山頂を目指すだけが、山の楽しみ方ではない。
長く続く道を区間ごとに歩き、その土地の自然や歴史に触れながら、少しずつ旅をつないでいく。そんな「セクションハイク」という楽しみ方がある。
今回の舞台は、青木ヶ原樹海や西湖周辺に広がる東海自然歩道。「GO OUT SUPER HIKING PRIVATE SESSION」のプログラムで、富士山麓を2日間かけて歩いた。

一緒に歩いたのは、自然のなかで過ごす時間やソロキャンプの魅力を発信する、アウトドアインフルエンサーのonlyさん(@onlyoutdoor__)と、その友人でカメラマンの大滝さん。
東海自然歩道とは、どんな道なのか。セクションハイクでは、どんな景色に出会えるのか。テントを背負って歩き、一泊して翌朝は再び道へ。その土地の自然や歴史に触れながら、少しずつ旅をつないでいく。

Table Of Contents : 目次
東海自然歩道を歩く、2日間のセクションハイク。

今回歩くのは、青木ヶ原樹海や西湖周辺に広がる東海自然歩道の一部。
足元には、onlyさんが約1年前から愛用しているKEEN(キーン)の「Targhee Ⅱ Mid WP(ターギー ツー ミッド ウォータープルーフ)」。しっかりした山道にも対応できる安心感があり、普段のハイキングでも頼りにしている一足だ。
この日履いていたのは、KEENとLeave No Trace Japanがコラボレーションした特別仕様のモデル。アッパーには「LEAVE NO TRACE」の文字が記され、フットベッドには7つの原則が落とし込まれている。
Targhee Ⅱ Mid WP(ターギー ツー ミッド ウォータープルーフ)

Leave No Trace(リーブノートレース)は、自然環境へのインパクトをできる限り抑えながら、アウトドアを楽しむための環境倫理プログラム。
掲げられているのは、以下の7原則だ。
- 1.事前の計画と準備
- 2.影響の少ない場所での活動
- 3.ゴミの適切な処理
- 4.見たものはそのままに
- 5.最小限のたき火の影響
- 6.野生動物の尊重
- 7.他のビジターへの配慮
自然のなかで遊ぶことを我慢するのではなく、楽しみながら自然へのダメージを減らすには、どんな行動を選ぶべきなのか。一人ひとりが考え、実践していくための指針になる。

熊鈴を取り付け、準備は完了! まずは、富士山麓に広がる青木ヶ原樹海へと入っていく。
東京から大阪まで続く、東海自然歩道ってどんな道?

今回歩いたのは、日本初の長距離自然歩道として整備された「東海自然歩道」の一部。
東京都八王子市の高尾山から大阪府箕面市の箕面公園まで、11都府県をまたいで続く、全長1,748kmのロングトレイルだ。
構想が発表されたのは1969年。当時は高度経済成長期の真っただなかで、都市化や自動車の普及が急速に進んでいた。
そんな時代に、改めて自分の足で歩き、自然や歴史、文化に触れる。「歩くことの復権」という考え方から生まれ、1974年に全線が開通した。

とはいえ、約1,748kmを一度に歩き切るのは簡単ではない。
そこで楽しみたいのが、ルートを区間ごとに分け、自分の予定や体力に合わせて少しずつ旅をつないでいく「セクションハイク」だ。今回は、精進湖民宿村から鳴沢氷穴や紅葉台を経由してPICA富士西湖へ。翌日も西湖周辺を歩き、2日間で約13kmの区間をつないだ。
only「長い道を一度に歩き切らなくても、自分のペースで楽しめるのがいいですよね。まとまった休みが取れない人でも、安全かつ快適にロングトレイルの旅を楽しめると思います」

ゴールまでの距離だけを追いかけない。歩きながら周囲へ目を向け、その土地のことを少しずつ知っていく。
ロングトレイルは「山旅」と表現されるように、セクションハイクは、道中そのものを楽しむための旅なのだ。
木漏れ日の樹海を抜け、鳴沢氷穴へ。

