【ブランドピックアップ〜Nruc〜】ぬるいスタンスや天邪鬼なプロダクトで、いつしか大きな存在に。

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ぬるーく楽しく安全な登山を提唱し、アウトドアの本質でありながら意外とニッチな業界の層を取り込んだブランド「Nruc(ヌルク)」。栃木・真岡で独自のスタンスを貫いていった先にあった
もの、地域での活動、自社工房で生まれるギアなどに迫った。

オープンな工房を持つ、栃木・真岡の店舗でインタビュー。代表の井上真(いのうえ・しん)さんは、よくスタッフに縫い方をレクチャーしたり、アイデアが浮かぶとすぐミシンに向かったりしているらしい。リーダーであり、永遠のプレイヤーなのだ。
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ぬるいスタンスや天邪鬼なプロダクトで、いつしか大きな存在に。

自社縫製の登山ギアと、シンプルなウエアに定評のある「ヌルク」を求め、 栃木・真岡へ。代表の井上真さんは、栃木で育ち、長くアウトドア業界に勤務。独立した2017年にブランドを立ち上げて最初に作ったのが、自身で縫った財布とポケットティッシュケースだった。子どもの頃からあまのじゃくらしく、発信する場所や、作る製品からそれがヒシヒシ伝わってくるのがヌルクの面白いところだ。

「ハードな登山ではなく、 余裕を持った楽しい登山が好きで、 ブランド名は〝ぬるい〞が由来。アイテム作りは、 脇役を特別扱いするようなギアに重きを置いてきました。真岡を選んだのは、友人の勧めです」 。

ニッチな立ち位置ではあったが、かつて務めたアウトドア業界での信頼関係もあり、 取扱い店は意外に増していったという。一年で小さなアトリエを構え、週末にオープンしていたら、東京からも続々顧客が訪れてくるようになり、みるみるうちに事業が拡大していった。現在の石蔵(テナント) が空いているという情報を聞き、6年前に移転し店舗を構えることに。店には縫製スペースに加え、自社製品を揃えた店舗と、登山用品のセレクトショップ、コーヒースタンドを併設。従業員も増えているが、井上さんも自ら縫い、NPOを立ち上げ、町おこしの一貫でイベント「ジェントルハイカースタンド」を運営するなど、変わらず忙しい様子だ。

「栃木県にある4つのアウトドアショップに声をかけスタートしたそのイベントは、最初のブランド出店数が7店舗でしたが、2回目は33店舗、3回目は56店舗に。自社製品はいずれ洋服もウチで作りたいと思っているので縫製工場もやりたいし、ゲストハウスなんかもやりたい」 。

無い畑を耕すあまのじゃくな「ヌルク」のスタンスは、今や製品だけに留まらず、地域活性や、雇用にまで身を結んでいた。

真岡駅前にある「ヌルクネスト」。大きな石蔵の中にブランドのアトリエ兼ショップ、山道具店「セガール山道具店」、コーヒースタンド「ズッコケコーヒー」を併設。写真の山道具店は井上さん自らバイイング。豊富な品揃えはインスタグラムで。@nrucnest_mountain
コーヒースタンド、カフェ、工房を有するヌルクのショップ。ECで売り切れのアイテムもオーダーできたりするから気軽に問い合わせてみよう。
写真に写る石蔵の左半分が山道具店、右半分がヌルクのフラッグシップストアといった店舗構成。天井も高く、開放感に溢れていた。
店舗では地域に住む数人のスタッフがアイテムを製作している様が見られる。
コーヒースタンド。栃木のイチゴを使ったメニューなども用意。夜営業のアナウンスや、ポップアップ、近隣のフード事情を知れるズッコケコーヒーのアカウントもお見逃しなく。@zukkoke_coffee
独立当初はライターやカメラマンになろうと思っていたというだけあって、ブランドのあらゆることを自らこなす井上さん。映画好きで、学生時代は俳優を目指していたそう。
ECで売り切れのアイテムが店頭では普通にあったりするのもニクい。真岡に来てもらうための様々なアプローチがさすがだ。
アパレルも豊富に揃っているのが店舗の魅力。
近隣の飲食店や古着屋などをヌルク目線でまとめたマップを店頭で配布。
車だと都内から約2時間。電車を乗り継ぎ、真岡駅からは徒歩1分。

●ヌルクネスト 住所:栃木県真岡市台町2481番地 tel:0285-88-9375 open:11:00~18:00 定休日:水・木曜

ハイカーたちの間で話題のイベントを主催。

ヌルクは栃木の町おこしの一環として、栃木県内のアウトドア店と組み、全国のアウトドアブランドを集めた祭典「ジェントルハイカースタンド」を運営。3回目となる開催では、なんと56のブランドが集まった。

