田園都市線・世田谷線「三軒茶屋」駅から歩いて10分ほど。茶沢通りから住宅街へと折れた先にひっそりと佇む「SLIDER STORE(スライダーストア)」は、洋服と雑貨が所狭しと並ぶ、小さなセレクトショップだ。

オーナーの宮川さんは、古着屋と大手セレクトショップのバイヤー経験を経て、2019年にSLIDER STOREをオープン。「自分が仕入れて、自分の言葉で説明して、自分の店で売る」。そんなシンプルな理想を形にする場所として、この店を立ち上げた。
今回は、そんなSLIDER STOREに足を運び、店名の通り「変化球」な品揃えとミックス感のある空間の裏側について、宮川さんにじっくり話を聞いてきた。
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バイヤー経験から立ち上げた、「自分の色」を出せる場所。

大学を中退して、20歳の頃に古着屋でキャリアをスタートさせた宮川さん。23歳から販売員・店長・バイヤーとキャリアを重ねてきた。
企業のバイヤーとして展示会を回り、国内外からアイテムを仕入れていくなかで、次第に感じるようになったのが「自分なりの意図が、お客さんに届ききらない」もどかしさだったという。

「自分で選んで、自分の言葉で説明して、自分の店で売る。そういう当たり前のことを、ちゃんとやりたいなと思った」のが、独立のきっかけだそう。
2019年、そうした思いを形にしてオープンしたのが「SLIDER STORE」だ。ブランドやトレンドの“上澄み”をなぞるのではなく、オーナーの視点と責任がきちんと通ったアイテムを置く場所として、少しずつファンを増やしてきた。
戻ってきた三軒茶屋の一角。名前のルーツは変化球の「スライダー」。

約1年、世田谷〜目黒エリアを中心にコンパクトなスペースを探していたなかで、「ここだ」と決めたのが、かつてアルバイトをしていたハンバーガー店「ベーカーバウンス」のすぐ近くだった。
尊敬する先輩の店がある通りで、もう一度仕事ができること。若い頃からの“ホーム”のようなエリアで、自分の店を構えられること。その縁もあって、三軒茶屋・太子堂のこの場所に腰を据えることになった。
店名の「SLIDER」は、ミニバーガーを指す「スライダー」と、野球の変化球「スライダー」のダブルミーニング。「どこにでもある直球なアイテムではなく、ちょっと変化球な品揃えを、自分なりの“手の届きやすさ”で出していきたい」という感覚が込められている。

ロゴやタグに使われるフォントには、かつて働いていたベーカーバウンスのグラフィックへのオマージュも忍ばせてあり、“修行先”へのリスペクトがさりげなくにじむ。
ごちゃ混ぜの棚に、宮川さんの頭の中が具現化された店内。

店内に入るとまず目に飛び込んでくるのは、天井近くまで積み上がったラックや棚。服、スニーカー、ローファー、雑貨、トイ……と、カテゴリを横断したアイテムがぎっしり詰め込まれている。
いわゆる“ミニマル”とは真逆な、かなり情報量多めのレイアウト。けれど一つひとつのアイテムを見ていくと、そこには共通して「宮川さんのツボ」が反映されているのが分かる。

「きっちり整理された店にしたい感覚はあまりなくて、ちょっと宝探しっぽいほうが楽しいかなと思って。だから上の方にもたくさん積んでます」と宮川さん。
若い頃から古着やアメリカ文化に惹かれてきたバックボーンに、ストリートカルチャーや、好みのちょっとヘンテコなキャラクターものまでがミックスされたのが、この店内だ。
天井を抜いて配管を見せた内装や、断熱材の吹き付けがそのまま見える壁も含めて、「整いすぎていない心地よい空気感」がSLIDER STOREらしさになっている。
SLIDER STOREらしさが滲む、“変化球”プロダクトたち。
“イージーなのに品がある”オリジナルのイージーセットアップ。

SLIDERSTORE “極太イージーパンツ” – ストレッチデニム – ¥22000
SLIDER STOREのオリジナルアイテムのなかで、軸になっているのがタック入りのイージーパンツ「極太イージーパンツ」シリーズ。ウエストはゴム+ドローコード仕様で、いわゆる“イージーパンツ”の楽ちんな穿き心地。それでいてフロントにきれいなタックを入れることで、ラフさ一辺倒にならないバランスに仕上げている。
シルエットはしっかり太めだが、タックと絶妙な丈感でスニーカーにも革靴にも合わせやすく、「休日の1本」としてそのまま街にも飲みにも行けるような抜け感がある。生地はシーズンごとに異なるものをリリースしており、今回はハリとほどよい光沢感のあるストレッチデニムを採用している。

(トップス)SLIDERSTORE “CPOD ジャケット” ¥26400
今季は、このパンツとセットアップで着られる新作トップス「”CPODジャケット”」も用意。パタゴニアのフリースブルゾンをイメージソースにしつつ、ハリと光沢のあるデニム生地と軽いストレッチ感で、アウトドアともワークともつかない“どこにも属さない一枚”に仕上げている。裾にはドローコードが配置され、ギュッと絞るのがオススメだ。
ロンTやスウェットの上に重ねれば冬場のミッドレイヤーに、春先はライトアウターとしても活躍。セットアップでキメれば、季節をまたぎながら「SLIDER STOREらしいバランス感」で着回せる。
ユーモアのあるグラフィックに惹きつけられる「HELS」。