初日は、木漏れ日の差し込む青木ヶ原樹海からスタート。
森のなかへ入ると、聞こえてくるのは鳥の声と、地面を踏みしめる足音ばかり。木陰に入ると空気はひんやりとしていて、夏でも気持ちよく歩ける道が続いていく。

樹海を抜けると、チェックポイント「鳴沢氷穴」に到着!
富士山の噴火によって生まれた溶岩洞窟で、なかへ入ると空気が一変。夏でも凍えるほどの冷気を感じる、まさに「冷蔵庫」のような洞窟だ。

濡れた石の上を歩いたり、傾斜の急な場所や段差を越えたり。さらに足元も暗く見えづらい。そんな氷穴でも、onlyさんはすいすいと進んでいく。
only「濡れた路面でも全然滑らないですし、水たまりや浅い川くらいなら、じゃぶじゃぶ歩いても水が染みてこない。軽いので、長く歩いても疲れにくいです。1年くらい履いていますけど、ソールのラグもまだしっかり残っています。耐久性もかなりあると思います。
そのうえ、足首まわりは柔らかくて動きやすい。自分は足幅が広めなんですけど、これはすごくしっくりきました。しっかりした山道でも頼りになります」
Targhee Ⅱ Mid WPは強力なグリップ力に加え、ミッドカットながら足首まわりは柔らかく、動きを妨げにくい。加えて、土踏まず部分に入った「シャンク」と呼ばれる補強材のようなものによって、安定感も兼ね備える。樹海、洞窟、舗装路、アップダウンのある山道。さまざまな路面が現れるセクションハイクでも、足元を気にしすぎず歩き続けられる一足だ。
急登を越えた先で、富士山麓の景色を眺める。

鳴沢氷穴を後にすると、木漏れ日の穏やかな道から一転。紅葉台へ向けて、上り坂が続いていく。やがて段差のある急登へ。息を切らしながら、一歩ずつ進んでいく。

上り切った先で待っていたのは、富士山と青木ヶ原樹海を一望できる絶景! 視界が開けた途端、西湖から吹き上げるような風が汗を冷ましてくれる。

ただ距離を稼ぐのではなく、その場所の自然や地形に目を向けながら歩く。
only「東海自然歩道がどんな道なのかを聞いたり、その場所の成り立ちや地形の特徴を教えてもらったりしながら歩けたのも楽しかったです。ただ通り過ぎるのではなく、自然や歴史を知りながら進めるのが面白いなと思いました」
Leave No Traceのワークショップで、ゴミの適切な処理を考える。

紅葉台や三湖台を巡り、初日のゴールとなるPICA富士西湖に到着!
樹海に鳴沢氷穴、急登と、変化に富んだルートを歩き切った達成感はひとしお。ひと息ついた後は、KEENによるLeave No Traceのワークショップへ。
知らなかったことに出会いながら、少しずつ先へ進んでいくセクションハイクは、道中そのものを楽しむための旅でもある。


今回のワークショップでは、Leave No Trace7原則のなかから、原則3「ゴミの適切な処理」を深掘りした。

ワークショップでは、自然のなかに残されたゴミが分解されるまでに、どれほどの時間がかかるのかをクイズ形式で考えていった。
スナック菓子の袋は約80年。ペットボトルは500年以上。ガラス瓶や発泡スチロールに至っては、分解されるまでの時間を算出することさえ難しいという。
捨てるのは一瞬でも、その影響は長くフィールドに残り続ける。

only「Leave No Traceについては、このシューズを履くことをきっかけに知りました。自然が本当に好きなので、山を大切にしたいという気持ちは以前からあって。普段から、ゴミが落ちていたら拾うようにはしていました」
Leave No Traceの特徴は、「自然のなかで〇〇をしてはいけない」と禁止事項を並べることではない。
外遊びを我慢するのではなく、楽しみながら自然への負荷(インパクト・ダメージ)を減らすには、どう行動すればいいのか。一人ひとりが考え、選んでいく。
only「いろいろなことを禁止するのではなく、ずっと自然を楽しむためにどう行動すればいいのかを考える。そこに、より強く共感しました。自分が普段から感じていたことを、具体的な形にしてくれているような感覚でした。もっといろいろな人に知ってほしいです」
歩いた先でテントを張り、夜を過ごす。

