100年前は1924年。その頃自動車が出現しての人々が乗りだしたり、電話も発明されて話しはじめた頃。すべてが変わったわけではないが、この100年で随分多くの変化があった。これからの100年というのも、つまりそういうことだと思います。

GO OUT:ありがとうございました。今後のペンドルトンの展開に大いに期待しています!


Photo/Takuma Utoo


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Seijiro Eda
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