【ブランドピックアップ〜山荘 飯島〜】街中も歩きたくなる、登山スタイルを考案。

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世界中が静まっていた2021年に東京・世田谷の住宅街にオープンした“登山用品店”。ゆっくりと歩み始めたその店が続々とファンを増やしているワケを知りに伺うと、セレクトやスタイルの独自性は無論、店づくりそのもののユニークさにやられてしまった。

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3代目が店をどんどん今風にしていってしまった(という設定で)。

別々の道路がつながる先端にある、三角形の場所に構えられたナイスな物件。
角地といえば角地だけど、調べると三角地とも呼ぶみたいだ。とにかく、今回はそんな無条件に良い店認定してしまう立地(世田谷・経堂の一角)で営まれる登山用
品店「山荘 飯島」へ。店主は田窪 朗(たくぼ あきら)さん。

ちなみに店名が飯島なのは、祖父母の苗字を用いたから。登山用品店の3代目が好き放題にやっているという
〝てい〞で、店のロゴは大正タイポグラフィをモダナイズ。本格登山用品というより
は、東京のストリートに馴染むウエアを多く取り揃えているのも、どうやらその〝設定〞を楽しんでいるように見受けられた。


12年前、25歳のときに東京での登山の楽しみを覚えた田窪さん。朝早くから山
に入り、温泉に寄って帰宅し、夜から友達と街に飲みに行く、なんて都会の登山愛好
家ならではの遊びに魅了され、果てにこの店を2021年にオープン。専売特許は、
やはり前職で得た洋服の知識。

過去に、日本の元祖メンズブランド「ヴァンジャケ
ット」出身の人が立ち上げたアパレルメーカーに勤め、生地の商社にも在籍。そこ
で養われた審美眼でセレクトするのは、クオリティに定評のある「迷迭香」や「オー
エヌシーメリノ」に加え、「ディガウェル」や「バル」といった息の長いファッションブ
ランド。これらが同じ店で見られるのは、田窪さんのバイイングの重きに〝信頼ので
きるアパレルかどうか〞があるからだ。


当然、取り扱いの大半が山登りで着られる服なわけだが、アウトドアアプローチでファッション性の高いものと、ファッションアプローチでアウトドア性の高い
ものを選りすぐっているのもならでは。最近はシティハイク(東京長距離散歩)にハマっていて、〝今〞の登山スタイルをとことん追求している。立地はもとより、中を知
ってもやっぱりユニークな良い店だった。

国内外20ほどのブランドやメーカーから、山と街の両方で使えるアイテムをセレクト。
店舗には内階段がある、1階と2階のメゾネットタイプ。
店内各所でカゴ車が什器として使われているのに目がいくが、これは運送会社倉庫でのバイトから着想を得たそう。
バッグは「エクスペド」を中心にラインナップ。
天井や壁の随所にタイベックがむき出しになっているが、これらはあとから装飾として貼り付けたもの。
店主の田窪さん、1986年生まれ。現在はオリジナルアイテムにも注力している。
登山好きにとっての靴は、侍でいう刀。靴はとくにこだわって仕入れている。自身も愛用する「アルトラ」や「ルナサンダル」も店頭に並ぶ。
都内の住宅地でたまに見かけるこの手の三角地。備え付けの三角窓もいいカンジ。

◆住所:東京都世田谷区船橋5-20-14 パル千歳1C
※営業日時はHP、またはインスタグラムでチェックを。

1着から仕立てる山用オーダーメイドシャツ。

登山となると、どうしてもそれらしいカッコになりがち。お気に入りのシャツで山登りができないものか……。なんて要望に応える、生地、襟型、仕様を選べるオーダー受付を店舗限定でスタート。一体どんなもの?

