里山から旧街道まで、アソビの延長で“歩く”ことを楽しむ、GO OUT遊歩倶楽部。今回は、東京の下町エリア“谷根千”や上野で、毎年新年に開催される「谷中七福神巡り」を、一足早く堪能中。
七福神の“福禄寿”と“恵比寿”と“布袋尊”を参拝し終えたところで、「谷中銀座」の商店街も満喫し、次なる目的地へ。

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「谷中銀座」まで歩き、七福神巡りはあと4柱。

下町随一のディープスポット「谷中銀座」が楽しすぎて寄り道していた4人も、気を取り直して、“寿老人”が祀られている長安寺に向かう。
日暮里駅を左手に見ながら上野方面に進む道は、旧家屋も並ぶ、情緒あふれる景観。

こちらは、彫刻家の朝倉文夫の住宅権アトリエを改装した「朝倉彫塑館」。日本庭園の中庭や屋上菜園あるとか。立ち寄りたいスポットだけど、今回は外観を眺めるだけにして、足早に「長安寺」へ。

そして「谷中銀座」から5分ほどで到着。その前に参拝した”布袋尊”が鎮座する「修性院」から直行しても15分くらいで訪れることができる。

長安寺の建立は1669年と江戸時代の初期ながら、境内にはその時代よりもさらに古い鎌倉時代の板碑が残されている。さらに近代日本画の基礎を築いた明治初期の画家、狩野芳崖の墓跡もあるなど見所が多い。
力を借りて長生きしたい! 長寿延命の福神「寿老人」。

ここで迎えてくれるのが“寿老人”。”福禄寿”と同じく道教出身で、南極星の化身とも言われる。玄鹿という鹿を連れた仙人のような姿が印象的で、長寿延命の神様として知られている。

こちらも本来は新年だけご開帳されるが、住職のご厚意で直接参拝させてもらえることができた。ちなみに この“寿老人”像は、徳川家康が直々に奉納したという言い伝えが残されている。


そして本堂では鳳凰や昇竜、鶴などの壁画も閲覧できるが、こちらは漆喰を立体的に塗り上げて装飾された鏝細工。
まさに左官職人の妙技! と言える超絶テクで作られているが、現存するのものはかなり珍しいので、新年に“寿老人”を参拝したら、一緒に見学するのがオススメ。

本堂に上がらせてもらい、4人がバックパックを並べて置いていたので、ちょっと使用モデルをご紹介。左から、ULAイクイップメントのパックラット(丸山さん)、コトパクシのルゾン18Lバックパック(磯野さん)、マウンテンローレルデザインのヒル27L(辻井さん)、アークテリクスのアロー22(キャンさん)
散歩の延長のような街歩きでも、こんなバックパックを背負って歩くとシティハイクの気分が楽しめる。

そしてこの日、キャンさんと辻井さんが愛用していたソックスは、GO OUT 遊歩倶楽部のオリジナルアイテム。先日開催されたイベント、スーパーハイキングの会場で販売されたが、こちらでも入手できる。

「長安寺」の次に向かうのは、“毘沙門天”を祀る「天王寺」。東京ドーム2個分の敷地面積を誇る「谷中霊園」の参道を通っていくが、一帯に高いビルがないため、とにかく空が広い。
そして雲ひとつない晴天に映えるのが、紅葉真っ盛りの銀杏の大樹。下町ハイクは情緒溢れる街並みだけでなく、こうした美しい自然も所々で見ることができる。

「長安寺」から5分ほどで到着した「天王寺」でも、真っ赤な紅葉が出迎えてくれた。ここは鎌倉時代に法華宗の「感応寺」として創建されたが、江戸時代に天台宗に改宗した珍しい歴史を持つ。

“毘沙門天”が鎮座するのは、境内の一角にある毘沙門堂。普段は拝観できないが、新年のご開帳に加えて、毎月3日に開催される毘沙門天護摩供でも、その姿を拝むことができる。
ギャンブラーは要注目? 勝負事を司る福神「毘沙門天」。

