モード、ストリート、ミリタリー、アウトドア……。洋服にジャンルはさまざまあれど「Poliquant(ポリクアント)」の服をなにかのカテゴリーに当てはめることは殊更に難しい。あらゆる要素が絶妙なバランスで絡み合う、モノづくりの真髄と、デザイナーの原点に迫る。
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アメ横育ち、裏原からモードまで。自身の背景を存分に落とし込む。
「ポリクアント」は2016年にファース トコレクションがお披露目され、会社は今 年で10周年を迎えた。ブランド名は英語の ポライト(=洗練された)とピクアント(=小粋な)の2つをかけ合わせた造語になって いる。デザイナーを務める杉田純一氏は 1981年生まれの東京育ち。青春時代は 裏原ブームにどっぷり浸かったクチで、そのなかでストリートや古着、アウトドア、軍モノ といった知識を学んでいった。とにかくフ ァッションの熱が高まっていた時代、将来を 見据えた杉田青年も自然とその道を志すことになる。杉田氏は当時をこう述懐する。
「最初はやっぱり、文化服装学院に行きたか ったんです。けれど、母親からダメだと言わ れてしまって、結局イタリアのミラノにあるファッションカレッジに行くことになりま した。そこでデザインからパターン、素材の 知識など、服づくりの基礎を学んだんです」。
イタリア生活4年目の頃、ひょんなことから出会った日本のデザイナーズブラン ドから誘いがあり、帰国。一世を風靡した 国内ブランドで10年にわたりデザインを 担当。そこから自身のブランド「ポリクアント」を設立することになる。
経歴を見ると、杉田氏があらゆるカル チャーをとおってきたことがわかる。そ して、自身が影響を受けたカルチャーをブレンドし、オリジナルで表現したものが「ポ リクアント」のクリエイションのベースと なっているため、ブランドのカテゴライズ が難しい。モードに見えるモノもあれば、アウトドアの要素を多分に含んだモノも ある。ディテールに目を凝らせば軍モノ の香りも漂ってくる。
杉田氏がこれまで見てきた洋服の流れを解釈しながら、時流も混ぜていき、最後に 『ポリクアント』のフィルターをとおしてア ウトプットする。それによって、どのブラ ンドとも似つかない強烈な個性を持った服が生み出されている。
杉田氏がこれまで自身の目で見てきたモノや実際に身につけてきたウエアやシューズ、影響を受けたカルチャーなどを「ポリクアント」というフィルターをとおして、テーマやデザインへと昇華していく。そこに、ブランドらしいエッセンスとして、ファブリックを選定し、ファンクショナルなギミックやディテールを落とし込んでいくところに、本質を垣間見ることができる。しかし、これだけふんだんに詰め込まれた服となると、値段もそれ相応になってくる。しかし、杉田氏はそこにも強いこだわりをもっている。
「日本にある普通の工場で、普通に縫えるってことが大事なんです。特殊な工場で、特殊な機械がないとつくれないものであったら、ただ単に高いものになってしまうだけ。決められた枠のなかで、最大限アイデアを絞り出していくのが楽しいし、それがユーザーを驚かせることにつながるのかなと思っています」。
インポートの雰囲気も漂う、洗練されたシーズンルック。
デザイナー杉田氏の頭のなかを覗き見たかのような、どれも洗練された仕上がりを魅せるシーズンルック。自在な着こなしとデザイン的にもユニークなギミックの数々は、普段のファッションをいささか格上げしてくれる。
「ポリクアント」を評するときに、多くのヒトが「日本のブランドっぽくない」と口にする。ルックからもそれが伝わってくるのだが、デザインやカラーパレットからは、異国の情緒がにじみ出ている。
それは、杉田氏のクリエイティブの土台が、イタリアであることに起因しているのかもしれない。現に、以前はパリでしか展示会は行わず、ここ数年はヨーロッパのセールスが堅調で、ユーザーからの問い合わせも増え続けているという。
また、いまはオーバーサイズ全盛の時代。そのなかでも、ポリクアントはそれ一辺倒になることはない。
「ファッションってコンプレックスからはじまる側面もあると思っていて。それで言うと、ボクは昔から痩せ型で、なにを着てもサイズがしっくりこなかった。だから同じ服でも、サイズが調整できたら面白いし、便利だなと思ったんです」。
その言葉どおり、ポリクアントの服はサイズが調整できるものが多い。ギミックをこらして、不自然にならない範囲でジブンの好きなシルエットで着られることも、同ブランドの特筆すべきポイントかもしれない。
街で暮らすヒトたちのための、考え抜かれた機能とギミック。
「ポリクアントの服にとってファンクションはマスト」と話す杉田氏。ただ、その解釈はアウトドアブランドのディテールとは違い、あくまで街に特化した機能だ。かゆいところに手が届くギミックの数々をご覧あれ。
ギミックを凝らした多彩なコレクション拝見。