HELS “UNKNOWN T-shirt” / “BUSINESS T-shirt” ¥8580
ウエアのセレクトで、宮川さんがとくに推しているブランドのひとつが「HELS」。コム デ ギャルソンでグラフィックを手がけていたデザイナーによるブランドで、ちょっとしたひねりとユーモアのある世界観が魅力だ。
グラフィックの作り込みに対して、価格は比較的手に取りやすく、1枚取り入れるだけでスタイリングの空気をガラッと変えてくれる存在。


HELSliderstore “Health Wear zip hoodie” ¥14850
SLIDER STOREでは、そんなHELSに別注したジップパーカーも展開している。
Apple社のロゴスウェットの文字組みやバランスを踏まえつつ、「HEALTH WEAR」のロゴをのせた一枚は、シンプルながらグッと来る存在感で、「ヘルスライダーストアって勝手に呼んでるんです」と宮川さん。
毒々しいようでどこか愛嬌のあるカラーリングは、お客さんから「キチガイカラー」と呼ばれることもあるそうで、そこも含めてSLIDER STOREらしい“変化球感”がにじむ。
老舗・Padmore & Barnes別注のローファーも、SLIDER STOREらしい一足。

Padmore & Barnes × SLIDERSTORE “特注Coin Loafer” ¥37400
シューズでは、アイルランド発の老舗シューズメーカー「Padmore & Barnes(パドモア&バーンズ)」との別注ローファーもイチオシだという。
ブランドの長い歴史のなかでも初となるローファー企画で、ベーシックなローファーの形をベースにしつつ、シボ強めの表革とビブラムソールといった素材使いは、“SLIDER STOREらしさ”を表現した絶妙なバランス感に仕上がっている。
スニーカーほどカジュアルすぎず、革靴ほどかしこまりすぎない間合いで、さきほどの極太イージーパンツとも好相性。店のフィルターを通した「大人の定番」として、じわじわファンを増やしているアイテムだ。こちらは3月発売。
恐竜トイからアメリカ製スウェットまで。服好きの余白を埋める雑貨たち。

Ein-O Science “TYRANNOSAURUS SKELETON” ¥2200
オリジナルや別注のウェアに加えて、店の雰囲気作りに一役買っているのが雑貨たちだ。
目を惹いてしまい、思わず「これなんですか?」と聞いてしまったビビッドな恐竜の組み立てキットは、いわゆる知育トイ的なアイテム。ただし、ゆるい作り込みやパッケージの色使い含めて、「置いてあるだけで楽しい」ことを基準にセレクトしている。
服だけでなく、部屋の棚や玄関先にちょっと置きたくなるもの。そんな“生活の余白を埋めるもの”を探している人にとっても、SLIDER STOREのごちゃ混ぜ棚はかなり楽しいはずだ。
規模を追わず、「現状維持」をちゃんと続ける。

「規模が大きくなりすぎると、中身が薄くなってしまうのも見てきたので。自分で目が届く範囲で、ちゃんと仕入れて、ちゃんと紹介できるくらいがちょうどいい。無理に広げるより、今の感じをしっかり続けていきたいですね」。
今後の展望について聞くと、これまで取材してきたセレクトショップオーナーたちと共通する答えが返ってきた。
企業時代に“大きな組織”を経験しているからこそ、規模と密度のバランス感覚には敏感だ。SLIDER STOREは、そうした等身大の「現状維持」を前提に、宮川さんの「好き」に共感するファンを、これからも増やしていくのだろう。
同郷出身の同い年オーナーが作るサンドイッチを食べに「sandwich BOO」へ。
最後に、「この辺で好きなお店ありますか?」と聞くと、宮川さんが紹介してくれたのが三軒茶屋のサンドイッチ屋「sandwich BOO(ワンサンドイッチ ブー)」。
駅近くのビル2階にあるショップで、ボリュームのあるサンドイッチとお酒が楽しめるお店だ。大きなソファ席があり、夜遅くまで営業しているので、子ども連れのファミリーからお酒好きの大人まで、幅広いお客さんが集まるという。
オーナー同士が同郷(長野県)かつ同い年という縁もあって、行き来することも多いそう。SLIDER STOREで服や雑貨を物色して、BOOでサンドイッチとお酒でチルアウト。休日の過ごし方としては完璧では?
“変化球”なアイテムが欲しくなったら、三軒茶屋のSLIDER STOREへ。

上品でありながら、シーンを選ばないボーダレスなウェアを中心としたオリジナルラインを軸に、HELSやパドモア&バーンズなど、他店ではなかなか見られないブランドとのコラボレーション、そして個性的なフィギュアやトイといった雑貨まで。
SLIDER STOREの棚には、ジャンルや価格帯をまたぎながらも、「オーナー視点で良いと思ったもの」だけが詰め込まれている。
ブランド名から商品を検索して最安値で買う、のではなく「ここで勧められたものなら、一度試してみたい」と思える店がSLIDER STOREだ。
そんな「行きつけ」を探しているなら、三軒茶屋まで足を伸ばす価値はあるはず。
◼︎SLIDER STORE(スライダーストア)
住所:東京都世田谷区太子堂5-13-3 1F
Open:12:00〜18:00(不定休)
tel:03-6450-7185
Online Shop
sliderstore.shop
Instagram
@slider__store