ジェントルハイカースタンド実行委員会となる、栃木県内の4つのアウトドア店、リュネッツ(那須塩原市)、アメツチ(日光市)、瓦奇岳(栃木市)、ヌルクネスト(真岡市)の面々。
4月27日に真岡市の五行川河川緑地で開催。オープン前から大行列。
迷迭香や、ハロコモディティ、タヌキなど、このブランドピックアップ連載で過去に取材したことのある人気ブランドが勢揃いだった。
ヌルクではアウトレットブースが大盛況で、大人気のトレットチェアを体験したり。
飲食関係はできるだけ栃木を盛り上げるための構成に。積極的に外のレストランにも誘導。
出店料もボランティア費しか取っていないこのイベント。あくまで町おこしが主軸。「もっと街と連携していきたい」と井上さん。
ジェントルを掲げているだけに「8時前から並ばないように」とか「会場では走らないように」とか細かい指示を出されていたが、皆がしっかりと守れているのもこのイベントの魅力。
ボランティアや来場者、出店者の協力でゴミひとつなし。さすがはジェントル。
ワークショップも年々増え、盛り上がりを見せている。

“ぬるく”山と遊びたい人に向けたアパレル。

「山から街まで、なんて言葉はよく聞きますが、ヌルクは仕事まで、を最近のスローガンにしている」とディレクターの井上さんは言う。シンプルで機能的なアパレルのラインナップが、特にそれを表している。

EAMES JACKET ¥35200

インサレーションジャケット。ベストと同様、超軽量繊維のオクタや、重要な部位に中綿ソロテックス×エアロカプセル エコを用いた逸品。表地はクリスピーナイロンで動きやすさも担保。

LEVITT CARDIGAN ¥23100

ヌルクのアパレルではフラッグシップ的存在のソフトシェルカーディガン。かなりのストレッチ性ながら、信頼のコーデュラ素材を用いて高い耐摩耗性も併せ持つ。撥水性とウォッシャブル性も。

EAMES VEST ¥20900

部位によって中綿を変えている保温性のバランスに優れたインサレーションベスト。機能性の高い綿を身頃部分に用いて、お腹の弱いハイカーにも配慮。超軽量繊維で、畳めば掌に収まるサイズに。

SPENCER Half Zip ¥16500

オクタCPCPを使用した通年で活躍してくれるポリ100%のハーフジップフーディ。インナー/ミッドレイヤーとして着用した際の確かな保温性はもちろん、高い通気性がオーバーヒートを防ぐ。

NORRIS Dry HOODY ¥18700

肌側の凹凸編み構造が発汗時のベタつきを抑える肌離れの良さで、従来モデルから素材をポーラテックデルタに変更したことで通気性とストレッチ性がさらに向上。リラックスフィット。

GIBSON HENRY ¥14520

肌に触れる部分を撥水糸に、外側を吸水糸に使い分けた凹凸編み構造で、発汗時のベタつきや張り付き、汗冷えを抑えてくれるヘンリーネック。UV遮蔽率も99%で、デイリーユースにもおすすめ。

SPENCER Lining Pants ¥22000

表地は薄手で通気性に優れ肌触りも柔らかいソフトシェルパンツ。裏地のオクタも抜群の通気性を誇るため、ウォームパンツのなかでは“抜け感”が高く、上昇した体温も立ち止まればすぐ循環。

LEMARQUE PANTS 2 ¥18700

従来の山も歩ける麻調リラックスパンツが素材チェンジで登場。麻調の肌触りはそのままに、滑らかで柔らかく、よりリラックス感がアップ。股下ガセットはクライミングパターンを採用。

ケロ島しのぶのベースボールCAP (左)¥2970、(右)¥6600

ヌルクの名物キャラのひとつ「ケロ島しのぶ」をあしらったキャップ。左がリーズナブルなNEWHATTANのコットンボディで、右はオリジナルで作ったナイロンボディ。

ST-wool BEANIE 各¥5500

ウール100%ながら一年中被れるビーニー。耳まで覆えない仕様はもともとディレクターがジブンで編んでかぶっていたものがベース。豊富なカラバリもウリ。ヌルクネスト店頭でのみ販売。


(問)ヌルク tel:0285-88-9375 www.nruc.net Instagram:@nruc_mountaingear

閃きを即カタチにした自社縫製ギアの数々。

ヌルクのギアはどれもが新鮮に見える。それは自社縫製で縫いあがったものを並べていることに加え、アイデアをすぐカタチにしてきたから。数が作れないゆえに売り切れ必至。情報はマメにチェックしよう!