初日の終着点となるPICA富士西湖では、テントを設営して一泊。
自然のなかを一日歩いたあとは、背負ってきた道具で今夜の寝床を整えていく。日帰りならここでハイキングは終了だが、翌朝もまたここから歩き始める。テントを張る時間まで、旅の続きとして楽しめる。

翌日は、POYを持ってゴミ拾いハイキングへ。

翌朝は、前日のワークショップで受け取った携帯ゴミ箱「POY(ポーイ)」をバックパックに取り付けて、ゴール地点に向かって出発! 西湖周辺の自然を眺めながら歩きつつ、ゴミを見つけたら、POYへさっと入れていくのだ。
もちろん自分のゴミも決して落とさない。それがLeave No Trace(足跡を残さない)だ。

前日に知ったことを、翌日のフィールドで試してみる。
難しいことを一気に始めるのではなく、まずは道端のゴミをひとつ拾う。Leave No Traceは、こうした小さな行動から実践できる。
only「美しい自然は、ずっとそのまま残るものではないと思うんです。誰かが次につないでいかないと、なくなってしまう。自分の活動を通して、若い人たちにも伝えていきたいという気持ちは以前からありましたけど、今回参加して、その思いがより強くなりました」
2日間のセクションハイクを終えて。

西湖周辺の樹海を抜け、2日間にわたるセクションハイクを無事に完歩!
初日の樹海や鳴沢氷穴、紅葉台へ向かう急登に続き、翌日も自然のなかを歩き切った。ゴールしたonlyさんの表情にも、ほっとした笑顔が浮かぶ。

今回歩いたのは、全長1,748kmに及ぶ東海自然歩道のほんの一部。区間ごとに歩けば、自分のペースで少しずつ先へ進めるから、一度にすべてを踏破する必要はない。
2日間を歩き切った達成感はありつつも、次は別の区間も歩いてみたくなる。そんな余韻が残るゴールとなった。
次のフィールドへ持ち込まない。最後はシューズをブラッシング。

2日間のハイキングを終えた後は、履いていたシューズをブラッシング。アッパーの汚れだけでなく、アウトソールの溝に入り込んだ土も丁寧に落としていく。

靴底に付着した土には、植物の種子や微生物が含まれていることもある。
そのまま別のフィールドへ持ち込まないよう、歩き終えた後にブラッシングすることも、Leave No Traceの原則4「見たものはそのままに」へと通じるアクションだ。
シューズをきれいに保ち、長く使うためだけではない。買って終わりではなく、履いて、歩いて、手入れをして、また次のフィールドへ。自然との付き合い方を考える時間は、ハイキングを終えた後も続いていく。
次の世代へ、自然をつないでいく。

もともとは、アウトドアと縁があったわけではないというonlyさん。
自然のなかで過ごす心地よさを知り、少しずつキャンプや登山を楽しむようになった。
only「今回参加して、改めて自分が大切にしたいことを見つめ直すきっかけになりました。ダメージを残さないで自然を残す。Leave No Traceの考え方を知って、これまで自分のなかにあった思いが、よりはっきりした気がします。美しい自然を次の世代へつないでいくためにも、自分にできることを続けていきたいです」
まとまった休みが取れなくても、区間ごとに歩けば、長い道を少しずつつないでいける。土地の自然や歴史に触れられるのも、セクションハイクの面白さだ。
Leave No Traceも、特別なことから始める必要はない。ハイキングの途中で道端のゴミを拾ったり、歩き終えたシューズから土を落としたり。簡単なことでも、十分に意味のあるアクションなのだ。
Photo/Shouta Kikuchi
(問)キーン・ジャパン合同会社 www.keenfootwear.jp
