小田急線・京王井の頭線「下北沢」駅から徒歩約5分。駅前のにぎわいを抜け、住宅街へ向かう途中のビル地下1階に店を構える「BOZEMAN(ボーズマン)」は、天井近くまでギアやウエアが積み上がった、ちょっとカオスな空気感のアウトドアショップだ。
2001年のオープンから約25年、ボーダレスかつセンス抜群なアイテムセレクトで、アウトドア好きに愛され続けている。

アウトドアメーカーの最新ギアから、どこか懐かしい道具、雑貨のような小物までがひしめき合う店内は、いわゆる“きれいに整えられたショップ”とは真逆。そのごちゃごちゃ感と、山ブランドに限らない独自のセレクトに惹かれて通うファンも多い。
今回は、そんなアウトドア好きから支持を集めるBOZEMANを訪問。なぜここ下北沢でお店をはじめたのか、セレクトの源や下北ローカルとの付き合い方まで、「店番」横山さんにじっくり話を聞いてきた。
Table Of Contents : 目次
- アウトドア業界出身ではない店主が営む、“ごちゃっと系アウトドアショップ”。
- 「ごちゃごちゃしてる方が楽しい」。ドンキみたいな“宝探し”レイアウト。
- “山ブランド縛り”ナシ。外で使えるならフィールドギア。
- 一度履いたら戻れない? ベッドロックのクロッグサンダル。
- 「ニット帽は暑いけど耳は冷える」を救う、MIYAGENの「CapNi Band」。
- レザーマンのツールや「山で使う香り」。ニッチで濃い小物たち。
- お客さんが値段をつける「リサイクルコーナー」。古着屋も通う掘り出しゾーン。
- ナルゲン棚と、沢・スキー・釣りがにじむ“山の人”の店。
- 行きつけのスパイスカレーの名店「般゜若」で一皿。
- 「今日潰れないように」。肩の力が抜けた、下北沢のアウトドアショップ。
アウトドア業界出身ではない店主が営む、“ごちゃっと系アウトドアショップ”。

自身のことをあえて「店長」ではなく「店番」と呼ぶ、気さくで元気なキャラクターが印象的なBOZEMANの店主・横山さん。実は“アウトドア業界出身”ではないタイプのショップオーナーだ。
20代で家業のガソリンスタンドを引き継いだのち、渋谷でバーをオープン。約7年店に立ちながら、プライベートでは沢登りやスキー、釣りなど、山や雪山へ通い続けてきた結果、「アウトドアが好きだから、それを仕事にすれば良いんだ」と方向転換。
ちなみに店名の「BOZEMAN」は、アメリカ・モンタナ州の都市ボーズマンに由来。イエローストーン国立公園への玄関口として知られるアウトドアタウンの名前を借りて、「自分なりの山道具の店」を下北沢に開いたかたちだ。
たまたま見つけた地下物件。前職の“名残”が混ざる内装。

出店候補地として最初に探していたのは吉祥寺だったが、家賃や物件の競争率の高さから断念。都内をバイクで走っているときに、たまたま「貸店舗」の張り紙を見つけたのが、現在ボーズマンが入っているビルだったという。

「下北沢に特別な思い入れがあったわけではなく、“空いているいい物件がたまたまここだった”くらいの感じ」と笑う。

店内の什器には、前職の名残もちらほら。バーの厨房で使っていた棚や什器がそのまま商品棚やディスプレイ用に再利用されている。
「ごちゃごちゃしてる方が楽しい」。ドンキみたいな“宝探し”レイアウト。

BOZEMANの店内をひと言で表すなら、「ごちゃごちゃ」。整然とした陳列とは対照的に、ラックや棚には商品が目一杯詰め込まれている。

「コンセプトなんて特にないよ。ごちゃごちゃしてればしてるほど楽しいかな、くらい。ドン・キホーテ方式というか(笑)」と横山さん。整理整頓にあまりこだわらないため、計算し尽くされた“見せ場”は少ないが、そのぶん思いがけないアイテムに出会えるのがこの店の醍醐味だ。
入口付近のラックから奥の棚まで眺めているだけで、「こんなのも置いてるんだ」と新しい発見が次々と出てくる。整いすぎていないからこそ、宝探しのようなワクワク感が生まれている。
“山ブランド縛り”ナシ。外で使えるならフィールドギア。

ボーズマンのセレクトで特徴的なのが、いわゆるアウトドア専業ブランドだけに絞っていないところだ。
「山の展示会にだけ行ってたら、みんな同じラインナップになるじゃない。小さな量販店みたいになるのはつまらないから、ファッションや雑貨の展示会にも行って、“外で使えそうなもの”を引っ張ってくることが多いね」

横山さんいわく、「スリッパとパジャマ以外は、だいたいアウトドアと一緒」。室内専用のものを除けば、外で使える道具の多くはフィールドでも応用できる、という考え方だ。
その視点で選ばれたアイテムたちは、登山・キャンプだけでなく、街や日常の延長線上でも使いやすいものが中心。山ブランドにこだわらず、「外で気持ちよく使えるかどうか」が基準になっている。
一度履いたら戻れない? ベッドロックのクロッグサンダル。

BEDROCK SANDALS / Mountain Clog Nubuck Leather/Brown ¥38500
セレクトの中から、横山さんが「これはハマる人が多い」と推すのが、サンダルブランド・ベッドロックのクロッグタイプだ。
ビブラムソールを採用した厚底のクロッグサンダルは、いわゆるリラックス感のあるサンダルでありながら、ヒールストラップもあるためマウンテンバイクや軽めの山歩きにも対応できるタフさが魅力。普段履きとしてはもちろん、フィールドにもそのまま飛び出せる。