今回は特別に毘沙門堂に入り直接拝観させてもらうことができた。吉祥天と善膩師童子を従え、邪鬼の上に直立する姿は逞しく、そして凛々しい。
そんな、丹精な佇まいを誇る“毘沙門天”は、悪霊を退散する強い力を持つ闘いの神様。仏教では多聞天とも言われ、勝軍の福を授けてくれる勝負事を司る存在として人気が高い。


参拝後に、近くで拝見させてもらえたが、よく見ると不動明王より優しい顔立ちで緩やか。両脇の吉祥天と善膩師童子は、奥様とお子さんらしい。
磯野「うわー、近くで見ると迫力ありますね」
キャン「これは、めちゃくちゃかっこいい! 護摩も見てみたくなります」

「天王寺」の境内は広々とした開放的な空間で、四季折々の花や樹木を楽しむことが可能。そこでベンチに座ってちょっと休憩することに。

4人ともハイカーらしくマイボトルを持参しているが、そのセレクトにも各々のスタイルが反映されている。
キャンさんは、160mlのコンパクトなミニボトルをコーヒー専用に、磯野さんのハイドロフラスクのボトルは女性らしいカラーリング、丸山さんは直火でも使えるマキシチタンボトル、辻井さんもハイドロフラスクながら、軽量性に優れたトレイルモデルの、473ml(16oz)サイズを愛用。

その後は手水をしたり、大仏を見学したり、時間がゆっくり流れる境内をノンビリと散策させてもらった。
磯野「東京に大仏があるとは思わなかったです!」
辻井「しかも近くで見ると、結構大きい。これは撮影したくなりますね」


「天王寺」でチルした後は、再び「谷中霊園」の参道を歩いて上野を目指す。その道中には、江戸時代の地図をトレースした看板があり、歴史を感じながら歩くことができる。

こちらは参道の一角にある、あられと煎餅のお店「嵯峨の家」。創業110年の歴史を誇る老舗で、登録有形文化財に指定されている。昔から変わらず店内でお餅をついて、炭火を使って煎餅やあられを焼いているとか。

そんなお話を伺いながら、丸山さんと辻井さんがお買い上げ。みんなでシェアして、昔ながらの歯応えのあるあられを堪能していた。
辻井「あられを焼く香ばしい匂いを嗅いだら、絶対にみんな食べたくなりますよ」
丸山「ですよね。下町ハイクの行動食は、あられに限ります!(笑)」

「谷中霊園」を後にして10分ほど歩くと、次の目的地「護国院」に到着。ここに祀られている福神は“大黒天”。徳川家光から賜った画像が本尊となるが、こちらも新年のご開帳の時期以外は、拝観することができない。

そのため、本堂前でしっかりと手を合わせて参拝する4人。「護国院」は、上野の代表する寛永寺の子院のひとつで、400年の歴史がある。
大黒柱の語源。豊作を象徴する神様「大黒天」。

“大黒天”の本体はご開帳されていないが、じつは御前立という仮の姿の木像が安置され、そちらはいつでも拝観可能。
“大黒天”は仏教でも有名だけど、インドのシヴァ神と日本の大国主命が合体して誕生した神様。大黒柱の語源でもあり、豊作を象徴する存在として知られている。恵比寿と対で信仰されることも多い。

キャンさんは今回のハイクに御朱印帳を持参していたが、ここでは七福神の“大黒天”の御朱印をいただくことができた。

新年の「谷中七福神巡り」の開催中も御朱印をいただけるが、こちらの「七福神巡り専用の版画台紙」の人気が高く、各寺院で朱印をもらってコンプリートを目指す人が多いそう。

ということで、遊歩クルーの七福神巡りハイクも、コンプリート目前。最終地点は上野公園内にある「不忍池辯天堂」。その名の通り、“弁財天”が祀られている。
「護国院」からは20分ほどで、まずは上野公園に続く清水坂をゆっくり下っていく。

