世界に愛される吉田カバンのブランド「PORTER(ポーター)」。幾多もある製品のなかでも間違いなく看板商品のひとつであったタンカーシリーズが40周年を迎えリニューアル。驚きと革新の進化に迫った。
Table Of Contents : 目次
タンカーが時代の先端をゆくアップデート。称賛しないワケがない!
〝何も変わらず、何もかもが変わる〞というコピーを掲げ、ポーターの代表シリーズ「タンカー」がリニューアルするという衝撃のニュースが舞い込んできた。細かく何がどうなったのかは各ページで追って紹介していくが、最大の変更点は素材にある。タンカーのすべてのモデルに、世界で初めて量産化に成功した〝100%植物由来のナイロン(東レによるエコディア®N510)〞を採用したのだ。
由来資源は〝トウモロコシ〞と〝ヒマ〞。従来のナイロン素材はやはり限りある資源である石油を用いるわけだが、この2つの植物が資源なら当然環境にも優しい(ブランドがこれをまったく声高に言っていないのがカッコいい)。そのうえで、素材感や佇まいがまったく変わっていないようにつくられていて、なのにこれまでより強く、しなやかな仕上がりなっているという。
加えて、細かなパーツも改良。ジップやナスカンはつかみやすくデザインを刷新し、金属パーツはコーティングが剥がれないよう塗装回数を1回から6回へ。ブランドロゴもよりはっきりと細かな刺しゅうに改良し、老若男女が開きやすいようベルクロの仕様も変更。単純に製品としての魅力と使いやすさが何倍にも膨れ上がったのだ。
1983年の発売以降、続々とモデル数を増やし、世界から愛されるバッグとしてその名をとどろかせている看板シリーズを変更したと聞いたときは心配になった。しかし、今のポーターの立ち位置は、現状維持の保守派ではなかったに違いない。今回の取材で開発担当の数名に会うと「オールジャパンで取り組んでこんなことができた」と、とても前向きな言葉が聞けた。
40年以上続いたモデル、60年以上続いたブランドだからこその現状打破。製品と姿勢を垣間見た今は、胸を張ってタンカーの進化を多くの人に公言したい。
「世界を変えるナイロン」の誕生秘話。
MA-1をベースに生まれたタンカー。そもそもの素材がクラシックだから、変わらないというより変えられないものだと思っていた。40年を経て使われるようになったバイオベースナイロンとはどんなものなのか。
もともとタンカーに使われている中綿の入る3層構造生地は、縫製の際に歪みが出やすく、中綿のズレにも悩まされる厄介な素材。その生地を変えるとなると、これまで受け継ぎ発展させてきた技術をベースに、新しい挑戦をしなければならない。
受け継いできた製法などもすべて一新しなければならないわけだ。世界的繊維メーカーの東レと密な関係を築き、悪戦苦闘の日々。素材を考える彼らだけでなく、縫うヒトも、染めるヒトも、誰しもが手探りでできたのが、今回の“ALL NEW TANKER”なのである。
試験レベルで1日紡糸する分には問題がなくても、継続して紡糸すると糸切れが発生してしまうという課題があったバイオベースナイロン。そんな強度や耐摩耗性などの厳しい基準だけでなく、しなやかさや光沢などの数値化できない部分をクリアし、そのうえで量産化を成功させなくてはいけない。
難しい一大プロジェクトを成功に導いた立役者が、写真に写る東レの兼田さん。機織りや染色も国内トップの技術を結集し、繊維業者も「これ以上ない組み合わせ」と太鼓判を押した精鋭を揃え、リニューアルを果たした。
“とうもろこし”と“ヒマ”から糸を作り上げていた東レのバイベースナイロンを用いることで、従来の石油を原材料とするナイロン素材から、100%植物から生まれたナイロン素材に変更することができた。
じつはこの糸、開発こそされていたものの、あまりに課題が多く、誰も量産化するまでには至っていなかった代物だったのだ。そんな未知数の糸をタンカーシリーズのすべてのモデルにこれを起用するということは、当然ながらとてつもなく大きなプロジェクトであった。
進化したディテールにフォーカス。
ポーターの一針入魂の精神はパーツにまで及ぶ。細部にまで使いやすさを追求したこだわりがつまっている。一見気づかないような仕様変更は、どれも言われて納得。そんなアップデート点をぜひ見ていただきたい。
織りの密度を限界まであげ細かな文字もはっきりとなったネーム。
開口部のベルクロの長さを短くし、角を丸くしたことで、開閉しやすい仕様に。
塗装が長持ちするように、金具部分のコーティング回数を6回に増やした。
グローブをつけたままや、女性がネイルを気にせず握ることができるように、ジップの持ち手に僅かな角度を持たせた。
ドローコードもオリジナルで製作。細部まで抜かりなし。