コレクションとしてリリースするのは毎シーズン25型前後と、一般的なブランドに比べると決して多くはない。逆説的に捉えると1つのアイテムに注がれる熱量は相当高いとも言える。こだわりを凝縮した注目作をご紹介。
HOODED ANORACK FLEECE PULLOVER ¥39600
襟に格納されているフードの素材は、バッグなどに使用されることが多い、コーデュラのリップストップ生地。異素材の組み合わせがなんともユニークな1着。サムホールも備えている。
BONDING FINISH ZIP-UP REVERSIBLE HOODIE ¥46200
リバーシブルで使えるフーデッドジャケットは、撥水性のある素材と通気性のあるドットエアを採用。この2つの生地を重ねることで、衣服内を快適に保ってくれる。フェイスガードも付属。
DEFORMED SPECIFICATION MULTIPLE JACKET ¥39600
ジップアップ仕様のコーチジャケット。デザインはシンプルながら、複数のポケットにより収納力も高い。身幅にゆとりがあるデザインながら、アジャスターボタンを調整すればタイトにも。
MINE USA × Poliquant S/S TEE ¥13200
杉田氏がその着心地に惚れ込んだという「マイン USA」とのコラボ作。メイドインUSAの生地は、ドライで柔らかな質感が特徴。ゆったりとした身幅ながら、着丈が長すぎないバランスも◎。
HIGH-ELASTICITY PCS PULLOVER ¥31900
色の切り替えが印象的なスモックは、右脇にジップを施すことで、着脱時のストレスはなし。逆サイドに取り付けられた斜めジップのポケットは、両手でアクセスしやすいよう工夫が凝らされている。
bagjack × Poliquant TACTICAL PACK ¥44000
イチから、オリジナルでデザインした「バッグジャック」との巾着バッグ。折り畳んで携帯することができるマルシェバッグも付属する。ストラップにバッグ2個付けして使うこともできる。
LAYERED L/S SWEAT SHIRT ¥28600
ノースリーブ・半袖・長袖の3種をレイヤードし、配色の切り替えも施したカットソーは、質感の異なる素材を使用することで「ポリクアント」らしい仕上がりに。ネームタグでボディをジョイント、身幅にゆとりのあるシルエットも魅力。
TRANSFORMED STORAGE AND CARRYING COAT ¥55000
フロントの大きなポケットにパッカブルできる仕様で、収納時はショルダーバッグとしても使うことが可能。昼夜の温度差の激しい1日でも、これひとつあるだけで快適に過ごすことができる。
WILD THINGS × Poliquant SWCS ADJUSTABLE ZIPPERED TRACK JACKET ¥49500、PANTS ¥37400
表地にコーデュラ混リップストップを用いた変形トラックジャケット&パンツ。ロングファスナーが印象的で、開閉幅によってシルエットが変化する、デザインとファンクションを両立した仕かけが多数。
MULTIPLE ONE INSULATED JACKET ¥58300
種類の異なるポリエステルタフタ素材を組み合わせた、同系色の切り替えデザインが印象的。身幅ゆったりめで、高く設計した襟の端、裾、袖口はシャーリング仕様で、防寒性を高めた。
2 IN 1 MULTI-SIDED CUTTING 2 LAYERED JACKET/BONDING FINISH ZIP-UP VEST ¥93500
ブランドの代名詞とも言える2in1仕様。ジャケットは2レイヤーの撥水素材を、ベストにはドットエアを採用。ベストは外側、内側の2WAYで装着でき、それぞれ単体でも着こなしを楽しめる。
WILD THINGS × Poliquant SWCS HOODED INSULATED JACKET ¥69300
表地には撥水加工を施したコーデュラナイロンリップストップの2レイヤーを、中綿にはプリマロフト使用。前立てのファスナーと閉め方によって身幅を調整でき、フードは取り外し可能。
CHANGING LENGTH/HEM FATIGUE PANTS ¥40700
ファーストコレクション時から展開されている定番ファティーグパンツ。裾はスピンドルで絞ることができ、先端にあるループをサイドボタンに引っかけることでレングス調整も可能。
CHANGING LENGTH/HEM WIDE ZIP UP TUCKED PANTS ¥39600
こちらも定番となる裾にファスナー付きの変形ワイドパンツ。レングスとシルエットを自在に変えられ、使い勝手抜群のポケット・イン・ポケットを配したスラッシュポケットを両脇に配置。
(問)74(セッテクアトロ) contact@74ltd.co.jp
Photo/Shouta Kikuchi Report&Text/Keisuke Kimura