素晴らしいセレクトアイテムをまず差し置いてでも紹介したいのが、どっさりと吊るされたオリジナルシャツの数々。バックパックを背負うことや、可動域を考慮されたもの、まるでコットンのようなナイロン100%の生地など、ほぼすべてが山で使うことも考慮して作られたシャツである。

ただし、あくまでサンプルゆえ、これらを持ち帰ることはできない。それはあくまでオーダーメイドだから。トラディショナルなアパレルメーカーにいた田窪さんはシャツに対する知識も人一倍。一人一人、腕の長さや首の太さを丁寧に測り、できる限り希望にそったものを工場とともに作ってくれるのだ(納期は約1ヶ月半)。

店に置いているサンプルの一部をピックアップしてご紹介。

Case 1

イタリア製ウールのシャンブレー(タテ糸とヨコ糸を使った平織り生地)で作ったこちらのサンプルは、防シワ性、防臭性がある頼れる1着。袖口を斜めに切った角落ちで、ドレッシーさも備えている。

Case 2

こちらのグリーンストライプはコットンのような肌触りだけど、ポリ100%。そのうえ、背面をセンターボックスではなくサイドタックにしているから、バックパックを背負っても肩さえシワになりにくい。

Case 3

シンプルなオックスフォードと見せかけて、胸まわりを広くとることで可動域を広げたり、じつはナイロン100%だから速乾性、耐久性もあって汚れにくかったり。店名から抜き取った「山」のロゴもグッド。

Case 4

取材時に田窪さんが着用していたボックスシルエットのショートスリーブシャツ。生地のこだわりはさることながら、縫い幅が狭かったり、シェルボタンを使用していたり、細かい部分で高級感も加味。

今年スタートした、目利き店のオリジナル品。

ブランドはコンセプトのもと製品が作られる。しかし、ショップのオリジナルとなれば、バイイングで目にしないモノが作られているから、店の趣味嗜好と合致すれば欲しいモノが見つかりやすい。「山」も例に漏れず。

「山」アルファベスト ¥14300

右に同じく、日本の下着工場に発注し非の打ちどころなくできあがったポーラテックアルファダイレクトのベスト。某ブランドが2000年頃に作ったものをモダナイズ。3サイズ展開。

「山」アルファマフラー 各¥7040

通気性と保温性を併せ持つポーラテックアルファダイレクトを用いたマフラー。特殊ミシンにより縫い目(シーム)がフラットでごろつきがなくなっているから肌触りもバツグン。40cm×150cm。

「山」レインエプロン with Dyneema® 各¥24200

巻きスカートに、シートにと用途多彩。

何より特筆すべきはダイニーマの端をテープで一周縫製して縁取っていること。これにより縁がバタつかず、裾の安定感とプロダクトの完成度が上昇。

山荘 飯島 てぬぐい ¥2500

ありそうでないブラックの手ぬぐい。トラ柄なのは、店主の田窪さんと祖母が寅年だからゆえ。大正タイポグラフィをベースに作られたショップロゴにも、じつは寅のエッセンスを用いている。

「山」トートバッグ S with Dyneema® ¥11000

ダイニーマ素材の中型トート。内部にPake(パケ)が装着できるよう、コードを取り付けているのもこだわり。写真はサンプルで、現在ショルダーの長さを調節できるよう改良中。8月発売予定。

「山」トートバッグ M with Dyneema® ¥15400

キャンプシーンでも活躍しそうなダイニーマの大型トートバッグ。素材を裏地使いするという斬新なアプローチにより光沢感が生まれ、数日使い込めばシボ感が増してクールになるのも良い。

店の主力ブランドと、そのアイテムを紹介。

オリジナルも魅力たっぷりの山荘 飯島ではあるが、真髄はセレクトにあり。扱われているアイテムを改めて並べると、登山用品店?と思わずにいられないファッション性。もちろんすべて山登りで使えちゃいます。

Afterglow TOMANO ¥37400

日帰りや小屋泊の登山や溪泊釣行におすすめの30Lサイズ。超高分子ポリエチレンが格子状に入った、軽量かつ高強度のナイロン生地で、特徴的な縦開きのループしたファスナーが秀逸で、使い勝手◎。

