【ブランドピックアップ〜POST O’ALLS〜】NYで生まれ育ち、ついに30年。勢いは留まるどころか増すばかり。

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世界屈指のワークウエアの研究者であろう大淵毅(おおふちたけし)のブランド「POST O’ALLS(ポルトオーバーオールズ)」が30周年を迎える。出来たばかりの旗艦店や、次のコレクションのことなどを聞きにショールームを訪ねた。

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ニューヨーク発の老舗ワークウエアブランド「ポストオーバーオールズ」

ワークウエアに頼ることも多いゴーアウト読者のみなさんなら、一度は耳にしたことがあるだろうポストオーバーオールズは服飾のNY州立大学FITを卒業した大淵毅さんが1993年に設立。

写真中央に映るデニムのプルオーバーシャツはブランドの初期のもの。

学生時代は古着のディーラーとして日本に商品を発送する仕事をしていた大淵さんは「ヴィンテージも名のあるものはすでに人気だったけど、そのほかのワークウエアなんて日本人で探している人はほとんどいなかったと思います。特に東海岸は完全に未開拓の地でした」と語る。

大淵さんが持つヴィンテージのフレンチチャイナ。貴重なアーカイブを数々ストックしている。

FITではメーカーや工場の経営を学んだ大淵さんだが、就職するなら自分でブランドを始めてみようと奮起したのだ。

幼少期はボーイスカウトに所属し、サーフィンも嗜んでいたという、じつはアウトドア派だった大淵さん。25歳で単身渡米した。

「アメリカの生地を使って現地生産がしたかった。当時はアメリカのメーカーが生産国を海外に移し始めていた頃でしたが、それでもまだ縫製工場が残っていた。時代が変わって、最近では生地や縫製のクオリティを考えると日本にいる方がいいと思い、2018年に帰国しました」。

ポストオーバーオールズの人気アイテムのひとつ「CRUZER」の’20sオリジナル品。

ニューヨーク発の老舗ブランドが日本に上陸したという話題性もあって、業界人らも軒並み大淵さんを頼るように。人気は勢いを増し、今年月には中目黒にフラッグシップストアをオープンした。

ファーストコレクションのカタログ。手書きの洋服アウトラインと、タイプライターの文字がまたセンスにあふれていた。

「ファーストコレクションをNYで展開したときに、バイヤーの人から〝これはいくら?〞って聞かれて1着の値段を言ったら〝ダースの値段だよね?〞って言われたりしていた。それほどワークウエアを新しく作ることに馴染みがなかった」と大淵さん。先駆者ならではの話である。

自身のヴィンテージアーカイブをまとめた著書もある。

30周年を迎える来年には、ファーストコレクションとまったく同じラインナップのものを発表しようと目論んでいるようで。いくら普遍的なものを作っているとはいえ、そんなことが成し得るのはこのポストオーバーオールズくらいだろう。

異国情緒あふれる、中目黒の新たな旗艦店。

2019年から八幡山(東京都杉並区上高井戸)に店舗兼ショールームを構えていた「ポストオーバーオールズ」だが、来年の創業30周年を迎えるにあたり、今年10月に中目黒川沿いに旗艦店「Post O’Alls NAKAMEGURO」をオープン。

パシフィックファニチャーサービスの石川さんによる内装。大淵さんの好きな40年代のギターなどからインスパイアされ、什器や壁などに、ナチュラルカラーに塗装したメープルの杢材を使った。

内装はナチュラルカラーに塗装されたメープルの杢材を基調とし、什器は当時際立っていたメーカー「Heywood Wakefield」の家具をイメージさせる明るい色目で仕上げ、そのほかの塗装部分にはインダストリアルなグレー系のカラーを採用。

20世紀初頭の近代建築であるアールデコ様式を取り入れて作られた店舗。大淵さんの求める世界を肌で感じることができる。

1940~50年代のアールデコっぽいカリフォルニアのムードとインダストリアル感をミックスした造りが、中目黒の借景とリンクして、唯一無二の空間となっている。

ポストオーバーオールズ中目黒 ●住所:東京都目黒区上目黒1-5-10 中目黒マンション105 tel:03-6303-2160 open: 12:00~19:00 不定休。

製品は言わずもがな、店内を見るだけでも十分に訪れる価値がある場所が誕生した。

ポストが超厳選した、今季の至極アウター。

大淵さんが所有するあまりにも貴重なヴィンテージなどを元に作られているポストオーバーオールズのウエアはどれもが秀逸。しかし、そんななかでもこの4点は特に持っておきたい名品だ。

CRUZER 8/premiumgoatskin ¥239800

厚さ、鞣しの種類・具合、光沢感、色出しなど、すべてにこだわって特注したゴートスキンを使用。黒、茶、紺の3色展開で、各色ブラウンに染めた上に彩色。味わい深い経年変化が楽しめる。

CRUZER 5-R / wool melton ¥74800

2010年に、20年代のJohn Rich(Woolrichの前身) クルーザーにインスパイアされて登場した「クルーザー5」を微調整。100年前の木こりが着ていたウエアがこんなにもクールだとは。

POST Chinois/lightdenim ¥39600

ヴィンテージのフレンチチャイナとフレンチワークをブレンド。手作業による伝統的な細く丸いチャイナトグル、細かい運針の綿糸による折り伏せ縫いなど、細部まで徹底された逸品だ。

POST Chinois DV/lightdenim ¥38500

22SSから作られている襟なしタイプ。戦前の良質なフレンチワークウエアに見られるポケットなどディテールの拘りは言わずもがな、カーディガンのように着用できるのも魅力だ。

本記事は、GO OUT vol.158からの転載記事です。

Photo/Shouta Kikuchi
Report&Text/Naoto Matsumura


(問)ポストオーバーオールズ中目黒 tel:03-6303-2160 postoveralls.com

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GO OUT編集部
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