上野公園を縦断する動物園通りを歩いていると、江戸の情緒を感じる下町の世界から、現代に東京に戻ってきたような気分になる。道路や街路樹が綺麗に整備されているが、どこか無機質で素っ気ない。

それでも上野公園では屋台も出ていて活気にあふれている。弁天門から公園内に足を踏み入れると、前方に八角形の御堂が見えてきた。“弁財天”が祀られている辯天堂は、上野公園内の不忍池の畔にある。

「不忍池辯天堂」は、江戸時代の初頭に建立された寛永寺の伽藍のひとつで、「谷中七福神」とは別に「上野王子駒込辺三十三ヶ所観音霊場30番札所」としての顔も持っている。
7柱で紅一点。学問と芸術の福神「弁財天」。

都内屈指の観光地である上野公園内ということもあり、常に多くの参拝者で賑わっているが“弁財天”はその中で静かに佇んでいた。
インド生まれの”弁財天”は、七福神の紅一点となる女神。女性らしく美や音楽に長け、学問や芸術の神様として親しまれている。水に関わりのある場所に鎮座していることが多い。

ということで、最後の参拝を厳かに行う4人。こちらも「護国院」の“大黒天”と同じで、厨子の前に御前立ちの木像が安置されている。
本尊がご開帳されるのは年に1回、9月に行われる「巳成金大祭」の日のみ。特別なお守りも授与されるとか。
「谷中七福神巡り」は、1月1日から1月10日まで開催。

ということで、マイペースに4時間ほどかけて下町を歩き、「谷中七福神巡り」を無事に完遂!
年始に先駆けたフライング気味の行脚だったけど、「不忍池辯天堂」の計らいで、すべての御朱印が入った「七福神巡り専用の版画台紙」を持って記念撮影させてもらえた。

実際に、この台紙を持って「谷中七福神巡り」ができるのは、1月1日から10日まで。毎年10日間限定の行事となり、それ以外は各本尊もご開帳されていないので、トライするなら新年の期間内がオススメ。
でも谷根千(やねせん)エリアを歩くだけでも楽しいので、各寺院を巡りながら、ノンビリと下町ハイクを満喫するもあり。
上野といえば……、アメ横の「屋台系居酒屋」?

上野でゴールした下町ハイクを締めるなら、アメ横の屋台系居酒屋に限る! そのために田端駅スタートにしたワケじゃないが、歩いた後の乾杯は遊歩倶楽部の恒例行事。
そんなわけで、部長のキャンさんの「おつかれさまでした!」の声で乾杯! 生ビールや焼き鳥に舌鼓を打ちつつ、今回の下町ハイクを振り返ってもらった。

キャン「都会を歩くシティハイクだけど、伝統的な寺院を巡れたのはよかったですね。谷中銀座も楽しかったし、いろいろ勉強になりました」
磯野「天気が良かったから、歩いているだけでも楽しかったし、お寺の雰囲気も最高でした。普通に遊びに行くだけじゃ、なかなか訪れない住宅街を歩けたのもよかったです!」

丸山「普段はロングハイクが多いですが、今回は短い間でも充実したハイクが楽しめました。谷中七福神巡りは、半日で気軽に楽しめるのがいいですね。あまり知らない東京が見られる遊びでもあるのかなって思います」
辻井「お寺も街並みも新鮮で楽しかったです。改めて年明けに巡りたくなりました。とりあえず、七福神をコンプリートできたら、運気アップ間違いなしですね!」
遊歩を楽しむなら、シティハイクもあり!

自然のなかを歩くのも気持ちいいけど、ハイカー目線で街中を歩くシティハイクも、いつもの街並みが新鮮に見えたりして、新しい発見がある。
休憩できる場所(お店)もいっぱいあるし、疲れたら電車やバスも使えるから、気軽に楽しめるのも魅力。まずは年始に「谷中七福神巡り」を楽しんでみては?
山も街もゆるりとハイクするGO OUT遊歩倶楽部、さて次はどこを歩こうか。
Photo/Fumihiko Ikemoto
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