バックルも含めてすべてのパーツにカンパニーロゴが施されている。
ビニールを使用したポケットは着脱式へ改良し、ポーチとしても使用可能になった。
ナスカンを開きやすいよう、指で押す部分の角度も見直した。
開口時に塗装できないシルバーの部分が出てきてしまうのは致し方のないことだと思っていたが、ポーターは見逃さず。このリニューアルで小さなパーツの細部までも丁寧に塗装し、当たり前だった事由に終止符を打った。
リニューアルしたNEWタンカーをいざ拝見。
タンカーシリーズが素晴らしい進化を遂げたことは前のページで紹介したとおり。そんな記念すべきアイテムをひとつは手にしたいわけだが、全40型、正直どれも捨てがたい……。今回は15点に厳選して紹介。
HELMET BAG L サイズ:W470×H510mm。¥72600
1983年から続くヘルメットバッグもアップデート。アイコニックなフロントの2つの大きなポケットや、肩に食い込みにくい太めのストラップはやはり不動のデザインだ。
CARRYING TOTE BAG サイズ:W370×H350×D100mm ¥85800
サイドのファスナーを開くことでマチ幅が広げられるトート。ハンドルが長めの設定だから、アウターを着用していても肩にかけて使用することができるのが嬉しい。
DUFFLE BAG L サイズ:W600×H400×D230mm ¥132000
52Lの大容量で、4〜6泊程度の旅行などあらゆるシーンに対応。外装には9つのポケットを配し、ショルダーストラップをバイアスに取り付けることで、カラダにフィット。
DRUM BAG L サイズ:W490×H310×D310mm ¥95700
スポーティなデザインと、外装には3つのポケットを配した収納力の高さがたまらない。容量は32Lで、2〜4泊程度の旅行にも対応。取り外し可能なストラップが付属。
BOSTON BAG L サイズ:W410×H290×D140mm ¥72600
半月型のデザインが特徴的なボストン。小物を出し入れしやすいよう、外装にはサイドポケットやホック付きポケットを配す。ちょっとした旅行のお供にも使いやすい。
SQUARE TOTE BAG L サイズ:W350×H350×D160mm ¥80300
ファスナー付きで外から中身が見えないトートバッグ。サイドに付いたホックを留めることでシルエットが変わり、容量も変化。付属のストラップで肩かけするのも◎。
RUCKSACK サイズ:W310×H390×D130mm ¥71500
ドローコードを引くことで、開口部を大きく開くことができる視認性の高さがウリ。サイドファスナーからもメイン収納部にアクセスでき、荷物の出し入れもしやすい。
DAYPACK L サイズ:W310×H430×D105mm ¥115500
普段使いから1〜2泊の旅行にも使えるデイパック。背面にPCポケット、外にも複数のポケットを配し、サイドポケットにペットボトルや折り畳み傘を収納できる。
FANNY PACK サイズ:W190×H140×D60mm ¥42900
コンパクトなサイズながら、底マチを設けることで容量を確保した実用的なモデル。外装に多数のポケットを備え、細かな荷物を整理収納できる機能性の高さも魅力。
SLING BAG W zip L サイズ:W280×H195×D100mm ¥55000
シンプルなデザインと、使いやすさを追求した逸品。バリエーションに富んだ内装ポケットに加え、背面にもポケットを配しており、小物の出し入れがとにかくイージー。
DOCUMENT CASE サイズ:W360×H260mm ¥44000
15インチのPCやタブレットを収納して持ち運ぶのに適したモデル。クラッチとしても持ちやすいよう、底部が曲線に設計され、ペンやメモパッドなどの収納にも配慮している。
ENVELOPE BAG サイズ:W220×H120×D50mm ¥42900
フロントの3つのホックが印象的で、バリエーションに富んだ内装ポケットが備えられているのが最大の魅力。普段使いだけでなく旅行のサブバッグとしても重宝する。
(上) POCKET WALLET M ¥28600(左下)POCKET WALLET ¥27500(右下)KEY PACK ¥25300
(上)お馴染みのウォレットも使いやすさがアップ。(左下)不動の人気を誇る小型ウォレット。(右下)キーパックはフォブを3本に厳選したことで、スマートキーにも対応する。
Photo/Shouta Kikuchi Report & Text/Naoto Matsumura
(問)ポーター表参道 tel:03-3862-1021 www.yoshidakaban.com