「楽だし、ある程度のことなら全然いけちゃう。ビルケンとかビーサンって、楽なんだけど山には行けないじゃない。でもこれは、そこそこいけちゃう。マウンテンバイクの人なんかには最高だと思うよ」と横山さん。
この日もベッドロックを履いて、自転車で通勤していた横山さん。自身が体感し、良さを理解しているからこそ、アイテムについて語る際の熱量は高いし引き込まれる。
「ニット帽は暑いけど耳は冷える」を救う、MIYAGENの「CapNi Band」。

MIYAGEN Trail Engineering / CapNi Band(キャップニバンド) ¥4400
新進気鋭のトレイルブランドMIYAGENの「CapNi Band(キャプニバンド)」も押さえておきたい。
「ニット帽は暑すぎる、でも耳は冷える」という、行動中によくある悩みを解決するためのイヤーラップバンドで、キャップの上から重ねても、単体でも使えるのが特徴のアイテム。
もともとブランドオーナーとは友人関係で、横山さんが毎年開催しているフリーマーケット「ギアループマーケット」にも出店している間柄だが、その枠に収まらず「本当に良い」と感じたアイテムだけをフラットにセレクトしている。
レザーマンのツールや「山で使う香り」。ニッチで濃い小物たち。

LEATHERMAN / WAVE PLUS ¥22000
ボーズマンの小物コーナーには、ニッチだけれど存在感のあるアイテムがそろう。
マルチツールブランドのレザーマンは、そのひとつ。扱っているショップが多くないこともあり、狙って訪れるファンもいるという。とくに最近は外国人観光客がよく購入していくそうだ。

iynua / アロマミスト30ml ¥1650
さらに、「山で使う香水」として紹介してくれたのが、iynuaのアロマミスト。オリエンタルウッドな香りで、虫よけ成分も含まれていて、フィールドと日常のあいだをやわらかくつないでくれるようなプロダクト。
日常でも浮かないデザインと香りは、気分転換や持ち運びする香水としても使える。
お客さんが値段をつける「リサイクルコーナー」。古着屋も通う掘り出しゾーン。

店の奥、ディスプレイ下のクーターボックスには、なにやら無造作にギアが入っている。ここが、ボーズマン名物の「リサイクルコーナー」だ。
じつはこのコーナー、持ち込みは常連さんを中心に行われていて、値段は全て持ち主自身が決める仕組みになっている。3ヶ月の間預かり、委託販売という形で置いているという。

プロではない人が値付けするぶん、ものによっては相場よりかなり安く並んでいるものが見つかることも多い。「ここだけ毎日チェックしに来る近所の古着屋もいる」というのも納得の、掘り出しものゾーンになっている。
ナルゲン棚と、沢・スキー・釣りがにじむ“山の人”の店。

入店して左手の壁面には、各地のショップが作ったナルゲンボトルたちが並んでいる。アメリカに買い付けに出ていた頃、現地のショップを回りながら少しずつ集めてきたコレクションだ。
現地では、アウトドアショップがナルゲンの別注ボトルを作る文化が根付いていて、「どの街にも一つはある」くらい身近な存在だったという。同じデザインを何本か仕入れて店頭で販売し、最後の1本だけを自分用に残してきた結果が、いま棚に並んでいるラインナップだ。

フィールドでの遊び方も、ボーズマンらしさを形づくる要素のひとつ。登山靴を履いてピークを目指す山登りよりも、沢登りやスキー、釣りといったスタイルが横山さんのベースになっている。
そのため、いわゆる“登山靴”はあえて扱っていない。「分からないものはおすすめできないし、売れないからやらない」というスタンスで、自分の経験と感覚で理解できる範囲のギアを中心にラインナップを組んでいるのが印象的だ。
行きつけのスパイスカレーの名店「般゜若」で一皿。

横山さんに「この辺で好きなお店ありますか?」と聞くと、近くのカレー店「般゜若(パンニャ)」を教えてくれた。せっかくなので、取材帰りに足を伸ばしてみることに。

名物は黒いカツカレーだが、横山さんが夢中だというチキンカレーをオーダー。小麦粉不使用のシャバっとしたルーは見た目こそ軽やかだが、ひと口目からスパイスの香りと出汁由来のコクがじんわり広がってくる。
ライスによく染みるカレーと、ほろほろのチキンを一緒に頬張ると、後からほどよい辛さが追いかけてくる。気がつけばスプーンが止まらず、あっという間に完食してしまった。
BOZEMANでギアを物色したあとに、スパイスの効いた一皿でお腹を満たす。そんなセットで楽しめるのも、下北沢ならではのハシゴのしかたかもしれない。
「今日潰れないように」。肩の力が抜けた、下北沢のアウトドアショップ。

「コンセプトとか立派なことは特に決めてなくて、“今日潰れないように頑張る”くらいが目標かな。日曜と月曜はだいたい山かスキーに行っちゃってるし、それでもなんとか続いてるのが今」。
肩の力が抜けた店主のスタンスと、バックグラウンドが随所に見える店内。そして、アウトドア専業ブランドだけに縛られないセレクト。それぞれのピースが重なり合って、ボーズマン独自の空気が生まれている。
古着やカレーの名店が点在する下北沢の中でも、地下1階に潜った先で出会うこの“ごちゃ混ぜ”感はちょっと特別だ。山道具の専門店とも街のセレクトショップとも違う空気を味わいたくなったら、宝探しをするつもりでBOZEMANのドアを押してみてほしい。
■BOZEMAN(ボーズマン)
住所:東京都世田谷区北沢2-33-6 藤原ビルB1F
Open:13:00〜20:00
tel:03-3481-9250
Online Shop
bozeman.jp
Blog
「BOZEMAN BLOG」