Rab Kinetic Ultra Jacket ¥33000

1981年にイギリスで誕生したアウトドアブランドによる、透湿性に振り切ったシェル。機能美に加え、いい意味でギア感のあるクラシックなデザインが、山荘 飯島のスタイリングにもマッチする。

221Village Nylon Jacket ¥39600

迷迭香(マンネンロウ)デザイナーが手がけるブランドのラガーシャツ風、化繊ジャケット。軽めのナイロン素材ながら、総裏地メッシュによる膨らみと、落ち着いたグリーンが相まって上品な面持ち。

EXPED Vista Organiser ミニ ¥3080、A6 ¥3520、A5 ¥4400

スイスのアウトドアブランドから、用途別、トラベル用耐水ケースをセレクト。フックを含めて四つの角に細引きの穴が設けられているから、ジブンなりのカスタムが可能。

迷迭香 NYLON HARVEST TRAINER ¥15400

ライトナイロンを使用した人気のイージーパンツを、ブライトピンクで別注。携帯ポケットと後ポケットの袋布がダブル仕様になっていて、大容量の収納を誇る機能美が、大胆な発色に見え隠れする。

(左上)ALTRA OLYMPUS 5 ¥23000、(右)TIMP 5 ¥22000、(左下)LONE PEAK 8 ¥19800

店頭の靴はアメリカ・ユタ州で生まれたランニングシューズブランドをチョイス。店主自身の経験から、山登りにフィットするモデルのみを厳選している。

DIGAWEL Side pocket S/S shirt ¥25300

超長綿コンパクト糸を使用した、上品な生地感の半袖ロンドンストライプシャツ。着やすいオーバーサイジングに加えて、前後に大きなサイドポケットが2つ付いているから、実用性もバツグン。

EXPED Cloudburst 25 ¥11000

防水ドライバッグのような形状で、デイハイクから小屋泊まで対応。ヘルメットを固定でき、本格登山にも真面目に使えるのに、驚くほどリーズナブル。ガレージブランドの高騰に一石を投じる逸品だ。

KIVA COMPRESSION DRY BAGS 5L ¥2860、2.5L ¥2420

シリコンコーティングを施した30Dコーデュラナイロン製フルシームドライバッグ。ロールトップ式開閉で、Dリング付き。本体一部にeVentを採用し、空気抜きができて便利。

BAL × UMBRO SOCCER JERSEY ¥27500

バル×アンブロの小粋なファッションアイテムも。オリジナルグラフィックのテキスタイルとナンバリングをプリント。ユニフォームゆえ吸水速乾ポリエステルで、当然アクティブシーンにも対応。

comm. arch.Merino Wool T-shirts ¥14300

“アウトドアの要素がないメリノウールTシャツを作りたい”という思いから、英国セントマーチン卒の本格派ファッションブランドに別注。夏に着られるニットとして生まれたプレミアムな1枚。

A.D.A.N®Cargo vent 6pk pants ¥24200

福岡で独自の地位を築くショップ、PARQが手がけるブランドのリラックスカーゴ。国内トップレベルの高密度織物DICROS-dew-生地を採用し、股下にベンチレーションが設けられていて夏でも快適。

(左)Point 6 Classic Casual Light Crew ¥3520、(中)Tactical Defender Medium Mid-Calf ¥5390、(右)NFF Light Crew ¥3740 

靴にこだわれば靴下にもこだわる。“本当の快適さ”を追求するアメリカのソックスメーカーに信頼を寄せる。着脱性が良く、十分な保護性を兼ね備えたCREWモデル。

LUNA SANDALS Middle Bear Winged Edition ¥15950

自動車タイヤのようなデザインが特徴的なベアフットランニングサンダルの代表作。ビブラムのメガグリップソールを採用し、厚みが13.9mm。ルナサンダルのなかでも安心してトレイルを歩けるモデルなので街歩きやベアフット初心者にもおすすめ。

(問)山荘 飯島 tel:03-6762-6244 sanso-iijima.com


本記事は、GO OUT vol.179からの転載記事です。

Photo/Shouta Kikuchi Report & Text/Naoto Matsumura

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GO OUT編集部
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