BERNTHAL 25 ¥30800~

歴代のバックパックすべてのDNAを統合した、店頭のみの受注生産アイテム。フロントポケットは2段式で、マチは浅めにすることで肩への負担を軽減。サイドボックスも備える。こちらは25Lモデル。

LANCASTER ¥92000

ふるさと納税で手に入るスペシャルカラー。ヌルクのなかで最小のバックパックは、日帰りで自炊などに特別なこだわりがないハイカーにちょうどいい15Lサイズ。500Dコーデュラナイロンを使用。

STREISAND ¥26400~

ランカスターをベースに使い勝手の良さに重きを置いた店頭のみの受注生産アイテム。フロントポケットはほどよいマチを設けて、軽量のラン向けスノーシューがギリギリ入るサイズ感に。

CUARON ¥26400

普段でも使いやすい18Lのデイパック。サイドポケットはメインフロア格納式。ボトルを入れてもシルエットが変わりにくい“上品さ”を優先したギミック。機能性を拡張できる余白も特徴。

Jimmy Tree ¥6930

山帰りの温泉バッグというヌルクらしい立ち位置のバッグは、巾着とトートの2WAY仕様。バランスが気になるときは真ん中のスナップボタンで留めるか、両脇の紐をチョイ締めすればOK。

ALEX -Roam- ¥19800

左右非対称にして出し入れのしやすさに特化したカメラバッグ。バック内のスペースにタオルやスマホなども入れられる。ECでの購入なら肩への食い込みを軽減させるLDストラップ付き。

CADELL ¥7920

サコッシュにおけるギミックの限界に挑戦し続け、これで3代目となるモデル。タオルやグローブ、ULの折り畳み傘をキープすることができたり、隠しカラビナを仕込んでいたり、ギミックが満載。

宇宙ノワレ ¥4730

寒い時期のハイク中のランチタイムで、食べ物が冷えてしまうのを防ぐコジー。タイベックのシルバーと、クライマシールドの3.6オンスを使用した、カップラーメンの容器も収まるナイスな逸品。

FA JOHN’S POUCH <S> ¥4180

山道具における大切なポジションとして作られたファーストエイドキット。内部には仕切りがあり、3気室に分かれているのがその証拠。ポケットムヒなどがピッタリ収まるミニポケットも。

PT-10+ ¥3300

開始当初から続くフラッグシップ的ギアでもあるポケットティッシュケース。ループにカラビナを付ければ登山中にもザックを下ろさずに、その1枚をすぐに誰かに差し出すことができる。

TY-20 WALLET 各¥3850

創業当初から販売しているコンパクト性よりも、薄さ、そして小銭とお札の出しやすさにこだわったウォレット。ECで販売される機会はなかなかやってこないが、ストアでは豊富に揃っていた。

(左)TARS  ¥5390、(右)BLAKE ¥8030

(左)ハイドラパックのリーコンボトルや、ペットボトルもショックコードを締めればしっかり固定できるボトルホルダー。(右)ショルダーハーネスに装着できるガジェットホルダーも。

CHARLIE SACK 各¥2200

シンプルなお菓子袋。コーデュラリップの表面テロテロ感と絶妙な透け感もさることながら、滑りが良い素材だから、パッキング時のわずかな隙間にもスルスル収納できるのも魅力。9色展開。

TS-10 COIN 各¥2310

元はアトリエでのみ販売されていたという、端材を使用したサステナブルなコインケース。小銭とカード5枚+4つ折りのお札が数枚入る程度のミニマルさ。邪魔にならず、使い勝手はバツグン。

ROBERTO POUCH ¥1980

コーヒースタンドを併設していることで生まれた、端材を使ったコーヒーフィルターケース。フィルターだけでなく、ミュニークのテトラドリップ(S)がピッタリ収まる。財布や薬入れにも◎。

TORETTO CHAIR 各¥22000

最軽量を目指した全地形対応の座椅子。オリジナルのカーボンポールで、内蔵パッドは多少の荒地にも耐える2mmのポリエチレンフォームを採用。座椅子の標準重量を大幅に下回る300g。


(問)ヌルク tel:0285-88-9375 www.nruc.net Instagram:@nruc_mountaingear

Photo/Shouta Kikuch Report & Text/Naoto Matsumura

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Akihiro_Takeji
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